Sightsong

自縄自縛日記

ドグラ・マグラ

2024-02-11 12:09:03 | 思想・文学

鶴見俊輔『ドグラ・マグラの世界/夢野久作 迷宮の住人』(講談社文芸文庫)。

「世界に世界意識が生れたのは、いつからか」という鶴見の問題設定に刺激される。『ドグラ・マグラ』もまたただの怪作ではなく、その文脈の中にあった。孤独な想像の精神が世界といかにつながりうるものか。久作の父は頭山満ともつるむアジア主義者、ただ久作は父から大きな影響を受けつつも国家至上主義者ではなかった。それに加え、雲水として放浪し、東京文壇に身を置くことを拒否して福岡で農園経営をしていたスタンスも、久作の作品が世界につながり続けたことと無縁ではない。

そして、久作がこの世から姿を消したあとの戦時中にあって、その狂気は戦争という狂気とはまったく異なるものとして、たとえば学徒出陣の命令で兵士となっていた中井英夫にも影響を与えた(戦後、『虚無への供物』を書く)。また60年安保のときには平岡正明にも。

それにしても、こんな文章なんて鶴見俊輔らしい。「大アクビがつづけて出るように、シャックリがとまらなくなるように、何度書き改めても、端正な形をはみだす不随意筋の運動が、夢野久作にはおこる。」


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