Sightsong

自縄自縛日記

ブランドン・ロペス+ジェラルド・クリーヴァー+アンドリア・ニコデモ+マット・ネルソン『The Industry of Entropy』

2018-05-22 15:09:12 | アヴァンギャルド・ジャズ

ブランドン・ロペス+ジェラルド・クリーヴァー+アンドリア・ニコデモ+マット・ネルソン『The Industry of Entropy』(Relative Pitch、-2018年)を聴く。

Brandon Lopez (b)
Gerald Cleaver (ds)
Andria Nicodemou (vib)
Matt Nelson (ts)

何しろマット・ネルソンのテナーが独特だ。塩っ辛い音色をベースにして、ひたすらに濁流をごうごうと創りだしている。ブルージーな時間、散発的なフラグメンツを紡ぎ続ける時間、複数の流れのより合わせ、叫び。このバンドの中で、かれが時間の連続性を担保しているように聴こえる。

では他の3人はというと、つまり、時間にその都度立ち会っている。ブランドン・ロペスはダークな色で飽くことなくエネルギーを励起し続けている。アンドリア・ニコデモはヴァイブの効果を活かして火花のように音への粘着をはじき飛ばしている。また、ジェラルド・クリーヴァーは、他でもそうであるように、濁流を絶えず外へ外へとスピルアウトさせる。

この四者による拮抗が見事。

●ブランドン・ロペス
「JazzTokyo」のNY特集(2017/2/1)

●マット・ネルソン
Talibam!『Endgame of the Anthropocene』『Hard Vibe』(JazzTokyo)
(2017年)

●ジェラルド・クリーヴァー
トマ・フジワラ『Triple Double』(2017年)
スティーヴ・スウェル『Soul Travelers』(2016年)
『Plymouth』(2014年)
クレイグ・テイボーン『Chants』(2013年)
クリス・ライトキャップ『Epicenter』(2013年)
Book of Three 『Continuum (2012)』(2012年)
Farmers by Nature『Love and Ghosts』(2011年)
ジェレミー・ペルト『Men of Honor』(2009年)
ロブ・ブラウン『Crown Trunk Root Funk』(2007年)
リバティ・エルマン『Ophiuchus Butterfly』(2006年)
ロッテ・アンカー+クレイグ・テイボーン+ジェラルド・クリーヴァー『Triptych』(2003年)


タンディ・ンツリ『Exiled』

2018-05-22 14:33:34 | アヴァンギャルド・ジャズ

タンディ・ンツリ『Exiled』(Ndlela Music Company、-2018年)を聴く。

Thandi Ntuli (p, key, vo, backing vo, spoken word (track 1))
Sphelelo Mazibuko (ds)
Keenan Ahrends (g)
Spha Mdlalose (backing vo)
Benjamin Jephta (b)
Marcus Wyatt (tp, flh)
Mthunzi Mvubu (fl, as)
Justin Sasman (tb)
Sisonke Xonti (ts) (tracks 2, 5, 8, 13,15)
Linda Sikhakhane (ts) (tracks 1, 6, 7, 9, 10, 12)
Vuyo Sotashe (vo, backing vo) (track 9)
Kwelagobe Sekele (additional sounds) (track 4)
Lebogang Mashile (poetry, spoken word (track 8))
Tlale Makhene (perc) (tracks 5,12).

『ラティーナ』誌2018年6月号の南アフリカジャズ特集に、タンディ・ンツリのインタビューが3頁掲載されている。彼女のバックグラウンドはジャズ、クラシック、ヒップホップ、ソウルなど幅広く、南アのアイデンティティも受け継がれていることがわかる内容だが、それはなにも驚くべきことでもないのだろう。むしろ、タイトル(exiled)の意味を、「政治的な過去」と現在とを結びつけるために使ったのだという回答に興味を覚えた。

政治的に苛烈な色が音楽作品として反映されているわけではない。それよりも、確かにサウンドは越境的でもあり、南アということばに戻りたくなるようなときもあり、とても面白い。

彼女のピアノは透明感があって清冽な水のようである。ヴォーカルの使い方のセンスがときにエスペランサの音楽のようでもあり、またアンサンブルの雰囲気はまさに南アのベキ・ムセレクを思わせる(かれが亡くなってからもうすぐ10年!)。彼女は注目する作曲家としてアンブローズ・アキンムシーレとジェラルド・クレイトンとを挙げており、そういったコンテンポラリージャズの感覚もある。

なかなかの傑作。ライヴもいつか観てみたい。


アレクサンドラ・グリマル『Andromeda』

2018-05-22 06:40:28 | アヴァンギャルド・ジャズ

アレクサンドラ・グリマル『Andromeda』(Ayler Records、2011年)を聴く。

Alexandra Grimal (ts, ss)
Todd Neufeld (g)
Thomas Morgan (b)
Tyshawn Sorey (ds)

何か意識の蒸留過程を経て出されてくる音の美的なものを、トッド・ニューフェルド、トーマス・モーガンともに強く感じないわけにはいかない。それに加えて、音が鳴る周波数ということではなく、やはり出し方の過程というところで、タイショーン・ソーリーのドラムスにも共通の意識があるように聴こえる。

この独特な3人とともに遊泳するグリマルのサックスの断片もまた面白い。