昼下がり。
小雨の中、自宅から1キロほど先の一時預かりに徒歩で息子を迎えに行った。
息子を引き取ったらそのまま電車で出かける予定で、傘を持っていくと嵩張って息子を抱っこするのが大変なので、少し迷ったが、傘を持たずに家を出た。
園に着くと、息子はいつものように目敏く私を見つけて大喜びで走ってきた。
息子はお気に入りのピンク色のユニコーンの傘を差して、上機嫌で歩いていたが、不意に立ち止まり、
「あれ、パパかささしてないよ。かさもってこなかったの?なんで?ぬれてるよ」
というので、
「大丈夫だよ。大した雨じゃないし、傘を持っていたら、パパ◯◯を抱っこできないから。傘よりも◯◯を抱っこできる事の方がパパは大事なんだ」
と答えると、
「だめだよ。パパだっこして」
というので、「え〜?いきなり抱っこ?」と言いつつ抱っこすると、彼は手に持っていた小さなユニコーンの傘を私の頭の上にかざしてくれた。
「こうすればふたりともぬれないでしょ」
息子の中で確かに育まれつつある思いやりの心や共感性が嬉しい。駅までの道は、重くて寒くて歩きにくかったけれど、楽しくて、心の中は暖かった。