【押尾被告にMDMA譲渡認める、男に求刑】 元俳優・押尾学被告(31)に合成麻薬「MDMA」を譲り渡した罪に問われている男の初公判が19日、東京地裁で開かれ、検察側は懲役1年6月(ろくげつ)を求刑し結審しました。判決は3月12日の予定。
※ 「結審」とは審理を尽くしたということです。
押尾被告の友人のネット販売会社役員・泉田勇介被告(31)は去年、東京・港区のマンションで押尾被告にMDMA約10錠を譲り渡した罪に問われた被告人事件ですが、泉田被告は「間違いありません」と当初から起訴事実を認めており、社会的に反響の高い事件ですが罪を認め反省していることから、この求刑から察すると執行猶予5年~3年が付きそうです。
なお、裁判の中で、泉田被告は、押尾被告が起訴事実を否認していることについて「なぜ本当のことを言わないのだろう。自分のしたことを認めて罪を償ってほしい」と話したということで、押尾被告は譲り受けは否認していませんい泉田被告人の法廷内の供述は補強的な要素にしかなりません。
一方、保護責任者遺棄致死の罪に問われている押尾被告は、「泉田被告から渡されたのは粉末のMDMAで、女性と飲んだのは女性に渡された錠剤のMDMAだ」などと主張しているようです。
成分鑑定からどの程度、粉末・錠剤別の判別できるかは疑問ですが、裁判員の前でどの程度信用されるか注目されます。
それにしても、押尾被告は最近、法律や英語の本を読んでだり、「拘置所は寒くてつらい。やることがないから早く出たい」と話しているそうですが、このと重大性の認識が相当欠如しているようです。
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これまでに似たような事件は、あったのだろうかと判例集を見ていたところ、次のような覚せい剤使用に係わる判例がありました。
覚せい剤を注射された女性が、その薬理作用により心身に異常を来たし、救護しなかった暴力団構成員がこの罪に問われた事件ですが、最高裁はこの男性に「病者として他人の扶助を必要とする者」に該当すると認定した判例です。
(最決平1.12.15集43巻13号879頁)。
【事案の概要】
暴力団構成員である被告人が被害者(当時13歳の女子)をホテルに連れ込んで覚せい剤を注射したところ、同人が苦しみだし、ホテルの窓から飛び降りようとするなど錯乱状態に陥ったのに、覚せい剤使用事実の発覚をおそれ、同女をそのまま放置して立ち去ったため、その後ほどなくして被害者の女子は同室で覚せい剤による急性心不全で死亡したというもの。
【判決要旨】
原判決の認定によれば、被害者の女性が被告人らによって注射された覚せい剤により錯乱状態に陥った午前零時半ころの時点において、直ちに被告人が救急医療を要請していれば、同女が年若く(当時13歳)、生命力が旺盛で、特段の疾病がなかったことなどから、十中八九同女の救命が可能であったというのである。そうすると、同女の救命は合理的な疑いを超える程度に確実であったと認められるから、被告人がこのような措置をとることなく漫然と同女をホテル客室に放置した行為と午前2時15分ころから午前4時ころまでの間に同女が同室で覚せい剤による急性心不全のため死亡した結果との問には、刑法上の因果関係があると認めるのが相当である。したがって、原判決がこれと同旨の判断に立ち、保護者責任遺棄致死罪の成立を認めたのは、正当である。
とするものです。
押尾被告人の事件とは状況が違いますが、救護義務、保護者責任を見た場合今回の裁判員に示される参考判例となります。