興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学者黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

Dr.黒川のスカイプ心理相談室 予約状況

2015-11-05 | スカイプ心理相談室

Dr. 黒川のスカイプ心理相談室 

11月9日~15日の週の予約可能な日程をお知らせいたします。


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11月12日 木曜日
 12:00-12:50

 

11月13日 金曜日
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映画『マイ・インターン』とフロイトの「愛と仕事」 (The movie "The Intern" and Freud's "Love & Work")

2015-11-02 | プチ・映画レビュー

(注意: ネタバレ、大いにあります! この映画をまだご覧になっていない方は、まずは視聴してからお読みになることを強くお勧めします!)


 先日、久々に映画館へ行き、『マイ・インターン』を見ました。

 私はこの映画に関しては何の前知識もなく、なんとなく見てみようと思ったのですが、予想外に素晴らしい映画で驚きました。

 映画が始まるや否や驚いたのは、フロイトの名と彼の思想がでてきたことです。

 かつてフロイトはいいました。「(大人の)人間性の中核となるものは、愛と仕事である」 "Love and Work are the cornerstones of our humanness."と。つまり、私たちの人生において一番大切なのは、愛と仕事である、ということです。そしてこのフロイトの言葉が、この映画全編を通した主題となっています。

 この映画には、2人の主人公がいます。ロバート・デ・ニーロ扮する、退職して、妻に先立たれた、かつて成功したビジネスマンであった70歳の男性と、アン・ハサウェイ扮する、仕事と家庭をなんとか両立しようと奮闘する、極めて有能なバリバリのキャリアウーマンです。

 ロバート・デ・ニーロとしては、退職し、妻に先立たれた、ということで、仕事も愛も失ってしまい、この2つを取り戻していく過程の物語であり、アン・ハサウェイとしては、現在、献身的な専業主夫(育メン、Stay-at-home dad)と可愛い小さな娘のいる家庭と、自らが指揮を取り自分の潜在能力をフル活用している仕事という、まさに、愛と仕事の両方を手に入れた人生において、その非常に困難な両立がやがてある事件により、破綻しかけ、その奮闘の中で何とか本当の意味での愛と仕事の両立に到達するという物語です。

 このふたりの主人公が、互いに強く影響しながら、それぞれの人生における大切なものを取り戻していく物語は、とても微笑ましく、時に胸が痛いのですが、見るものに勇気を与えてくれ、見終えた時、とてもすがすがしい気持ちにしてくれます。

 これは一見すると、気軽にみられるコメディーですが、この映画が実際に含むところは深いです。

 この映画には、現在のアメリカ社会の様々なテーマがでてきます。たとえば、女性の社会進出などに伴う、結婚の性質や、人々の結婚に対する価値観の変容ですが、離婚率が50%を上回るアメリカ社会で、たぶんにもれず、この夫婦も離婚の危機に瀕します。フルタイムで高収入の女性が増えるなかで、男性が家庭に入り、伝統的な男女の役割が逆転する家庭も増えていますが、こうしたカップルの葛藤もよく描かれています。

 このカップルは、妻であるアン・ハサウェイが、自らの上に、CEOを迎え入れ、仕事量を軽減することで、夫婦の時間が増え、自分たちの置かれた結婚生活の危機を脱出できると信じていたのですが、ロバート・デ・ニーロの鋭い指摘により、仕事量そのものが根本的な問題ではなかったことに気づかされます。

 Stay-at-home dadの夫も、会社に行ってはいないものの、育児や家庭の切り盛りという大切な仕事があり、しかし、この仕事にうまく適応できずに、また、極めて多忙で帰ってくるといつも疲れている妻との愛を維持することにも困難を覚えていたわけですが、自らが犯した過ちを通して、真に自分自身と、また、妻と向き合えたことで、彼も、愛と仕事の両立に到達します。

 ところでこの映画は、人間の無意識の防衛機制、「隔壁化」(Compartmentalization)という機能が、アン・ハサウェイによって、非常にリアルに表現されていて、それも見ていて興味深いものでした。

