興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学博士、黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

感情と気持ちと身体の反応 2

2006-10-01 | プチ生物心理学

(前回の続き)

感情という現象には、まず、特定の状況に対する
身体的な反応があり、主観的な気持ちは、その
フィードバックから生じるものだというところまで
書いたけれど、さらに、我々は、この主観的な
感情を、無意識的に表情にだして、周りの人に
伝えることになる。自分の気持ちや状況を周りに伝える
のは、あらゆる生き物にとって大切なことである。
「表情による、感情のコミュニケーション」という機能だ。

さて、我々は、他者の表情と言語による話に対して、
その人に共感することになるけれど、我々はどのようにして
相手に共感しているのだろうか。

私たちは、相手の表情にあわせて、自分も同じ表情をする。
これは、意図的である場合もあるけれど、その根本は
基本的に無意識的なもので、この「調和した表情」
によって、相手に、自分は共感しているのだと伝えている。

このとき、我々は、その相手の感情(喜びと笑顔、
怒りと怒りの表情、悲しみと苦痛な表情・・・)を
感じることで共感するわけだけれど、興味深いのは、
その仕組みだ。

これは、いろいろな研究によって支持されていること
だけれど、我々は、相手にまねて表情を作るという
「身体的な反応」によって、相手と調和した、主観的
感情も体験することになるという。

赤ちゃんが、大人の表情を真似することは広く知られて
いるけれど、我々は、遺伝子のプログラムに加えて、
このように、小さい頃からの学習によって、非言語的
コミュニケーションの技術を獲得するようだ。

悲しい顔をしている友人を見て、たとえ、実際にその
表情を自分も作らないとしても、自分がその表情をする
のをほとんど無意識に想像して、同じ気持ちになっている
のは、注意してみると自覚できると思う。

逆に、笑っている友人をみて、つられて笑ってしまい、
自分も楽しい気持ちになった、ということも、誰もが
経験していることだと思う。

ちょっとややこしいけれど、つまり、我々は、自分自身が
特定の表情を作ること、また、作ることをイメージする
こと(身体的な反応)によって、それにあった、
主観的な感情が得られるようだ。

以上のことを踏まえてみると、ちょっと辛いときに、
鏡の前で笑ってみると、ちょっと気分が上向きになって
きたり、気晴らしにお笑いなどを見て、笑っていたら、
気持ちが晴れてきたりするのは、科学的にも道理にかなって
いるように思える。

意図して作ってみた表情の種類によって、実際に
気持ちもそのように変わっていくという事実は、
日常生活のいろいろな局面で応用可能なもので、この
知識を上手く生活の中に取り入れていくと、
ちょっとした時に、いろいろと役立ちそうである。

もちろん、本当に強い気分を経験しているときに、
それを覆すような効果はないだろうけれど、少なくとも、
気分の方向を転換させるきっかけにはなると思う。