興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学博士、黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

横浜カウンセリング 10月22日 日曜日

2017-09-24 | 横浜出張カウンセリング

 

*ご予約が満席になりましたので、受付を終了致します。

次回は10月下旬の日曜日の予定です。よろしくお願い致します。

 

皆さん、こんにちは。

横浜出張カウンセリング、10月分について、お知らせします。

 

【日程】: 2017年10月22日 日曜日


【料金】(いずれも税込み価格)

個人セッション 1セッション 50分 7000円

※ご希望の方には、スカイプセッションも可能です。料金は6000円になります。

カップルセッション 1セッション 50分8000円

※ご夫婦、カップルどちらでも 

 

【予約可能な日時】

2017年10月22日(日)

A)10時30分~

B)11時30分~

C)12時30分~

D)13時30分~

E)  14時30分~

F)  15時30分~

 

※数に限りがありますので、興味のある方は、お早めにご連絡ください。


【場所】

横浜駅から徒歩6分の小さな会議室で行います。

*詳細の場所は予約が確定した方にお知らせいたします。


【予約方法について】

A)~D) のご希望の時間帯をこちらのアドレス宛にご連絡ください。

メールアドレス:drtakakurokawa@gmail.com

お支払い方法についてご連絡いたします。

 

【お支払い方法について】

ご入金後、予約確定となります。

・銀行振込(ゆうちょ銀行)

・クレジットカード(Paypal)

*キャンセル料につきましては、予約日から1週間以内で料金の50%、3日以内のキャンセルは、全額頂いております。


横浜カウンセリング 9月24日 日曜日

2017-09-23 | 横浜出張カウンセリング

 

*ご予約が満席になりましたので、受付を終了致します。

次回は10月下旬の日曜日の予定です。よろしくお願い致します。


皆さん、こんにちは。

横浜出張カウンセリング、9月分について、お知らせします。

 

【日程: 2017年9月24日 日曜日


【料金】(いずれも税込み価格)

個人セッション 1セッション 50分 7000円

※ご希望の方には、スカイプセッションも可能です。料金は6000円になります。

カップルセッション 1セッション 50分8000円

※ご夫婦、カップルどちらでも 

 

【予約可能な日時】

2017年9月24日(日)

A)10時30分~

B)11時30分~

C)12時30分~

D)13時30分~

E)  14時30分~

F)  15時30分~

 

※数に限りがありますので、興味のある方は、お早めにご連絡ください。


【場所】

横浜駅から徒歩2分の小さな会議室で行います(8月までとは異なる新しい会場です)。

*詳細の場所は予約が確定した方にお知らせいたします。


【予約方法について】

A)~D) のご希望の時間帯をこちらのアドレス宛にご連絡ください。

メールアドレス:drtakakurokawa@gmail.com

お支払い方法についてご連絡いたします。

 

【お支払い方法について】

ご入金後、予約確定となります。

・銀行振込(ゆうちょ銀行)

・クレジットカード(Paypal)

*キャンセル料につきましては、予約日から1週間以内で料金の50%、3日以内のキャンセルは、全額頂いております。

 



Halloween

2017-09-22 | 戯言(たわごと、ざれごと)

 

近年我が国ではカフェやレストランその他のお店でハロウィンがどんどん前倒しになっていく傾向があるけれど(ディズニーランドも既にハロウィンのようですね)、9月にハロウィンは違うと思うのですよ。

しかし今日の午後ふと思い至って昨年のハロウィンで使っていたものを収納から取り出してオフィスに飾ってみました。

うん。ハロウィンがたっぷり楽しめるのも悪くないですね。

部屋に入ってきてこの飾りに気づいたクライアントさんがすかさず卓上カレンダーを見て、「まだ9月じゃないですか」と仰いました。そうなんです。自分も今日のお昼過ぎまでそう感じていました。


