Sightsong

自縄自縛日記

魔法瓶@渋谷公園通りクラシックス

2018-07-06 20:26:39 | アヴァンギャルド・ジャズ

渋谷の公園通りクラシックスにて、藤井郷子さんの新グループ・魔法瓶(2018/7/5)。

Mahobin:
Natsuki Tamura 田村夏樹 (tp)
Satoko Fujii 藤井郷子 (p)
Ikue Mori モリイクエ (electronics)

このグループのデビュー盤『Live at Big Apple in Kobe』にはさらにロッテ・アンカー(サックス)が参加している。なんて魅力的な組み合わせか。正式には8月発売ではあるけれど、もう現物は出来上がっている。

藤井さんが棒で内部奏法をはじめる。一瞬おいて、田村さんが鈴を鳴らし、モリさんがラップトップを操り、いきなり満天の星空を幻視した。ここからの音絵巻は魅了されるものだった。モリさんの音はコズミックであり、またチャーミングでもあり、素晴らしい。無数の星がこぼれ落ち流れていくようでもあり、ときに夏の夜に聴こえる虫の声のようでもあり、それらがはっと気が付いたときには変貌してしまっている。耳を傾けてしまうようなスタティックなものであると同時に、実にダイナミックでもある。

その魔術師・モリイクエさんの横で、藤井さんもまた多彩なピアノを弾く。和声がシンクロしたり、抒情的なわらべうたを思わせるときもあり。藤井さんがドライヴを開始すると、田村さんのトランペットもまた鳴り、風を切るような音も出す。そしてモリさんがハコ全体にまき散らした星々は、ドライヴとともに後方へと逃げ光芒を描く。藤井さんが低音を響かせると、モリさんは洞窟の中のような残響、それがトランペットと相まってなんとも言えない余韻を残す。

夜の街。銀河鉄道。ピアノで諄々と語り聞かせようとする物語。ピアノの雷とエレクトニクスの放電。雨のあと。トランペットの輝き。さまざまなイメージが訪れては去っていった。

セカンドセットは、自律的に動く装置も使ったプリペアド奏法から。こんな合間での田村さんの鈴もなかなか気持ちが良い。やはりまた淡々として気が付いたら去来するイメージの数々。ピアノが高音を攻めるときは白昼夢のようだ。またプリペアドで鍵盤の音が積み木のように変わり、それにより、おとぎ話の世界になってもいる。そんなときにはモリさんの音はさまざまに蠢く動物であったりもする。脈動的なアンビエント、そして田村さんの魅力的なロングトーン。

ふとすべてが重なり合い、その騒乱はクリスタル内の乱反射のごときである。またしてもピアノが物語を紡ぎ、トランペットが惜別の音を放ち、そして、モリさんの星々は無数の流星群と化す。そういった役割は3人の間で交換もなされた。残響、愛惜、輝き。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●藤井郷子、田村夏樹
MMM@稲毛Candy(2018年)
藤井郷子オーケストラ東京@新宿ピットイン(2018年)
藤井郷子オーケストラベルリン『Ninety-Nine Years』(JazzTokyo)(2017年)
晩夏のマタンゴクインテット@渋谷公園通りクラシックス
(2017年)
This Is It! @なってるハウス(2017年)
田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス(2016年)
藤井郷子『Kitsune-Bi』、『Bell The Cat!』(1998、2001年)

●モリイクエ
イクエ・モリ『Obelisk』(2017年)
イクエ・モリ+クレイグ・テイボーン@The Drawing Center(2017年)
クレイグ・テイボーン+イクエ・モリ『Highsmith』(2017年)
エヴァン・パーカー、イクエ・モリ、シルヴィー・クルボアジェ、マーク・フェルドマン@Roulette(2015年)
Rocket Science変形版@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
シルヴィー・クルボアジェ+マーク・フェルドマン+エヴァン・パーカー+イクエ・モリ『Miller's Tale』、エヴァン・パーカー+シルヴィー・クルボアジェ『Either Or End』(2015年)
エヴァン・パーカー ElectroAcoustic Septet『Seven』(2014年)
イクエ・モリ『In Light of Shadows』(2014年)


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