図鑑にいない虫
どの風をくぐってきたか校庭のまんなかに住みついた虫たち
図鑑にいない虫のなまえはあたらしい呪文のように唱えてゆこう
ここにいる(クスベニヒラタカスミカメ)ここにいることしかわからない
西明石ゆきはゆっくりゆうやけに間に合わなくていいよと揺れて
ねむる鳥たちうたう虫たちべつべつの樹に集まって夜をはじめる
(「未来」791号 2017.12月)
ミカヅキモ
ミカヅキモくぐり抜けたらもう秋の、もうすぐ冬の水になります
金色の穂が揺れていたところへとゆうがたの月ゆっくり動く
地球の縁で見あげてまたは見おろせば地球の影がしずんでゆくよ
三日月のかたちを消して眠ってもここはそのままありますように
プラタナス晴天に立つ駅前の昼はしずかなスズメのねぐら
(「未来」792号 2018.1月)
瑠璃色と雪色
見たことのない字に吸いこまれてゆくルリチュウレンジの名前のなかの
瑠璃色の顔に花粉はきらきらとあなたも秋がまぶしいでしょう
行き過ぎて三歩戻った枯れ枝に一匹だけの虫をみつけて
忘れても今なら予測変換でワタフキカイガラムシと出てくる
まっしろなプリーツスカート(その中の無数の卵)ひきずりながら
飛べるものだけが雪虫 うごかない虫の衣も綿雪のいろ
(「未来」793号 2018.2月)
どの風をくぐってきたか校庭のまんなかに住みついた虫たち
図鑑にいない虫のなまえはあたらしい呪文のように唱えてゆこう
ここにいる(クスベニヒラタカスミカメ)ここにいることしかわからない
西明石ゆきはゆっくりゆうやけに間に合わなくていいよと揺れて
ねむる鳥たちうたう虫たちべつべつの樹に集まって夜をはじめる
(「未来」791号 2017.12月)
ミカヅキモ
ミカヅキモくぐり抜けたらもう秋の、もうすぐ冬の水になります
金色の穂が揺れていたところへとゆうがたの月ゆっくり動く
地球の縁で見あげてまたは見おろせば地球の影がしずんでゆくよ
三日月のかたちを消して眠ってもここはそのままありますように
プラタナス晴天に立つ駅前の昼はしずかなスズメのねぐら
(「未来」792号 2018.1月)
瑠璃色と雪色
見たことのない字に吸いこまれてゆくルリチュウレンジの名前のなかの
瑠璃色の顔に花粉はきらきらとあなたも秋がまぶしいでしょう
行き過ぎて三歩戻った枯れ枝に一匹だけの虫をみつけて
忘れても今なら予測変換でワタフキカイガラムシと出てくる
まっしろなプリーツスカート(その中の無数の卵)ひきずりながら
飛べるものだけが雪虫 うごかない虫の衣も綿雪のいろ
(「未来」793号 2018.2月)