無視をする人の心理について

2017-09-20 | プチ臨床心理学

皆さんこんにちは。

今回はぽきりさんから、無視をするパートナーや配偶者の心理についての質問です。

ぽきりさん、お待たせ致しました。ご質問ありがとうございます。

以下がぽきりさんからの質問内容になります。


無視をする人の心理について知りたいです。


夫は機嫌を損ねるとすぐに無視をします。
ただ、なにが気に障ったのかわからないことが多く、聞いても答えてくれません。あんまり聞くと余計にイライラした態度をとるので放っておきますが、こちらとしては原因がわからない分いろいろ考えてしまい、あれかしら?これかしら?と機嫌が悪くなる直前の会話などを思い返したりと非常に疲れます。仕事中も気になって考えてしまったり、食欲までなくなってきたりと散々です。しかも1~2週間とか余裕で無視してきます。話してくれれば私が悪ければ謝りますし、なんて子供っぽいんだろうとちょっと理解しがたいです。

私はカチンとくることがあっても深呼吸して数時間置けば怒りの感情は収まるタイプなので本当に理解できません。今回は本日で4日目突入です。

今回の無視が始まった日、私は仕事を午後休して友人とランチをしに出かけました。夫と私の職場は近くにあり、出勤・退社の時間もあまり変わらないので1台の車で一緒に通勤しています。その日も夫の帰るコールでいつもの時間にお迎えに行きましたが、午後休した私は会社の制服でなく私服だったため、それを見た夫が「会社行ってないの?」と聞いてきました。が、ランチの件は数日前に伝えてありましたので「こないだ伝えたでしょ?○○ちゃんとランチに行ったのよ」と答えると夫は「ああ」と思い出した様子で、そこから無視が始まりました。

なにがいけなかったのかもわからないし、出勤時の車では笑い話をしながら仲良くしていたので突然の無視に毎回のごとく戸惑っています。しかも4日目。夫の怒りの継続力にも驚きます。ちなみに「おはよう」とか「おやすみ」とか「いってきます」という挨拶だけは私から掛けるとボソッと小さな声で返します。それ以外は無視です。なおさら謎です。器が小さいなあとさえ思ってしまいます。

そして無視が収まるときは、破棄のない声で話しかけてきて、それに私が明るく笑顔で答えることでやっと終了します。ただ結局原因も教えてくれないのでなんだったのかは謎のままです。

いったいこれはどういう心理なのか、解説どうぞ宜しくお願い致します。


このようなタイプのパートナーに悩んでいる方とは時々お目にかかりますが、ぽきりさんのこのエピソードもその典型です(脚注1)。

まず、行動心理学的見地からすると、こうした方たちは、これまでの人生における様々な対人関係の問題において、「無視をする」という行為が「強化されてきた」人たちということが考えられます。対人関係の問題における適応手段は人それぞれであり、一番建設的なものは、防衛的にも攻撃的にもならずに、心を開いて相手の話に耳を傾けながら、オープンに自分の気持ちや考えを言語化して相手に伝えていくやり方ですが、残念ながら、これができない人は少なからずいます。切れたり、暴力的になったり、暴言を吐いたりして、力ずくの解決を図るひともいれば、ぽきりさんの旦那さんのように、貝のように押し黙ることで対応する人もいます。

それではなぜ無視をする人たちは、このようにいくつもの適応手段がある中で、無視をする、ということを(ほとんど無意識的に)選んだのでしょうか? それには、その人の生まれながらの気質(内向性、外向性など)と、幼少期からの親との関係や、家庭環境などによって形成される性格と、さらには、その性格ができた環境下でいろいろと試行錯誤する中で、その人にとって一番うまくいった適応手段が、無視であった、ということです(これは、別の家庭環境で別の気質の誰かにとっては、怒鳴る、声を荒げる、早口でまくし立てる、嫌みを言う、などが一番うまくいっていたかもしれない、というものです)。社会学習理論(social learning theory)が示唆するのは、子供は自分の身近にいる、自分よりも大きな人間(親や祖父母や教師など)の行動を観察し、模倣し、内在化し、自分のものにしていくということですが、こうした人は、子供の頃、親が機嫌が悪くなったとき、怒ったときに、罰として無視をされる、ということを何度も経験していたのかもしれません。また、家族間で、怒りの表現手段として、激しい口論や、暴力、物に当たる、などの直接的な表現ではなく、無視、無反応、受動的攻撃性といった、間接的な表現手段が好まれる家庭文化であったことも考えられます。

