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告白 (2010/日)(中島哲也) 90点

2010-06-12 13:47:02 | 映画遍歴
この、最初から最後まで息もつかせず、僕の脳裏を一点に捉えてしまった衝撃作の登場は見てしばらくしてもそのどよめきが途切れることはない。

その、脳裏の一点とは悪意という概念である。原作を読んだときとても読後感が悪く、これほど悪意に満ちた小説も稀有だと思った。こんな小説がベストセラーというのももう日本人が完全に病んでいるとさえ思ったものだ。

しかし、映画化されたこの作品は、その悪意というものを材料にしながら、映像表現だからこそ可能かもしれない大人の、そして子供の、意外と両者境のない暗黒の脳裏を鋭く暴き出すことに成功している。そう、大人以上に、子供は狡猾で実は残酷だ。本当は立派なオトナなのだ。子供の振りをしているオトナなのだ。

めくるめく映像が鮮烈でキレがいい。すごいショットの連続。告白者が変わるごとにさらに身を前に乗り出している自分。原作以上の面白さ、緊密さ。メジャーでありながらすごい映画が出現したものだ。中島哲也って、こんなに才能が溢れていた人だったっけ、と思ってしまうほど。

ラスト、角度を自由に輻輳して捉えられるよう広がりを持たせたのもいい。映画の読後感もすこぶる良くなった。ただ、松たか子にさえ「なーんてね」と言わせる終結は観客にせっかく凝縮したイメージを、散漫させることにはならなかったろうか、と訝る。まさか中島哲也一流の照れではないだろうし、、。

でも、スゴイ。万人に勧められる映画ではないが、内容はともあれ、その映画技術の粋と、人間が本来持っている悪意というむくむく起き上がる触手に自ら驚かされるファンも多かっただろう。傑出した映画である。

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