Sightsong

自縄自縛日記

フランク・フォンヒッペル+IPFM『徹底検証・使用済み核燃料 再処理か乾式処理か』

2014-12-23 22:29:44 | 環境・自然

フランク・フォンヒッペル+IPFM『徹底検証・使用済み核燃料 再処理か乾式処理か』(合同出版、2014年)を読む。

原子力発電所からは、使用済み核燃料が発生する。日本は、以前より、これを再処理してプルトニウムを抽出し、高速増殖炉において使う核燃サイクルを計画・推進してきた。高速増殖炉の計画が頓挫した後も、MOX燃料に加工して既設の軽水炉で使おうとしてきた。その矢先の東日本大震災であった。

いや、東日本大震災後の原発停止は問題の構造をはっきりさせるものに過ぎなかった。すなわち、コストの面でも、マテリアルバランスの面でも、安全面でも、軍事的なリスクの面でも、再処理は難題に他ならないのである。本書も、そのような明確なメッセージを発している。

国外に目を向けても、再処理の方針を維持しようとしている国は、日本の他にはフランスくらいである(英国は中止の方針)。そして、直接処分であろうと再処理であろうと、高レベル廃棄物の処分地の決定にはどの国も苦慮している。少なくとも言えることは、密室で誰かの頭越しに決める方法ではなく、透明性を確保した協議でなければ、ことは決してうまく進まないという教訓が、全世界的に得られているということだ。

他国の事例を学ぶことは退屈かもしれないので、せめて、第III部の「日本への提言」だけでも広く読まれてほしい。あるいは、市民勉強会などのテキストにも良いかもしれない。

●参照
太田昌克『日米同盟』
『"核のゴミ"はどこへ~検証・使用済み核燃料~』
『活断層と原発、そして廃炉 アメリカ、ドイツ、日本の選択』
大島堅一『原発のコスト』
小野善康『エネルギー転換の経済効果』
鎌田慧『六ヶ所村の記録』
使用済み核燃料
『原発ゴミは「負の遺産」―最終処分場のゆくえ3』
『核分裂過程』、六ヶ所村関連の講演(菊川慶子、鎌田慧、鎌仲ひとみ)
吉次公介『日米同盟はいかに作られたか』
東海第一原発の宣伝映画『原子力発電の夜明け』
山本義隆『福島の原発事故をめぐって』
『大江健三郎 大石又七 核をめぐる対話』、新藤兼人『第五福竜丸』
有馬哲夫『原発・正力・CIA』


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんな本出してたんだ! (ひまわり博士)
2014-12-25 02:25:51
今日、合同に行ってきたんですよ。
知ってればもらってくるんでした。
しかし、原発関連書籍が売れなくなってきているそうで(のど元過ぎれば…的な日本人の悪癖)、出版人としては読んでいただいてありがたいことです。
ちなみにこの本、僕は関わっていません。
返信する
さもありなん (齊藤)
2014-12-25 07:44:14
原発関連書籍が売れなくなっているとは「さもありなん」です。執念とまでは言いませんが、興味くらいは維持し続けてほしいところです。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。