すぎな野原をあるいてゆけば

「おとのくに はるのうた工房」がある

瞬間くもりガラス

2020-08-14 09:35:54 | 短歌
       
※長いこと更新していなかったので、しばらく三回分ずつまとめて掲載いたします


      吊革の窓

かわせみ、という文字列が横切った気がした 揺れる視界のすみに
吊革の振り子ゆらゆらするたびにあらわれる隠れる文字がある
風はとおく海を目指してこの駅のホームは中州 流れを見てる
そういう日なんだろうけどコミスジと行くさきざきの道で出会った
近づいてきた指だけにきらめきをみせてあげるとセマダラコガネ

(「未来」788号 2017.9月)


     
      白地図

まっしろな地図に一羽の鳥またはうさぎを描いて眠らせるまで
白地図のなかでも迷わないように貝のボタンをひとつ落とした
みずうみも含むエリアをダウンロードしますか鉛筆はありますか
地図のなか海岸線もやわらかくふるえてほんとは線なんて無い

(「未来」789号 2017.10月)



   瞬間くもりガラス

エノコログサメヒシバじりじり焼けながら石畳は廃墟のそれになる
車窓には灰色の鳥うすい海いちども会わず遠くなるもの
六甲ライナーの窓「瞬間くもりガラス~一部区間においてくもります」。
瞬間くもりガラスが曇る瞬間にみえなくなった屋上の鳩
一部区間においてくもった窓ばかり見おくる白い布は、いちにち
(「未来」790号 2017.11月)
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