Sightsong

自縄自縛日記

沖縄の地学の本と自然の本

2009-08-16 22:37:51 | 沖縄

■『沖縄の島じまをめぐって』(沖縄地学会編著、築地書館、1997年)

これまで、沖縄の地学的な成り立ちを把握するために、これを読んでいた。解説だけでなく、実際にどこに行けば何を観察できるかが書いてある点がわかりやすい。しかし古い本なので、どこそこの裏手に露頭があって、などと書いてあるが、現在もそうなのかわからない。

3年ほど前、大宜味村の塩屋湾で、解説に従って砂浜を探った。確かに星の砂などと同様に有孔虫の殻である銭石をいくつも見つけることができた。コインがざっくざっく拾える浜というわけなのだ。(>> リンク

良い本なので、図書館で使うシール状のビニールを貼って大事にしている。

参照
星の砂だけじゃない(沖縄県の塩屋湾の銭石のこと)

■『琉球列島ものがたり 地層と化石が語る二億年史』(神谷厚昭、ボーダーインク、2007年)

今夏、那覇で見つけ、あっ読みたかったのはこれなんだと喜んで入手した。著者は上述の『沖縄の島じまをめぐって』でも書いているひとり。島によって別々に記述しているのではなく、トピックや時代によってまとめている。

古生代以降の琉球弧の隆起沈降やプレート運動をうまく整理してあって、とても面白い。とは言っても地学は常に変わっていくパズルであるから、ときどき混乱してしまう。

沖縄の赤土には北部の国頭マージと中南部の島尻マージとがあり、前者は強酸性、後者は中性~弱アルカリ性。その理由で、北部では化石が分解してしまいあまり見つからないのだ、という説明に納得させられる。やんばるでシャワーを使っていて、手拭の色が急速に落ちたのも酸性のせいかな。

島尻マージの成因だが、琉球石灰岩の分布と重なっているため、石灰岩が風化して赤土と化したと考えられていたらしい。少なくとも、『沖縄の島じま・・・』にはそのような示唆がなされている。ところが本書によると、大陸からの風成塵が相当入っているようで、定説はまだないようだ。そのような研究状況も書かれてあって好感を覚える。本書には、島尻マージ内のマンガン塊についても解説してあって、やはり石灰岩の風化とばかりは言えないという。東村の宇出那覇にもあるようで、今度、民宿「島ぞうり」に泊まることがあれば気にとめておこうと思っている。

これだけでなく内容は盛り沢山で、例えばあまりにも独特な自然史を持つ南大東島にやっぱり行きたいなあと思わせる解説もあり、困ってしまう。このような本は一度読んでおしまいではない。

参照
『赤土問題の基礎物理化学的視点』(沖縄の赤い海)
ウデナハ売店(沖縄の共同売店)

■『磯の生き物』、『海岸植物の本』、『亜熱帯沖縄の花』(屋比久壮実、アクアコーラル企画)

自然や街で何かを見るとやはり確かめたくなるのであって、このような写真付、1頁1種というつくりの本は嬉しい存在だ。とりあえず気になる3冊を入手し、あとで名前を確認したりぱらぱらめくったりして楽しんでいる。著者がすべて同じことは、後で気が付いた。

参照
東京の樹木

 

■『環境読本 消えゆく沖縄の山・川・海』(沖縄県教育文化資料センター 環境・公害教育研究委員会編、2003年)

おそらく学校の副読本なのだと思う。尊敬していた、故・宇井純氏が巻頭文を寄稿しているため、読まないわけにはいかない。

やんばるの森林や川の生物多様性、林道による森林破壊、リュウキュウアユ、タナガー(テナガエビ)、赤土汚染とサンゴの死滅、外来魚問題、基地、破壊的なリゾート、干潟、ジュゴンなど、ひとつひとつのテーマについて、おざなりな解説ではなく、実際の姿を提示しているようだ。このような、専門書ではなく、まともに沖縄の自然環境問題を概観したものは、東京の書店では見つけることができない。


漫湖干潟

2009-08-16 13:00:00 | 環境・自然

那覇市外の南、豊見城市との間に、漫湖干潟がある。国場川と饒波川との合流するところで、名前とは違って湖ではないが、汽水域である。沖縄本島でラムサール条約の登録湿地に指定されているのはここだけだ。もっとも、他にも大事な干潟・湿地はたくさんある。(東京湾でラムサール条約に登録された場所が谷津干潟だけ、というのと同様。)

近くには「漫湖水鳥・湿地センター」があり、まずは満潮時に足を運んだ。クロツラヘラサギという貴重な鳥の剥製があったり、地図や展示が工夫してあってとても良い感じの場所だった。2階には双眼鏡が並べられていて、バードウォッチングができるようになっている。 なんだか行徳の野鳥観察舎と似ている。職員の方も親切で、みんな缶バッジをもらってしまった。

時期的には鳥が少ないようで、ダイサギダイシャクシギを見つけた程度。改めて干潮時に出かけた。漫湖公園から干潟に下りることができるようになっていて、マングローブや生き物をじろじろ観察した。息子の夏休みの自由研究も兼ねて、なのだ。

カニはやはりうじゃうじゃいる。白いシオマネキ、爪が赤いヤエヤマシオマネキ。いつまでも片手で潮を招いているのは愛嬌がある。もちろん近づくと一斉に姿を隠す。トビハゼも敏捷である。

