すぎな野原をあるいてゆけば

「おとのくに はるのうた工房」がある

踏切の鐘

2020-08-14 09:39:45 | 短歌
      踏切の鐘

改札が地下になっても階段の風のつよさはかわらなかった
    阪急は「さいいんえき」京福は「さいえき」。
遮断機のない踏切のあしもとにかぼそいしるしならんでひかる
ゆうぐれにふらふらならばふらふらのままのよりみち嵐電ホーム
踏切の鐘がほんもの 消えるときやわらかな尾をくゎんと引いて
大輪の紫陽花おもく揺れながら一両だけで走るむらさき
夏至はまだもう少し先もっとさき線路は西へゆっくり伸びる



(「未来」812号 2019.9月)



     ササグモ/ハグロトンボ

八本の脚を曲げたら七月のちいさな檻になったササグモ
トゲチシャの蕾のそばでうごかない蜘蛛はなにかをかかえるかたち
あちこちにハグロトンボを匿って地面はもうすぐまっくらになる
今週の日照時間のすくなさを言えば足もとからまた蜻蛉
ハグロトンボの四枚の翅ひらひらと(影に追いつけない)ふるふると

(「未来」813号 2019.10月)




    ウシカメムシ

八月の日暮れのフェンス灰色ではじめてウシカメムシを見つけた
触角をひとつ失くした虫の背に乳白色の星、ふたつある
     翌日、 中崎町で川島逸郎昆虫画展。
わたくしはきのうこの子に会いました 硝子の奥に(遠くに)告げる
モノクロの標本画にはなにひとつ欠けていなくてこれは永遠


(「未来」814号 2019.11月)
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