アベノミクスの実体

2016-02-08 23:53:13 | Stock
本日、東証のセミナーに参加し、藤野英人氏の講演を聞いてきた。
以前からアベノミクスについて過大評価されていると感じていたが、同じように考えている人がいることがわかり、自分の考えに自信を持った。

結局のところ、アベノミクスは円安誘導政策以上でも以下でもない。また、円安誘導もアベノミクス単体によるものではなく、原発停止によるLNGの輸入急増による貿易赤字との相乗効果によるものである。そして、円安の効果を過剰期待したが、実際の効果は期待を下回っていたため、設備投資や人件費の増加につながらず、景気が失速している。

時系列を追って説明すると、下記のようになる。
(1)民主党政権時代に、原発の停止によりLNGの輸入が急増したため貿易赤字がし、円高が底を打ち円安に反転した。
(2)政権交代し、アベノミクスによる日銀の量的緩和により円安がさらに進んだ。
(3)急激な円安により、日本企業の大幅な収益改善が期待され、日本株が全面高となった。
(4)1ドル=120円まで円安が進んだ結果、企業の実際の収益はそれなりに改善したが、期待したほどではなく、設備投資及び人件費の増加にはつながらず、経済の好循環が起きなかった。
(5)中国経済の失速により原油価格が暴落したため急速に貿易赤字が縮小し、また、原発再起動の影響で円高圧力が高まった。
(6)世界的なリスクオフの流れの中で、特に日本経済への先行き懸念から日本株が集中的に売られた。

ポイントは下記となる。
(1)民主党政権末期に円高から円安に流れが変わっており、後1年政権が維持できれば、株価上昇の果実が得られた可能性が高い。原発停止により、原発賛成派も反対派も経済に悪影響が出ると思っていたが、結果的には電気代の上昇による悪影響よりも、円安による好影響の方が大きいという皮肉な結果になった。
(2)日本企業の収益悪化は円高のせいで円安になりさえすれば問題は解決すると経営者も学者も主張していたため、円安誘導を主体とするアベノミクスを実行したが、効果はそれなりにとどまり期待したほどではなかった。
(3)量的緩和ではインフレ期待が高まらなかった。結果として、日銀が行った金融政策で成功したものは、円安誘導のみである。

そもそも日本の経済の実体に対する認識が間違っている。
(1)そもそも日本は少子化により人口減少が進んでいるため、どんな政策を行っても国全体が成長することはない。
(2)若干のインフレ傾向が実現したとしても、年金収入では老後の生活が賄えないため収入増は貯蓄に回り、消費は必要最低限から増えない。
(3)国内消費が増えない中で企業業績を上げようとしたら輸出しかないが、輸出先の経済状況はコントロールすることはできないので、結局風任せになる。

高齢化のピークとなる2030年までは経済全体が大きくなることはないので、経済を活性化させるためには、どうにかして過剰貯蓄を吐き出させて消費を増やすしかない。自分がいつ死ぬかわからないのだから、生きている間に貯金が底をついたら困るため、過剰貯蓄となるのは当たり前である。極論すれば年金だけで生活ができれば、貯蓄はゼロでも問題ない。
年金の最低額を抜本的に上げる、年齢が上がるにつれ年金額を増やす等、過剰貯蓄をしないで済むようにする政策を実現しない限り、消費が上向くことはないであろう。そもろも、30代、40代から老後のためにせっせと貯蓄に励む社会は、根本的におかしいだろう。
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