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Sightsong

自縄自縛日記

元ちとせ×あがた森魚

2009-04-12 00:22:46 | ポップス

元ちとせは、インディーズ時代のミニアルバム『Hajime Chitose』(AUGUSTA、2001年)で、ビョークやジミヘンなどのカヴァーを幾つも歌っている。その中に、あがた森魚「冬のサナトリウム」も選ばれている。サナトリウムって!(まるで『魔の山』みたいだ。) 歌詞が本当に寂しくて、余裕がなさそうに歌う元ちとせの声が妙にマッチしている。

雪明り 誘蛾灯
誰が来るもんか 独人

オリジナルも聴きたくなって、先日、中古レコード店で、あがた森魚『乙女の儚夢』(1972年)を探し出した。20代前半の吹き込みの筈だ。

心底弱そうで、ヘロヘロしていて、すぐにでもポキリと折れそうだ。しかも、アルバム全体を、アナクロニズムと少年趣味と少女趣味が覆っていて、(その後のイメージがあるせいか)ダンディにも聴こえて、タルホ趣味というか、何と言ったらいいのだろう。情緒不安定な10代の頃に聴きたかったな、などと思ったりして。

それから、あがた森魚のオリジナルは聴いたことがないが、元ちとせは「百合コレクション」もカヴァーしている。『ノマド・ソウル』(Epic、2003年)などで歌っていて、これも好きなのだが、テレビ番組『僕らの音楽』(フジ、2006/5/5)でこの2人が共演しているのを見て余計に気になってしまった。飄々として、弱弱しい癖に堂々としているあがた森魚と、あくまでウェットに歌おうとする元ちとせとの組み合わせは非常に良かった。

こういった吹き込みに比べると、ここ数年間の元ちとせの歌唱は、声がよれていて、「コブシのためのコブシ」のようにも感じたりする。不満に思っているのは自分だけではないに違いない。

『SWITCH』(2003/7、特集・池澤夏樹・元ちとせ〔その琉球弧たる声〕)での対談を読むと、『Hajime Chitose』にも収録されている山崎まさよし「名前のない鳥」をはじめて歌ったとき、テンポがあまりにも速く、「コブシを回さなかったら追いつかなかった」とある。そのコブシと今のコブシとは違うような気がするのだ。


『ハイヌミカゼ』に触発された記事ばかり