姜尚中『姜尚中と読む 夏目漱石』(岩波ジュニア新書、2016年)を読む。
岩波ジュニア新書ゆえ中学生あたりに向けた文章として書かれているのだが、他の同新書がそうであるのと同じように、大人が読んでも十分に手応えがあって面白い。
漱石は歳を重ねて読むことによりまた違ったものが得られる。近現代人のどうしようもない淋しさを、漱石はいちはやく感じ、苦しんでいた。死にとりつかれていた。漱石は決してナショナリストなどではなかった。姦通とタブーと愛というテーマに深く踏み込んでいた。大学や組織の権力構造を毛嫌いし、それとは無縁な知的関係と人間の関係を望んでいた。
すべて共感できることである。わたしもまた漱石を読みなおしてみようと思う。『明暗』など、未読の作品も少なくないことだし。