ちなみに、無視をするという行為は、無視をされる側の人間が動揺したり、気を掛けてくれたり、行動を改めたりするなどの反応をすることが条件としてセットになっています。これはつまり、もし無視をしても相手が無反応であったり、へっちゃらだったり、関係がそれで終わってしまったり、無視ができないように攻撃してきたりするようでは、無視をするという行為はその人間関係において機能しません。無視をするということで、怒りが効果的に表現できる人間関係においてのみ、無視という行為は強化されます。

ぽきりさん夫妻に話を戻します。旦那さんがどのような家庭環境で育ったのかはわかりませんし、もしかしたら、家庭環境ではなくて、学校など外の世界の対人関係の問題時に無視が機能していたのかもしれません。いずれにしても、ここで問題になっているのは、ぽきりさんが、旦那さんの無視という未成熟な対応に付き合ってしまっているところにあります(無視をする、という幼稚な手段に訴える彼に根本的な問題があるのはいうまでもありません)。彼には、ぽきりさんが、動揺したり、気をつかったり、元気がなくなったり、落ち込んだりと、彼のことをすごく気にしているのをはっきりと認識しています。彼はぽきりさんの注意関心が欲しいわけですが、実際にぽきりさんが歩み寄っても無視をすることを続けるのはある意味サディスティックであり、ふたりの人間関係にダメージを与えるものでもあり、なんといっても、ぽきりさんの精神衛生において有害です。

それから、これは非常に大事なことですが、特に大人の人間関係において、相手の言動に腹が立ったり、不満があったら、それをきちんと言葉にして相手に伝える義務があります(脚注2)。伝えなければ分かりません。今は憤懣やるかたなくて言葉も出ない、とにかくひとりにして欲しい、という状況であるならば、相手にそう伝えるべきです。「悪いけど今は一人にして欲しい。あとで話す」と。そのコミュニケーションを放棄して、非言語的に怒りを表現して相手にダメージを与えるのは、間違ったことです。ここでもうひとつ気になるのは、旦那さんは、無視をするのをやめた後で、どうして無視をしたのか、ぽきりさんときちんと話し合っているのかどうかということです。何か気に入らないことがあるとしばらく無視をして、気が済むと無視をやめる、という人にありがちなのは、どうして無視をしたのか、その後で相手に伝えることもしないため、無視されたほうは、どうしてなのかいつまでたってもわからない、ということです。とても自己中心的で、思いやりに欠けています。これではふたりの間に不信感こそ積もるものの、信頼感や安心感はいつまでたってもできません。無視されるほうは、無視が予測不能なので、今度いつまた無視されるか恐れながら、はれ物に触るように生活することになります。

対応策として私がお勧めしているのは、まず、1)無視が終わったらあまり日を空けずにきちんと話し合う、ということです。ここで、「どうして無視したのか」、「どんな気持ちで無視していたのか」、「何を考えていたのか」、などについて話してもらう必要もありますし、そこに正当性があれば、詫びる必要があるかもしれません。

