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読書と旅行と柴犬のブログ
目標は留学生に日商簿記3級合格を!
ヤプログから引っ越してきました。

「歩いても歩いても」完成度は高いが、映画的な驚きは無い

2008-07-31 00:09:47 | 邦画
「歩いても歩いても」★★★☆
阿部寛 、樹木希林 、夏川結衣 、原田芳雄 、YOU 出演
是枝裕和 監督、114分、2008年



兄の命日に久し振りに実家へ帰省する主人公、
姉夫婦は近い将来同居を考え、
長男を水難事故で亡くした母親は
同居するなら次男である主人公としたいような
素振りが見えるが、
帰るつもりは無い。

一泊二日の帰省にまつわる
どこにでもありそうな家族の風景。

見た人の誰もが自分をどこかに見つけられそう、
懐かしくでも自分の居場所が見つからないような

ちょっとした居心地の悪さが、
些細な会話から伝わる。

よく練られた脚本だと思う、
テンポよくでも出来過ぎて無い、
舞台のような、掛け合いでない
日常の「間」が
うまく治まりきらない、不器用な
人間関係をうまく描いている。

そつなく、そしていびつだけど
完璧に思えるこの作風を
好きな人は多いだろう。

でも、達者な演技人に何気ない日常の
スケッチに深みのあるドラマを感じるが
だからといって、新鮮な驚きや
予期し得ない人間の行動のようなものが無く、
その部分では映画という非日常空間で
何も起こらないというのは
自分には楽しめ無かった。

こういうこともあるだろう、
人物の描き方にも不足はない、
でもここに描かれたものは
誰でも身近に知っているものだ、
人間の行動の不可解さや
鮮烈な驚きが無いのだ。

要求が高くなっているのだとも感じる、
でももうひとつ楽しめないのは
知っている日常風景なんて
わざわざ見たくないからだ。


この映画の完成度は高い、
職人技を見に行くような感じだ、
でも心揺さぶられるようなものは無い。

★100点満点で70点

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人に勧めるかと言えば、もっと面白い映画があるので、
こういう傾向の映画が好きならともかく、
ハリウッド系が好みなら勧めない

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「百万円と苦虫女」100万円貯まったら出て行きます

2008-07-29 00:09:50 | 邦画
「百万円と苦虫女」★★★☆なんとなく面白い
蒼井優主演
タナダユキ監督、2008年、121分



たぶん蒼井優を主演として
こんな映画が作りたいなと
企画した様な映画。

他の誰かじゃなく
海の家でかき氷作る蒼井優、
桃を収穫する蒼井優、
植物に囲まれた蒼井優

彼女の様々な今の表情を
残しておきたかったかのようだ。

「自分なんか探してません、
探さなくったって、私はここにいますから」


最近は30歳過ぎても
「自分探し」をしていると公言する人も多い、
誰だって生きてる限り、自分の存在理由を
見つけようともがくのだろうが、
ひと世代前の人から見たら
甘えてると思われるようだ。

でもね、こんな社会を作って来たのも
その世代の人達なわけで、
理想とは違ってしまったけれど、
不毛に豊かな
悪くないけど、むしろ幸せな事だけど、
どこか漠として生きてる実感が薄いのも確かだ。

映画の中ではお伽話が続いている、
こんなふううに深みにはまるのを慎重に避け、
人と深く交わらず、
ヤバクなったら別の場所へ・・・、
出来るわけないと思いつつ、
そうだったら随分と生活はシンプルだろうなと思う。

それでいいなら全部時々総入れ替えみたいに
ぐるぐる移動すれば良いものを
人は時々それでは淋しくて
物足りなくて、やって行けなくなる。

「笑うと苦虫をつぶしたような顔になるね」
蒼井優だよ、そんなわけない、
でも人は自然に愛想笑いを反射的にするけど、
目まで笑ってないのはすぐに伝わる、

心底大口をあけて笑うシーンが無かったことに気づく、
映画は「なんとなく」終わるが、
その後の何処かで
主人公が心の底から笑っているといいな。

★100点満点で70点


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どんな内容だった?と聞かれると答えに困る、
映像の語るストーリーと違うものを見ながら感じているからだ。

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「カリフォルニア・ガール」ミステリー仕立ての年代記

2008-07-28 00:09:51 | 読書の時間
「カリフォルニア・ガール」★★★★
T・ジェファーソン・パーカー著
ハヤカワ文庫、653ページ



本を手に取ったとき
そのズシリとした感触に心が躍る、
前作「ラグナ・ヒート」はこの作家のデビュー作で
この作品はワリと好きだったから
このノー天気なタイトルにちょっと「あれ」と
思いつつも、大丈夫だろうと買って早速読んだ。

ベッカー家の4兄弟とその両親を中心に
若い女性の無残な死が
彼らや彼らの住んでいる土地全体に
影響を与えるという本筋と
複雑な人間関係が次々と出てくるので
カバー折り返しの登場人物紹介を何度も何度も
見返しては読んでいった。

久々の一気読み、
事件の解決で普通は胸をなでおろすと言うか
ほっとするのに、なぜか心は晴れない。
そうするとタイトルの「カリフォルニア・ガール」という
明るいイメージがさらに胸に迫る。

