Sightsong

自縄自縛日記

瀬川拓郎『アイヌ学入門』

2015-04-16 22:27:03 | 北海道

瀬川拓郎『アイヌ学入門』(講談社現代新書、2015年)を読む。

本書によれば、アイヌとは、歴史的には「自然のなかに生きる孤立した人々」などではなく、絶えざる交易活動により生活を成り立たせ、文化を発展させてきた人々である。サハリンのオホーツク人との勢力争いがあり、江戸末期以降の和人による封じ込めより前にも和人との交流があり、北千島さえも活動範囲であった。コロポックルは北千島のアイヌであるという。

交易に用いられるものは、たとえば、北千島で獲れるラッコの毛皮であった。姫田光義編『北・東北アジア地域交流史』には、オコジョの毛皮をもって、サハリンを介してモンゴル帝国(元)との交易をしていたとあり、それはクビライが身にまとってもいる(杉山正明『クビライの挑戦』の表紙画)。 また、モンゴル帝国は日本との海戦と同時期に、アイヌとも戦っている。北海道で採れる金は、やはり交易の対象となり、その過程でアイヌ、和人、朝鮮半島からの渡来人との交流があった可能性さえあるという。すなわち、そのようなダイナミズムを抜きにしては、アイヌの歴史を理解できないということになる。

近現代のアイヌに対する差別政策についても言及されている。たとえば、旭川の事例がある。和人の入植者が急増した一方、道庁は、給与地を設定し、アイヌを集めて各戸に割り渡した。しかし、その土地は川べりのしばしば氾濫をともなう湿地帯であり、他のひどい扱いも相まって、アイヌの人々は大変な苦難を強いられた、とある。誰だ、教科書に「土地を与えた」などと書かせようとする者は。

●参照
姫田光義編『北・東北アジア地域交流史』
井上勝生『明治日本の植民地支配』(アジア侵略に先だってなされたアイヌ民族の支配)
伊佐眞一『伊波普猷批判序説』(伊波はアイヌをネーションを持たぬとして低く評価した)
OKI meets 大城美佐子『北と南』(OKIはアイヌの弦楽器トンコリの使い手)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。