 隔壁化とは、私たちが、心の中にいくつもの隔壁を築いて、心の中にいくつもの部屋を作ってしまうことで、不安や葛藤などから逃れてこころの平衡状態を保つ無意識の作用です。この壁のおかげで、その人は、さもなければその自己矛盾や罪悪感、不安、恐怖感などで同時にできないことを、強い葛藤なく両立させることができます。具体的にいいますと、アン・ハサウェイは、仕事とプライベートを傍から見ると不自然なぐらいにくっきりと分けて生活していました。彼女の人生には、その二面性がありました。隔壁化によって、それが可能になっていました。しかし、ロバート・デ・ニーロが彼女の直属の部下として配属されることで、彼とのその初めは望まなかった交流によって、「防壁化」の防衛機制がうまく働かなくなっていきます。

 彼女はその初期の兆候で不安を感じて、ロバート・デ・ニーロを他所に異動させてしまいますが、直感的に、自分にとって彼が必要な存在だと気づいて、引き戻します。

 愛と仕事を両立させるためには、その統合が必要なわけですが、彼女はその2つをうまく統合させることができずにいました(夫に仕事のことをシェアしたり、できる範囲で育児に参加したり、その努力はしていました)。しかし彼女は、自分はそれができていると思い込むことでなんとかやっていました。周りもそのように思っていました。ロバート・デ・ニーロを異動させたときの彼女は、この既存のライフスタイルからの脱却を恐れていたわけですが、同時に、今の自分が変わらなくてはいけないことも、直感的に気づいていたようです。

 ロバート・デ・ニーロを迎え入れてからの、「隔壁化」の防衛が利かなくなっていく様子はコミカルで、母親との関係性に問題のあるアン・ハサウェイは、今までの彼女だったらまずやらないような「失錯行為」をします。母親とのネガティブな電話の後で、母親の悪態をついたメールを、間違えて母親に送信してしまいます(これはまさにフロイトのいうところの失錯行為で、彼女は母親にダイレクトに怒りを向けることができずに旦那に愚痴るという形で表現しようとするのですが、メールの「誤送信」という形で母親に送ってしまいます。しかし書いているときりがないのでこれについてはこれ以上の言及はやめます)。そして、職場の部下に助けてもらうことで、その秘密にしていたプライベートの不手際をうまく処理します。この様子がコミカルなのは、それまで「完璧」で、「非の打ち所のなかった」彼女に、本来の彼女や、その人間味が戻ってきたからなのであり、この事件もまた彼女のこころの統合を促すことになります。

 アン・ハサウェイのキャラクターも非常に魅力的ですが、何といっても素晴らしいのは、ロバード・デ・ニーロ扮するインターンの人格だと思います。この男性のパーソナリティは、非常に健全で、成熟しています。共感的で、慈悲深い性格でありながら、他者の自主性や成長、境界線をとても大事にします。同期の若い男の子が実家を追い出される、どうしよう、という時も、彼が持ってくる物件情報を一緒に見てアドバイスしてあげながら、温かく見守っています。いざとなったら直接助ける用意はあるけれど、自ら親切を買って出て彼の学びや成長の機会を奪ってしまうようなことはしません。本当の意味で親切です。これはアン・ハサウェイ夫婦の危機においても同じです。

 彼のように共感的な人がこのようなスタンスに首尾一貫性を保つためには時に相当な苦痛も伴うもので、そこにも彼の強さが現れています。彼にはブレがありません。この映画を見ていて視聴者が癒され、元気付けられるのは、彼の人柄によるところも大きいと思います。 ロバート・デ・ニーロとアン・ハサウェイの心の交流、ミューチュアル・リスペクトも素晴らしく・・・・・何だか書いているとキリがないので今回はこの辺にしておきます。いやぁ、映画って本当に良いですね!


 


 

コメント (8)
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