今月(10月)19日のNHK歴史秘話ヒストリアは、
愛と悲しみの“こだまでしょうか”
~大正の詩人・金子みすゞの秘密~
でした。民間の広告ネットワークACコマーシャルで流されていた金子みすゞ先生の「こだまでしょうか」という詩を誰もが一度は聞いたことがあるかと思います。
偶然にも武田鉄矢さんの昨日(25日)のラジオ番組で、この「こだまでしょうか」というこの詩が東日本大震災の被災地の多くの人の心の励ましの詩となっていることを話題にしていました。
ある人は、この詩を悲しい詩と感じますが、被災地の方々には励ましの詩になっている。人はそれぞれの心の状況で、感じ方が違う・・・・
そのような話をされていました。歴史秘話ヒストリアでは、被災地で現在、多くの人たちの心を癒しているこの詩の作者金子みすゞの物語でした。
金子みすゞ先生の詩については、これまでに
正義を決するもの[2008年07月04日]
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/00be7b1643eb9826e86380ef41bbff01
美徳の善のイデア(2)・風の画家中島潔[2010年12月28日]
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/0976e29f634c38bd65137b6c44dd8fbb
いつもの大地に咲く福寿草・金子みすゞ「土」「私と小鳥と鈴と」[2011年03月22日]
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/0399c2e8ad394f2d7fe5f9aa819ccd3b
見えぬけれどもあるんだよ[2011年07月13日]
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/68c5308785c55e4c9fe802391c1b67f3
の中で、私の時々の想いを重ね合わせながら詩を紹介してきました。番組は、
<歴史秘話ヒストリア(http://www.nhk.or.jp/historia/backnumber/102.html)から>
エピソード1 わたし 海の子! 金子みすゞ 衝撃のデビュー
みすゞの故郷・山口県仙崎は、かつて鯨漁で賑わった海の町。みすゞが詩の中で、最も多く書いたのは鯨や魚など海を描いた詩でした。海の詩によって一躍、人気詩人となった金子みすゞの大正サクセスストーリー。
エピソード2 「こだまでしょうか」 結婚生活の悲劇
東日本大震災後、話題となったみすゞの詩「こだまでしょうか」。多くの人はこの詩にほのぼのとした温かいイメージを感じています。しかし、これを書いた25歳のみすゞは、重い病や夫との不和に苦しみ、不幸のどん底にいました。人生最悪の時に書かれた名作に秘められたみすゞのメッセージとは?
エピソード3 みすゞ を支えた弟 半世紀後の奇跡
現代の多くのアーティストに影響を与えている金子みすゞが、世に知られるようになったのは平成になる直前のこと。それまでみすゞの作品は埋もれたままでした。金子みすゞ“再発見”の影には、みすゞの死後、姉の作品を世に出そうとした弟の奮闘がありました。二人の絆が起こした奇跡の物語です。
の三部構成になっていました。
番組の題名にもなっている詩は、次の詩です。
(NHK歴史秘話ヒストリアから)
「こだまでしょうか」
「遊ぼう」っていうと
「遊ぼう」っていう。
「ばか」っていうと
「ばか」っていう。
「もう遊ばない」っていうと
「遊ばない」っていう。
そうして、あとで
さみしくなって、
「ごめんね」っていうと
「ごめんね」っていう。
こだまでしょうか、
いいえ、誰でも。
詩集の中にこの詩を初めて知ったとき、わたしは東北の座敷童のいたずらのように幻想的なイメージを受けました。しかしその後いろいろなところにみすゞの世界を知ると、内心の“こだま”であることを知りました。
なぜ金子みすゞの詩に心ひかれるのか、番組では他の人にはない彼女独特の発想の一つとして次の二編の詩が紹介され語られていました。
(NHK歴史秘話ヒストリアから)
「積もった雪」
上の雪
さむかろな。
つめたい月がさしていて。
下の雪
重かろうな。
何百人ものせていて。
中の雪
さみしかろうな。
空も地面(じべた)もみえないので。
案内役の渡邊あゆみアナウンサーはその独特の味わいある語り口で、
【渡邊あゆみアナ】
なんと、ここでみすゞが思いを寄せるのは、表面からはわからない内側の雪のこと。普通では考えつかない視点ですよね。
と語り、私も以前紹介次の詩が紹介されました。
(NHK歴史秘話ヒストリアから)
「星とタンポポ」
青いお空の底ふかく、
海の小石のそのように、
夜がくるまで沈んでいる、
昼のお星は眼に見えぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
散ってすがれたたんぽぽの、
瓦のすきに、だアまつて、
春のくるまでかくれてる、
つよいその根は眼にみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
【渡邊あゆみアナ】
この詩ではみすゞは、見えない昼間の星に目を向けています。
そして童謡詩人の武鹿悦子先生のはなしです。みすゞの視点の置き所を語っています。
【武鹿悦子】
ああいう発想の人は、あの時代にはちょっといない。誰もが気がつかないことを発見し、もう一つ深く見る、詩人であったと。
と話していました。
【渡邊あゆみアナ】
わたしたちの持っている常識や見方を覆してくれるそれも金子みすゞの詩の魅力の一つなのかも知れません。
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こだまの詩を書きなさいと言われたら私は、山びこのような現象をそのまま文章にしてしまうでしょう。内心の心の会話を、自分だけの問いと応えを表現する発想は絶対にできないだろうと思います。
昼間の青空のそのまたその上に、星の光を星の存在を語ることも出来ません。雪の中間部分の上下の軋轢を擬人化して表現することなどできません。
「積もった雪」は、人生での人の体験する世間との軋轢でもあるかのように響いてきます。
「頑張ろう」っていうと
「頑張ろう」っていう。
本当に“こだま”してきます。
番組では金子みすゞ先生のお子さんの上村ふさえさんの「母について」の話がありました。手元にある『文藝別冊 総特集 金子みすゞ没後70年』(河出書房新社)を以前読んではいましたが、実際の心情の言葉に感動しました。
この番組は色々なことを教えてくれました。金子みすゞの魅力、今後もまた書きたいと思います。
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