思考の部屋

日々、思考の世界を追求して思うところを綴る小部屋

源(みなもと)

2008年06月14日 | 古代精神史
 今はすっかり晴れているが、けさの美ヶ原の上空は雲が横たわっていた。
 
 空に浮かぶ雲の遙か彼方には、太陽が昇りはじめている。そんな早朝の風景である。
 
 古代人は、空(そら)の久しい彼方(かなた)に天(あま)があるとした。天からは雨(あめ)が降り、川となって海(あま)へ流れる。
 
 巨人は、天空の水をすくい川に流す。というのが古典に表記された古代人のもの的な自然観である。水は、ビーナスの姿に見るように東西を問わず命の源であるという。
 
 そもそも「みなもと」ということばは、「み(水)」+「な(の)」+「もと(本)」で、「みずのもと」、水源を意味します。そのことばを「万物の源」などと使うことからも、古代人が水源というものに対し、どれほど神秘を感じていたかということがわかります。
 生命の死とは、枯れることでした。「みずみずしい」身も心も「みず」が乏しくなると萎(しな)びて枯れて、魂が離れていく。水はまさに命の源でした。
(新潮文庫 中西進著「ひらがなでよめばわかる日本語」から)