何も知らないノー天気なままでは誰もがいられない、
何かを知るたびに、ただ陽気に笑うことが出来なくなる、
それは悲しかったり、さびしくも感じるけれど
そこから人は強さも一緒に学ぶのだろう。

ミステリーを読みながら
生きることとか、人とつきあうこととか
そんなことも考えさせられた。
読み終えて様々な感情があるにせよ、
極上の作品を読んだ嬉しい気分はもちろんある。

650ページは、かなりの長さだ
どんどん過ぎる時間と無くなっていく残りのページを
嬉しいような惜しいようなそんな気持ちに
させてくれた作品だった。


まだこの人の「サイレント・ジョー」は未読なので
見つけたら読んでみたい。

★100点満点で85点

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ミステリー的な要素は実はそれほどでもない、
年代記としての作品の質の高さを買いたい。

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「ハプニング」途中までは充分楽しませてもらいました

2008-07-26 21:09:33 | 大作映画ハリウッド系
「ハプニング」★★★
マーク・ウォルバーグ主演
M・ナイト・シャマラン監督、2008年、91分



それはニューヨークのセントラルパークから始まった、
歩いていた人々が急に立ち止まり
一発の弾丸が引き金となって、恐ろしい現象が広がっていく。

何が起こってるんだ、
何が原因なんだ、
主人公達はどうなるんだ。


物語に引き込まれる、
所々の刺激的な描写もそれ程
興味をそがれるものでなく
味付けとしては上々。

でも心のどこかでは
「またガッカリする落ちがあるんじゃないか」と
引っかかって、おかしな方向へ行きませんようにと
思いながら展開を見守った。

緊迫した状態ながら
主演のマーク・ウォルバーグのとぼけた顔が
演技じゃない普通の人間の戸惑いを
現しているようで、
こんな訳のわからない状態になったら
自分だったらどうかなーと。

そして映画は希望を見せて静かに終わった、
逆に驚くね、
「見せる」ことでガッカリさせるなら
「見せない」ことで行こうということか。


こんな消化不良なら普通は
それはないだろーと思うけど、
シャマラン監督は最近不振だったから
今回はどうにかこうにか着地したって感じだ、
オリンピックの体操ならなんとか着地はしたけど
一歩後ろについてしまったくらい。

ガッカリはしないが、名作「シックス・センス」以降
監督はあれで才能の全部を使ってしまったのか、
次がひどかったらもう見ないな。たぶん。

★100点満点で60点

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「シックスセンス」のラスト、手から零れ落ちる指輪が
床を転がるのを見た衝撃、あれから何度もガッカリしてる

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早朝の托鉢を見る・ルアン・パバーンの祈りの朝

2008-07-25 00:09:04 | 2008年旅行
2008/3/13~3/26(春のラオス、メコン河沿いの旅)④

早朝5時半に起きて支度をし、
托鉢見物へ
どの辺りがメインなのかも分からないので
宿の近くを歩いていると、
メコン川沿いの道と
シーサンワンウォン通り、そして
サッカリン通りあたりで
オレンジの袈裟の行列を目にする、
急いで追いかけ、まずは彼らの背中を見送った。

狭い道の両端に並んだ家の前で
地元の人がご飯や思い思いの食物の入った入れ物を
持って、僧侶の通るのを待っているのだ。

自分も道の端に座ってしばらくすると、
来た、来た、来た。

次から次へと斜めにかけたたすきの端に
ご飯の入れ物を抱えながら
何か小さくお祈りをしているように口を動かし、
各家からの施しものを受けて通り過ぎて行く、
50人はいただろうか、
オレンジの線になった
彼らの背中を見送ると
厳かな雰囲気に包まれる。

狭い道にかなりの人がいるのに
ひどく静かだ。

毎日の生活の糧をありがとう、
そして仏に仕える人々に施せる
豊かさへの感謝と。


この時この街全体が
祈りと感謝に満たされる。


しばらくして大きな通りのシーサンワンウォン通りへ行くと、
たくさんの小さな椅子がズラリと歩道に並べられ、
大型バスから中国の団体が陣取った、
托鉢体験ツアーなのだろう、
一斉に座って食物を前を通る僧侶へ渡している。
写真のフラッシュが光り、
興奮した声、笑い、肩を組んで写真に収まる人達。

さっきまでの厳かな雰囲気は一変して
ただの観光地となってしまった。
こういうのって「嫌だな」とすぐに思うが、
少し静かなだけで、自分も地元の人から見たら
同じ観光客なのだろう。

そう思うとそれでも自分はこういう場所へ
また訪れるのだろうし、
なるべく普段の生活を乱さないようにと
自分を戒めることくらいが
お邪魔させてもらう自分たちの礼儀だと感じる。

さっきまでの静かに興奮していた気持ちは
霧散したが、それでも自分の立つすぐ側を
通り過ぎる托鉢の僧侶たちからもらっった感動は
色あせない。

宿へ戻り、ベランダで朝のまだ冷たい空気の中
コーヒーを飲んだ。
日中には多くの車が通る道も
まだ静かだ。

TVで見た托鉢姿の僧侶のいる小さな町の風景に、
今は自分もその中に居て、静寂の中
人は何故祈るのか、なんて考えさせたりする。
この祈りがそれぞれの思いに届きますように。


soramove
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巨木に祈り、朝日に祈る、かつては自然の様々なものに
祈りをささげていたのだろう。

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