次に、2)今度腹が立った時、機嫌を損ねたときは、その場で、何に腹を立てているのか、何が不満なのか、きちんと伝えてくれるように約束します。もしかしたら相手は、腹は立ったけれど、腹が立った理由が幼稚だったり恥ずかしいと思って、言葉にすることもできないのかもしれませんん。たとえば、ぽきりさんの今回の件は、あくまで質問のなかの限られた情報によって推測すると、旦那さんは、半休を取って楽しい時間を過ごしたぽきりさんが妬ましく思えたものの、そんなことを妬むのは恥ずかしいと思い、どう話して良いのか分からない、ということもあって、つまり、「自分が腹を立てているのはとても小さなことだ」という自覚があるゆえに、恥ずかしくて言葉にもできない、だけど腹立たしい、言葉にできないけれど腹立たしいから無視が一番好都合、という感じで無視に入るのかもしれません(無意識的に)。この場合、どんな感情であっても、相手がどう感じているのかはいつでも知りたいと思っているし、聞かせて欲しい、恥ずかしい感情なんてないんだと、伝えるのが良い場合もあります。これはつまり、相手の言語化をいつでも歓迎していることを伝える、ということです。また、何かあるたびに1~2週間も無視されるのはつらい、寂しい、悲しい、など、相手に気持ちを伝えて、無視という手段を取らないように約束します。

3)もしまた何かあったときに再び無視をするようだったら、「無視をする相手の方にも問題がある」ことを自覚して、なるべく個人的に取らないことです。無視をしている相手のことがもし気になり過ぎるのであれば、それは自尊心の問題でもあるので、自尊心を高める必要もあります。自分の言動や判断に自信があれば、「無視されている」イコール「自分が悪い」とは限らない、むしろそうでないことも多い、と思えるようになります。いずれにしても、相手は、ぽきりさんを長時間無視してもぽきりさんは自分から離れていかない、大丈夫だ、という前提があって無視をしているので、そんな風に扱われ続けるのなら、結婚生活続けていけないかもしれない、などと伝えて、無視という手段はもう通用しないのだと毅然とした態度で伝えることも大切です。

 


(脚注1)ちなみに、気に入らないことがあったり、腹立たしいことがあるときに、沈黙を保って相手を居心地悪くさせることを、アメリカでは"silent treatment"などと言いますが、これは通常は女性が男性に対してすることで、たとえば、"I gave him some silient treatment." (彼にサイレント・トリートメントしてやったわ)みたいに言います。もっとも、Silent treatmentは、このタイプの男性と比べて、その長さもせいぜい数十分から数時間と、ずっと短いです。

(脚注2)もちろんこれには例外もあります。たとえばぽきりさんが、ぐでんぐでんに酔って真夜中過ぎに帰宅し、旦那さんに罵声を浴びせて玄関で嘔吐して旦那さんに掃除をさせた翌朝に、旦那さんが口をきいてくれない、というのであれば、これはまあ無視されても仕方がないでしょう。

 

 

 




万引きなど、盗みの克服について

2017-09-04 | 横浜出張カウンセリング

今回はグレアムさんから、少年の万引きについての質問です。

グレアムさん、お待たせ致しました。ご質問ありがとうございます。

以下がグレアムさんからの質問です。


少年の非行についてお尋ねしたいです。

その子は5歳ころから、友達のおもちゃを盗ってきてしまうようになり、それから親のお金を盗む、万引きをする、とエスカレートしたそうです。10歳のときには、友達からお金を盗み、喫煙、飲酒などもするようになってしまいました。

しかし、荒れている雰囲気ではなく、暴力を誰かに振るうということもありません。口は悪いですが、明るく振舞っています。

本人は盗むのをやめたいと思っているのに、繰り返してしまうそうです。

このような子どもの心の中は、どのような状態であると考えられますか?

もし、黒川先生の患者、クライアントとして、この子がクリニックを訪れたならどのような可能性を考え、どのような治療をされますか?

周りの大人は、その子に何をしてやれば良いのでしょうか?

情報不足だとは思いますが、先生のお考えをお聞かせいただければ幸いです。

 


その子が私のオフィスに来たら、まず私がすることは、その子と信頼関係を築くことです。良い治療関係の構築に集中します。

まず、どのようにして信頼関係を築くのかがポイントです。いわゆる問題行動を起こした人がセラピーに来た時、一番大事なのは、何があってもセラピストがその人を裁いたり、批判したり、非難したり、セラピスト自身の価値観を押し付けたりしないことです。

