興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学博士、黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

感情の調整不全 (Emotion Dysregulation)

2006-10-02 | プチ生物心理学

今日は神経心理学系のクラスでプレゼンをしたけれど、
簡単なプレゼンなのに、終わるとどっと疲れがでるから、
いかに自分にとってプレゼンがStressfulなものかが分かる。

プレゼンは、その準備段階や、最中よりも、終わってからの
余韻のほうが自分にとっては厄介だ。

今日のプレゼンは、境界性人格障害の、
神経心理学的特徴の、「感情の調整不全」についての
ものだったのだけれど、感情の調整不全とは、簡潔に
述べるならば、「一般の人口」と比べて、

1)外的刺激に対する感情の敏感性、
2)その感情の強度、そして、3)その感情が
ニュートラルな状態に戻るまでの時間の長さ、
についての概念だ。

でもこれは、何も境界例の人に限られたことではない。

全ての精神病理が、その「程度問題」であって、どこまでが
正常で、どこからが障害なのかはかなり主観的であり、
恣意的なものであるように、「感情の調整不全性」に
ついても、「正常か異常か」ではなくて、その傾向の有無や
度合いとして捉えた方が、いろいろな意味で有益だと思う。

具体的に、「感情の調整不全」とはどんな感じか
といえば、環境に対して敏感でこころが反応しやすく、
揺れやすく、その、反応して揺れた感情が落ち着くまでに
時間がかかることだ。

これは、ポジティブな状況(特別な人と会ったとか、
特別な行事があったなど)にもネガティブな状況にも
あてはまることだ。

「21世紀はこころの時代」などと言われて久しいが、
誰もが多かれ少なかれボーダーライン的な現代社会、
このような、敏感なこころを持った人はとみに増えている
ような印象がある。

つまり、このような特徴を持った人は多いのだけれど、
自分にそのような傾向があるのだと自覚している人と
そうでない人との間には、大きな違いがあると思える。

こころが揺れているとき、その余韻で、人々は
やらなくてもいいこと、やらなければいいことを、ほとんど
無意識にしてしまうものだけれど

(家に帰ってゆっくり休めばいいのは分かっているけど
なんとなく遅くまでぶらぶらしたり、いらないものを
買ってしまったり、食べたくもないものを食べて
しまったり、別に一緒にいたくもない人と時間を
過ごしてしまったり、パチンコやゲームで無駄に
お金を使ってしまったり)、

もし自分にそういう感情的特徴があるのだと
分かっていると、感情がもとに戻るまでやりすごせたり、
リラックスするための時間を設けられたり、ゆっくりと
休むことを選べたりすることにも繋がるから、やはり、
自分のこころをより深く理解し自覚することは
大切だと思う。

そういうわけで、なんとなく書いているこの記事も
そろそろ終えようと思う。やめたくてもなかなか
やめられないのだ・・・


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2006年5月の初めに書いたものです。