Sightsong

自縄自縛日記

サム・リヴァースのザ・チューバ・トリオ

2009-12-14 21:32:22 | アヴァンギャルド・ジャズ

レスター・ボウイ・ブラス・ファンタジーのことを思い出したら、チューバが効果的なグループとして連想がつながったのは、コンポステラヘンリー・スレッギルのヴェリー・ヴェリー・サーカス、それから、サム・リヴァースのザ・チューバ・トリオ


これが色違いで3枚ある

ザ・チューバ・トリオのメンバーは、サム・リヴァース(テナーサックス、ソプラノサックス、フルート、ピアノ)、ジョー・デイリー(チューバ、バリトンホルン、パイプ)、ウォーレン・スミス(ドラムス、パーカッション)。『Essence - The Heat and Warmth of Free Jazz』(Circle Records、1976年録音)は、オランダのBimhuisにおいてライヴ演奏された1日の記録であり、LP 3枚にすべておさめられている。なお、ジャケットは写真が共通で周囲は色違いである。

聴客によっては、これらの演奏をすべて聴いたのであろうが、音の記録だけで3枚を続けて聴くのはかなりエネルギーを要する。LPの裏面には、「このライヴ録音された音楽は、スタジオ録音された音楽よりも、可能なかぎり大きな音量で聴いてください」などと書いてある(笑)。

大きな理由は、やはり、リヴァースのソロである。旋律は奇怪極まり、それを蛇のように、あるいは吐き出し続ける毒液のように、うねうねと凄い速さで吹きまくる。

マイルス・デイヴィスのファンにとってみれば、なぜか短期間グループに在籍し、来日時の『イン・トーキョー』に名前を残す男、といった好ましからざる存在なのかもしれないが、私にとってはまったく逆。『イン・トーキョー』は、多くを売り払った中で手元に残す、マイルスの数少ない盤のひとつなのだ。「If I Were a Bell」での唐突に始まる異物のようなソロには笑ってしまう。もっとも、マイルスの重力圏での怪しさに過ぎないのであって、このようなオリジナルな音宇宙はもっと怪しい。

チューバも、ヴェリー・ヴェリー・サーカスやブラス・ファンタジーのような、編曲に基づきグループ全体をドライヴする役目は、ここでは全く与えられていない。とは言っても、天空を飛翔できない楽器であるから、フリー・インプロヴィゼーションの中で地上で暴れる重機と化している。これと、ソプラノサックス、フルート、テナーサックスそれぞれの音色とが絡む様子は、相当にエキサイティングである。

でも3枚連続はちょっと。