これは決してそのクライアントの問題行動を是認するわけではありません。

ただ、その人の問題行動には、例外なく理由があります。問題行動は、その人のこころの問題の表れのひとつに過ぎず、本質的なものではないのです。

これは万引きに限らず、アルコール依存でも、薬物依存でも、ギャンブル依存でも、セックス依存でも、強迫性障害でも、摂食障害でも、リストカットなどの自傷行為でも、他のどのような目に見える問題行動においても言えることです。その理由について、理解を深めるように、対話を深めていきます。ちなみに、対話を深めるなかで、信頼関係も深まるわけですが、対話を深めるためには信頼関係を深める必要がある、というパラドックスがサイコセラピーには存在します。

さて、どうして問題行動の理由について理解を深める必要があるのかというと、それが「総合的」な問題解決のために不可欠だからです。

それはたとえば、「煙草をやめたい」と言って私のところにやってきた方と、禁煙の方法など、煙草のことばかり話していても、その人はいつまで経っても煙草をやめられない、というようなことです。その人が煙草をやめられるようにするには、煙草以外の、より本質的なことについても話し合い、理解を深めていく必要があります。もちろんその人の喫煙についても話しづつけますが、あくまで喫煙は何かより本質的な問題のひとつの表れに過ぎず、つまりそのより根本的な問題が改善、解決していくなかで、その人は自ずと煙草へのこだわりをなくし、やめられるようになっていきます(たとえば、喫煙はその人の人生における日々の大きなストレス源に対する対処策であったりします)。

少年の盗みについても同じことが言えます。特にこの子は5歳の時から万引きの症状がでていて、歳を重ねるごとに問題は広がっていっています。比較的深刻なケースではあると思います。友達からお金を盗ることから始まり、万引き、親のお金を盗る、喫煙、飲酒と、反社会的な行動が広がっています。

私がまず気がかりのは、この子の乳幼児期の家庭環境や親子関係、成育歴、特別な出来事などです。家庭環境など、もしかしたら周りからは特別な問題は見えないかもしれませんが、そこには何か深刻な問題があるのではないかと思います。そうした問題は、今も続いているかもしれませんし、今は続いていないけれど、トラウマとしてその子の心の中で続いているかもしれません。

このように、未解決の問題やトラウマなど、根本的なものを解決、克服していくことで、その本質的な問題の具現化としての問題行動は徐々になくなってきます。

精神力動学的には、その子の窃盗という行為が、その子にとってどのような「象徴的な意味」があるのかについても探っていきます。

窃盗とは、「行動化」(acting out)の一種です。行動化とは、以前の記事でも触れましたが、その人がうまく意識化したり言語化したりできない心の葛藤や精神的苦痛などを、「行動」によって無意識的に表現することをいいます。

それと同時に、認知行動心理学的に、その子の窃盗という行為の心的な報酬や、より具体的な意味についても理解していきます。

グレアムさんのその子との関係性にもよりますが、グレアムさんをはじめとする周りの大人にできることは、その子に対して批判的になったり、裁いたり、叱責したりすることなく、また、思ってもいないことを装ったり取り繕うこともなく、じっくりと話を聞いてあげること、寄り添ってあげることだと思います。

そのなかで、「何かできることがあったらいつでも遠慮なく言ってね」と伝えて、いつでもその子を助ける準備があることを伝えておくようにします。

大人もそうですが、子供の万引きは窃盗は、本質的には、物欲ではありません。実際、家が貧しいわけではなく、ときにむしろ裕福な家庭の子が、万引きをしたりします。

本当に貧しくて食べるものがなかったり、学校生活の必需品である上履きなどが買えなかったりしてやむなく行う窃盗とは、心理的・物理的にも大きく意味が異なります。このように明白に物理的な理由がある場合、その危機的な貧困状態が軽減、解消すると、窃盗行為そのものが、自ずとなくなっていくことが多いです。

もちろん、生活に困っていない子であってもお金を盗めばそのお金で普段買えないものを買えて楽しんでいるようなことは観察されたりしますが、それではその子が本当の本当にその物品が欲しかったのかというと、それは甚だ疑問です。こうした種類の盗みをする子は、何か心の中に空虚感があります。補わなくてはならない、こころの空白や欠乏です。この象徴的な意味での「何か足りないもの」を補うべく、その子は盗みを繰り返します。

