興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学博士、黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

ドメスティックバイオレンスのサイクル 続き(The Cycle of Domestic Violence, cont')

2016-03-21 | カップル・夫婦・恋愛心理学

(前回の続き)

この時期の二人はしばしば互いに強いこころの繋がりを感じ、「二人はやり直せるかもしれない」と感じるようになります。このようにして、この「仲直り期」("reconciliation period")を経て、このカップルは再び1の「平静期/ハネムーン期」へと進み、このサイクルが幾度となく続いていきます。ひとたびハネムーン期に戻ってしまうと、被害者はなかなか周りの声に耳を傾けられなくなります。

このようなサイクルの中で、被害者の自尊心、自己評価は、次第に悪化してゆき、加害者の人格攻撃をどんどん心の中に内在化するようになります。自己評価が低くなると、自分の意見や考え、気持ちに自信がもてなくなるので、パートナーの自分に対する暴言に対して、疑問を持つ力も失われ、自分は相手に言われるように無価値で無能で何の魅力もないのだと錯覚するようになります。そして、この有害な関係性から抜け出そうという、かつては僅かにでも存在していた意志も、挫かれてしまいます。自分はこのような扱いがふさわしい無価値な人間なんだとか、私のような駄目な人間は、この人と別れて他の人と一緒になっても、同じような問題に陥るだろう、相手が違ってもうまくやっていける気がしない、この関係に留まらないと自分は生きていけない、ひとりではやっていけない、といったことを信じるようになり、このサイクルから抜けられるかも知れないという希望も薄れていきます。

だだ、このサイクルは繰り返されるものの、多くの人は、自分はこのままではいけない、何とかしなければいけないという客観性は、多かれ少なかれ、持っています。このサイクルが複雑化していて、相当慢性化していた人が、ある時親友や家族の声に耳を傾けて、助けてもらってこの関係から脱出する、という例は、決して少なくありません。こうした人たちは、「底つき感」を経験しているわけで、世の中には、こうした被害者たちは底つき感を経験しない限り変われない、などと言う人もいますが、必ずしもそういうわけではありません。それから、底つき感を経験するころには、被害者は、自尊心を失い、心身共に相当にボロボロになっていて、複雑性PTSDなどを患っている方も多く、回復には相当な時間が掛かります。つまり、我々周りの人間は、そうした底つき感が訪れるのを消極的に待っているべきではありません。我々が目指すのは、「底上げ」なのです。もしあなたの周りに被害者がいるのであれば、たとえばこの記事に書かれているような、DVのサイクルと悪循環について、彼らが耳を傾けやすい時期、つまり、ハネムーン期以外、とくに、3、4の時期に、わかりやすく説明したり、事前にDVのシェルターや相談窓口について調べて押さえておいて(検索キーワードで、「DV シェルター」、「ドメスティックバイオレンス 相談」、などと入れると、地域の施設や相談窓口の連絡先がいろいろと出ています)、そうしたリソースや施設の存在についても教えてあげて、もし彼らがその関係性から脱出する意思があるのなら、いつでも手助けする、という意志を伝えておきましょう。被害者を責めること、非難すること、駄目出しすることは避けながら、共感的に、彼らに寄り添って、自分は味方であり、とても心配していると、根気よく伝えていきましょう(基本、ハネムーン期は避けましょう。被害者を防衛的にしてしまい、逆効果です)。被害者がなかなか耳を傾けてくれなくても、どうか諦めないでください。あなたは、本質的にとても難しいけれど、とても大切なことに取り組んでいるのだということを、常に心に留めておいてください。お節介者扱いされたり、軽くあしらわれたり、逆上されたりと、辛いこともあります。しかしそれは、決してあなたの問題ではなく、被害者が、そのような病的な関係にどっぷり浸かってしまっているゆえの反応です。極力個人的に受け止めないようにして、適度な距離を保ちながら、支持していきましょう。

もしあなた本人が、今、このような夫婦関係、恋愛関係に苦しんでいるのでしたら、まずは、この記事に書かれているような、非常に問題のある関係性にあなたが入り込んでしまっていることに、まずは自覚を深めてください。自覚して、客観的に見つめてみてください。あなたはもしかしたら、今の状況は、パートナーが言うように、自分のほうに落ち度があるのではないかと思っているかもしれません。しかし、どんな理由があるにせよ、誰もあなたに暴力を振るってはいけませんし、あなたはそのような扱いには値しません。手を挙げられることがなくても、あなたの人格を否定するような暴言は、それ自体が根本的に間違っています。あなたをそのように扱う人のところに、あなたはそれ以上居続けてはいけません。今私が言っていることがしっくりいかなくても、気になることがあれば、まずは、DVのホットラインなどの相談窓口に電話してみてください。「DV 相談」などで検索すると、連絡先がでてきます。まずは電話してみて、あなたの置かれている状況について、相談員にお話してみましょう。

もしあなたが今の人間関係から逃れなければいけないという自覚を持っているのでしたら、上記のようにネットで検索して、相談員に具体的なリソースやシステムについて教えてもらったりして、あなたには実際にはどのようなリソースがあり、どのような手順を踏めばよいのか、押さえておきましょう。それから、日ごろから、相手の暴力が始まったとき、暴力を振るわれる前兆がでてきたときに、すぐに避難できるように、持ち出し用のバックを用意しておきましょう。その中身は、通帳と印鑑、実印、運転免許証、保険証、携帯電話と充電器、あればipadなどのタブレット、パスポート、現金、クレジットカード、数日分の着替え、必要であれば、メガネやコンタクトレンズ、常備薬などです。いざという時に、どのように脱出するか、シュミレーションをしておくことも大切です。

もしあなたが、今でもそのパートナーのことを大切に思っていて、夫婦関係やパートナーシップを続けたいと望んでいるであっても、いや、そうであるのならなおさら、あなたは一度、あなたを傷つけるパートナーと物理的な距離を置くことがどうしても必要です。あなたは暴力に耐えてはいけませんし、相手の方も、あなたに暴力を振るうことが決して許されないのだと、そのようにして学ばなくてはなりません。あなたに暴力を振るう イコール 別居だと、理解しなければなりません。こうした境界線なしに、一緒に居続けることで、残念ながら、良いものは望めません。同じことを繰り返しながら、何か新しいものや変化を期待することはできません。新しいものや変化が欲しければ、あなたは新しい方法を試さなければなりません。互いにまずは物理的な距離を持つことで、一緒に居るときは不可能であった、心理的距離、客観性も持つことができるようになります。こうして、心理的、物理的、ともに適切な距離を確保できたところから、建設な考えや、希望も芽生えますし、あなたの心身の根本的な回復も可能になります【完】

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