マングローブは、このあたりはメヒルギが多いようで、胎生種子(泥に刺さったところで発芽する)が「漂木」(牧野富太郎)の通り漂っていた。


干潮時の漫湖 FUJI GW680III、Kodak VC400、ネガプリント


ヤエヤマヒルギ FUJI GW680III、Kodak VC400、ネガプリント 


メヒルギの胎生種子 Leica M4、Biogon 35mmF2、Rollei Retro400、イルフォードMG IV RC、2号


シオマネキ


ヤエヤマシオマネキ


トビハゼ

シオマネキの動きは見ていて飽きない。デジカメで動画を撮ってみた。
>> シオマネキの動画(15秒)

夜にだけ花を咲かせるサガリバナも、広い意味ではマングローブに含まれる。帰り道に奥武山公園の駅まで漫湖公園を歩いていたら見つけた(もちろん咲く前)。これはこれで嬉しかったのだが、数日後、那覇の街路樹として咲いているサガリバナを見つけたときには、ちょっと感激してしまった。


開花を待つサガリバナ Leica M4、Biogon 35mmF2、Rollei Retro400、イルフォードMG IV RC、2号

ところで、7月25、26の土日に豊見城市の豊崎ビーチハーリーの大会が開かれていた。ハーリーの発祥が漫湖だという由来にあやかって、昨年から復活させているイベントということだ。タクシーで「ハーリーやっているらしいので・・・」と話すと、普通は終わっている、もう季節外れだねと言われてしまった。


豊見城のハーリー FUJI GW680III、TMAX400、イルフォードMG IV RC、2号


豊見城のハーリー Leica M4、Biogon 35mmF2、Rollei Retro400、イルフォードMG IV RC、2号

●沖縄の干潟
糸満のイノー、大度海岸
泡瀬干潟の埋立に関する報道
泡瀬干潟の埋め立てを止めさせるための署名
泡瀬干潟における犯罪的な蛮行は続く 小屋敷琢己『<干潟の思想>という可能性』を読む
またここでも公然の暴力が・・・泡瀬干潟が土で埋められる
救え沖縄・泡瀬干潟とサンゴ礁の海 小橋川共男写真展 

●マングローブ
科学映像館の熱帯林の映像(胎生種子が下の泥に突き刺さる)
荒俣宏・安井仁『木精狩り』(ヒルギ=「漂木」=「干る木」)
島尾ミホ・石牟礼道子『ヤポネシアの海辺から』(海辺のヒルギ、染物に使う)
沖縄県東村・慶佐次のヒルギ
沖縄県東村のサガリバナ(下がり花)
那覇のサガリバナ(下がり花)(那覇でも街路樹になっている)

●三番瀬
三番瀬を巡る混沌と不安 『地域環境の再生と円卓会議』
三番瀬の海苔
三番瀬は新知事のもとどうなるか、塩浜の護岸はどうなるか
三番瀬(5) 『海辺再生』
猫実川河口
三番瀬(4) 子どもと塩づくり
三番瀬(3) 何だか不公平なブックレット
三番瀬(2) 観察会
三番瀬(1) 観察会
『青べか物語』は面白い

●東京湾の他の干潟
盤洲干潟 (千葉県木更津市)
○盤洲干潟の写真集 平野耕作『キサラヅ―共生限界:1998-2002』
江戸川放水路の泥干潟 (千葉県市川市)
新浜湖干潟(行徳・野鳥保護区)

●その他
加藤真『日本の渚』(良書!)
『海辺の環境学』 海辺の人為(人の手を加えることについて)
下村兼史『或日の干潟』(有明海や三番瀬の映像)
『有明海の干潟漁』(有明海の驚異的な漁法)
理系的にすっきり 本川達雄『サンゴとサンゴ礁のはなし』(良書!)


鳩間可奈子+吉田康子

2009-08-16 01:56:22 | 沖縄

知名定男のライヴハウスがコザから那覇に移転されて「島唄」となった。毎週1回、鳩間可奈子吉田康子が唄っているというので聴きに出かけた。

ハコの中は、民謡酒場ではなく、妙に広いコンサート会場。客はさほど多くなかった。六本木の島唄楽園で鳩間ファミリーの公演があるときには、即座に予約で満員になるのに。

2人とも、直に聴くのは、2007年3月にうるま市記念芸術劇場で行われた「知名定男芸能生活50周年記念公演・うたまーい」以来だ。鳩間可奈子の声の音圧は相変わらず物凄い。こればかりはCDでは充分にわからない。吉田康子の余裕と色気も変わらない。


吉田康子 Leica M3、Elmarit 90mmF2.8、TRI-X (+2)、イルフォードMG IV RC、2号


鳩間可奈子 Leica M3、Elmarit 90mmF2.8、TRI-X (+2)、イルフォードMG IV RC、2号


吉田康子 Leica M3、Elmarit 90mmF2.8、TRI-X (+2)、イルフォードMG IV RC、2号


鳩間可奈子 Leica M3、Elmarit 90mmF2.8、TRI-X (+2)、イルフォードMG IV RC、2号

●参照
鳩間可奈子の新譜『太陽ぬ子 てぃだぬふぁー』
知名定男芸能生活50周年のコンサート