問題は、クレプトマニアという、万引きが脳の報酬系と結びついてしまう精神疾患で、盗む前の緊張感、焦燥感や、盗んだときのそこからの強い開放感や充足感などが特徴で、これは、ギャンブルなどの依存症や、強迫性障害とも近い精神病理です。このような場合、上記の精神力動的精神療法に加えて、より特化した認知行動療法(嫌悪療法/aversion therapy,系統的脱感作法/systemtic desensitization, エクスポージャー法/exposure therapy, 条件抑止法/conditioned inhibition, hidden sensitizationなど)や、行動療法、さらには薬物療法などを加えて治療する必要があります。

しかし、現時点でこの子がクレプトマニアに罹っているとは限りませんし、まずはその子の話をとことん聞くことからはじまります。

というのも、どんな具体的なテクニックを使うにしても、まずは本人が本当にこころからその問題を克服したい、良くなりたい、と強く願い、治療と改善に対して強いモチベーションを抱かない限り、効果は期待できないからです。

分かりやすい例として、アルコール使用障害を克服したい人のために、アルコールを飲むと吐き気を催す薬が処方されたりしますが、お酒をやめたいと心から願っていない人が、飲むと吐き気という非常に不快な経験をする薬を一定期間摂取し続けるということが考えにくい、ということです。依存症や衝動性障害の克服には、本人の克服したいという気持が重要です。このために、モチベーション付け面接(Motivational interviewing)などのテクニックが使われます。

もうひとつ、これも非常に大事なことですが、どんなに有害な行動で、たとえ本人がその行動に精神的・社会的・対人関係的な苦痛を経験していても、その行動は、何らかの形でその人のことを助けてくれています。それは、先述したように、その人にとってのストレスや精神的苦痛に対する適応手段です。

つまり、この問題を取り除くに至って、特に大事なのは、その人がこの問題行動に取って代わる、新しい適応手段を身に着けていくことです。代替になる、より建設的な適応手段が見につけば、その問題行動を手放すことへの抵抗感も軽減します。この代替となる適応手段の構築なしでその人から問題行動を取り除くのは危険であり、また、本人にとって、むしろ有害になる場合が多いです(脚注1)

こうした新しい適法方法やリソースを一緒に探してあげたり、その構築を手伝ってあげるのも、周りの大人ができることかもしれません。

 


(脚注1)これはたとえば、アルコール使用障害の人が、周りからの物理的な強制力などを借りて断酒したときに、今までお酒に酔うことで感じないようにしていた感情や、考えるのを避けていたことなどが、一気に襲ってくるようになり、深刻な抑うつ状態になってしまうような場合や、10代の子が、耐え難い精神的苦痛や空虚感に適応するためにリストカットをしていたところ、親が無理やりリストカットをやめさせたことで、適応手段を失い、本当に危機的な精神状態に陥ってしまうような場合について考えると、分かりやすいかもしれません。ここまで深刻ではなく、やめたくてもなかなかやめられない悪い習慣に悩んでいる人は、本当に多いです。悪い習慣がやめられない人の多くは、その「悪い」習慣に含まれる、ポジティブな要素、つまり、その人を助けてくれている一面についての認識がなく、とにかくその習慣を無理にストップすることを試みるため、結果として、精神的にしんどくなって、時間の問題でその習慣を再び始めてしまいます。しかし、その「悪い習慣」に含まれるプラスの要素を多分に含んだ、より建設的で良い習慣を少しずつ身に着けていくことで、その「悪い習慣」に対する依存も少しずつ軽減し、本当にやめやすくなります。

