興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学者黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

境界線(Boundaries)

2013-07-19 | プチ臨床心理学

 お久しぶりです。今回は、少し前に匿名さんからいただいた質問について解答してみたいと思います。以下が、その頂いた質問の引用です。匿名さん、お待たせいたしました。

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心を傷つける言葉を言ってくる人、仕事の邪魔をしてくる人、トラブルがあると必ずこちらの責任にしてくる人、間違った情報を与えてくる人、混乱させようとしてくる人、進行方向に立ちはだかってくる人、必要な情報を隠す人、与えられた仕事をせずに、関係のない私にやらせようとしてくる人、時間に遅れてきて謝らない人、嫌がらせをしてくる人、危険行為に誘ってくる人、差別をしてくる人、根拠のない中傷をしてくる人、私を利用しようと近づいてくる人・・・、こういう人たちから、たくさんストレスを受け取ってしまいます。関わらないのが一番ですよね。。。でも、対面でやり取りしなければならない時があります。こういう人たちから、ストレスを受けないように、物理的に彼らと同じ場に居ながらも、心の距離はしっかりと取りたいと常々思っているのですが、うまくできません。心の距離を取るやり方があれば、教えて頂けると、幸いです。

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 さて、匿名さんが対応に困っている人たちは、実にいろいろな種類の困った人たちで、つまり、いろいろな、異なった種類の問題を持った人たちです。具体的にどういう状況で、どういうことをしてくるのかは良く分からないけれど、与えられた情報で考えられる彼らの共通的な特徴は、悪意のある人、無責任な人、自己中心的な人、攻撃的な人、これらをさらに大雑把にまとめると、自己愛の強い人、つまり、自己中心的で、他人の立場に立ってものを考えるのが苦手、或いはできない人たちである、ということが言えそうです。

 こうした人たちとの対応で一番大切なのは、あなたの心の境界線、Boundariesを首尾一貫して、言葉と行動によって示していくことです。心の境界線とは、あなたという人間のプライベートなスペースと、外の環境、他者との境目で、これは、心のプライベートスペース、物理的なプライベートスペース、その両方について言えることです。あなたが人間関係で不快感、苦痛を経験しているときは、ほとんどの場合、あなたの境界線が他者によって侵されているときです。

 たとえば、電車に乗っていて、知らない人がいきなりあなたの腕を掴んできたら、あなたは不快感、苦痛を経験すると思います。これは、その人の意図が何であったにしても、そのとき、あなたの物理的なパーソナルスペースが侵されている状態です。ところで、あなたの腕をいきなり掴んできた人が、あなたと親しい友人で、掴んできたのは、電車が急に揺れて、その人が転びそうになったから、という場合は、あなたは別に不快感を感じないかもしれません。というのも、あなたの心の境界線は、絶対的なものではなくて、相対的なものであり、その他者との人間関係の性質にたぶんに影響されるものだからです。

 別の例を挙げます。今度はこころの境界線についての例ですが、会社で、ある女性が、嫌いな男性の上司にいきなり生年月日を聞かれたら、おそらく彼女は不快感を経験するでしょう。これはセクハラにも値することです。しかし、生年月日を聞いてきた男性の上司が、この女性と普段から非常に仲が良く、同世代で、何でも話すような仲であったら、この女性は不快感を経験しないかもしれないし、これはセクハラに値しないかもしれません。ここでもお分かりのように、境界線とは、その人間関係によって変化する、相対的で、柔軟性のあるものです。

 境界線、あなたのプライベートスペース(物理的、心理的)と外の環境との垣根、ですが、これは、人それぞれの性格によってもかなり異なるものです。がちがちの垣根を持っていて、人を受け入れない人もいれば、それがゴムのようで、いろいろな人間関係の状況において臨機応変に調整する人もいれば、きちんとした垣根ができておらず、他者からプライベートスペースに常時土足で踏み込まれている人もいます。このように、境界線は、柔軟性がなさ過ぎると親しい人間関係は築けないし、柔軟過ぎると、他者と自分との違い、境目が分からずに、不健全な人間関係に陥りやすいわけで、つまり、程よい柔軟性のある境界線が良い人間関係において大切です。境界線が硬すぎると思う人は、もう少し柔軟なものを心がければ良いし、境界線が緩過ぎる人は、少し固めることを心がけるのが良いでしょう。

 あなたの件においては、どうやら、少し固めの境界線を築く工夫が必要のようです。

 それでは、境界線は、どのようにして築いていくのか、ということですが、それは、あなたがどのような価値観を持っていて、どういう気持ちを経験しているか、言葉にしていくことから始まります。

 あなたは何が好きで、何が嫌いか、他者のどういう行為は大丈夫で、どういう行為は大丈夫でないのか、また、その大丈夫でない行為を受けたときに、あなたはどういう風に感じて、どういう風に思うのか、そういうことを首尾一貫性を持って主張していくことです。

 まずは、あなたがどういう考えを持っていて、どういう気持ちを抱いていて、好きなものは好き、嫌なものは嫌だと、上手に伝えていくことから境界線の構築は始まります。たとえば、トラブルがあって、あなたのせいにしてくる人に対しては、そこであなたはどう思うのか、「あなたの現実」は何であるのか、相手に伝えることです。それを相手が理解しなくても結構です。その人の現実と、あなたの現実、二つの現実があって結構です。大切なのは、あなたの現実を、言葉にして、その人に示すことです。示すことで、その人に、あなたの主体性が見えます。最初はなかなか難しいことですが、これを辛抱強く繰り返していくなかで、その人は少しずつ、あなたがどういう人であるのか、何が大丈夫で何が駄目なのか理解し始め、それらを尊重するようになってきます。

 根拠のない中傷をしてくる人についても、まったく同じことが言えます。あなたの現実を大切にして、表現しましょう。

 時間に遅れてきて謝らない人に、嫌な思いをしていたら、それを相手に上手に伝えることです。その人が時間に遅れてくることで困っているとか、あなたの時間を尊重されていないようで悲しいとか、以前にも述べた、I-Statement(「あなた」ではなくて、「私」を主語にした発言)を使って、気持ちを表現していくことです。それによって、相手は何があなたにとって大丈夫で、何が駄目なのか理解し、少しずつ尊重するようになります。それから、気持ちをきちんと言葉によって表現することで、あなたが今経験しているようなストレスは、ずっと軽減すると思います。さらに、健全な境界線ができると、今よりもずっと快適な生活になると思います。それから、きちんとした境界線があると、あなたは自分の意思が尊重されている、気持ちが理解されている、また、自分の意思や努力で状況を変えていけるのだ、という自信がでてきて、人間関係が楽しくなっていくと思います。

コメント (4)
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