この少年の窃盗については、それを無理にやめさせたところで、どのような問題がでてくるか、はっきりとしたことは分かりません。たとえば、喫煙の量や頻度が高くなったり、飲酒の量が深刻になるかもしれませんし、より深刻な薬物に手を出すかもしれませんし、暴力性が出てくるかもしれませんし、攻撃性が自分自身に向いて、自傷行為などに陥るかもしれません。このような明確な新しい問題行動が出てくるとは限りませんし、代替となる適応手段なしにうまく辞められる可能性もゼロではありません。つまり問題なのは、うまく辞められる可能性は低く、精神的にバランスを崩し、より深刻な問題に発展するリスクが少なからずあるということです。


 


大人のいじめについて

2017-09-02 | プチ臨床心理学

今回はソラさんから、大人のいじめについてご質問をいただきました。

ソラさん、ありがとうございます。 

以下がソラさんからのご質問の引用です。

「大人のいじめなどする人に対して嫌な質問は何ですか」

 ご質問内容が大変シンプルであるため、いろいろな方面の可能性があり、回答の方向性も広範ですが、今回もコンテンツが拡散し過ぎぬよう気をつけながら考えてみます。ソラさんの質問の意図に沿った回答ができればよいのですが。

まず、「嫌な質問」とありますが、とりあえず、より広い可能性を考えてみたいと思うので、「嫌な質問」を「言動」に置き換えて考えてみたいと思います。

あらゆるいじめについて多くの場合言えるのは、加害者側は、被害者に言葉にしろ暴力にしろ、直接的であれ間接的であれ、危害を加える事で被害者から何らかの報復を受ける可能性が皆無であるか、非常に低いであろう事をほとんど無意識的に想定しています。言うなれば、加害者にとって被害者は「安全」なのです。危害を加える事に対する報復で自分自身が心的・物理的・社会的・経済的にダメージを受けることがない、という前提です。

つまりこの前提が覆されるような言動を取れば良いのです。それでもしばらくは続くかもしれませんが、加害者もその度に何かしらのカウンターアタックを食らっていては徐々にしんどくなってきます。加害者は、いじめることで、心的ストレスを解消したり軽減したりしているわけで、これは精神分析学では置き換え(displacement) という防衛機制で、加害者が本来怒りを向けるべき対象に怒りを向けることが不都合であるために怒りを向けても安全な対象に怒りをぶつけるわけです。

平たくいうと、八つ当たりの心理です。

上司から怒られたうっぷんを家に帰って妻に向けている夫は、従順な妻に何をいっても大丈夫だと思っています。しかしある日妻が、「こんな扱いにはもう耐えられない。離婚してください。実家に帰ります」と言い始めることで大慌てです。妻をいじめる事に、離婚という大きな代償の可能性が出てきたわけです。

以下も全くのフィクションですが、AKB48の指原さんが大好きな和明さんのことを、同僚の義一さんが、いい歳して、とか、心無いことを言って馬鹿にします。和明さんは、義一さんに言われるままになっていましたが、ある日、耐え切れずに、「私にどんな趣味があろうと、それは私の自由であって、あなたには関係ない。どうして会社で私の趣味というプライベートなことについて、あなたにそんな風に言われないといけないんでしょう。そんなのは言葉の暴力であって、人権侵害です!」と、フロア中に聞こえる声で言い返すと、義一さんはとても気まずくなり、以来和明さんのサッシー好きをからかうことはなくなりました。

ソラさんの最初の質問に戻ります。

「大人のいじめなどする人に対して嫌な質問は何ですか」

この質問について、簡潔に回答するのではなく、あえてこのように延々と書いたのには訳があります。

大人のいじめをする人を、かえって嫌な気分にさせる質問であれは、実はいくらでも思いつきます。

加害者に恥をかかせたり、加害者を傷つける質問です。

しかし、それはお勧めできません。加害者の破壊的な言動に対して、こちらも破壊的に返していては、憎しみが憎しみを呼び起こすだけであり、問題を解決するどころか、新たな問題を作り出すことになります。

そのような加害者の土俵の中には入ってはいけません。

そういうわけで、加害者の土俵に入らずに、加害者の問題ある言動をやめさせる方法についてお伝えさせていただきました。