なあむ

やどかり和尚の考えたこと

サンサンラジオ289 できそこないの男

2020年11月22日 05時32分14秒 | サンサンラジオ
三ちゃんのサンデーサンサンラジオ、第289回。11月22日、日曜日。

まずは報道部から1週間の動きをまとめて。
15日日曜日、十日町公民館講演
17日火曜日、シャンティリモート面談
18日水曜日、葬儀、シャンティ業務執行理事会
その他法事が5件。
というような1週間でした。

久しぶりに福岡伸一博士の『できそこないの男たち』を読みました。何度読んでもおもしろいですね。
専門的なところをすっ飛ばしても、文章が物語のように面白いのでついつい繰り返して読みたくなります。
話は、顕微鏡の発明から精子が発見されたというところから始まります。

男と女はどこから分かれたのか、アダムとイブのように男が先で女はその肋骨の一本から生まれたのか。それとも女が先なのか。
Y染色体の発見、DNA、SRY遺伝子と、性別の決定プロセスが次第に解明されてきた。
そして結論、生命体の基本仕様はすべからく女である。
人間の場合受精から7週目までは、染色体がXXかXYかにかかわらず、全ての受精卵は女の道をたどる。
その時には既にその後女性器となる割れ目が出来上がっている。そのまま進めばそれは女となる。
その時にそれを男に変えるスイッチを入れる遺伝子、それがSRYなのだ。
一旦そのスイッチが入ると、女だった体の設計は男としての仕様にカスタマイズされていく。
まず初めに行われるのは割れ目を閉じることである。
急場しのぎの工事のようにたどたどしく縫い合わされた割れ目の痕跡、それが「蟻の門渡り」と呼ばれる玉袋の裏の縫い目の跡なのだ。
(考えてみれば、男に意味のない乳首が残っているのは、基本設計が女であることの名残なのだと納得することができる。)
いずれにせよ、生命科学の進化によってアダムを生んだのはイブであるということが解明されたのだ。
ではなぜ女は男を生んだのか。
地球に生命が誕生してから10億年後、地球環境がダイナミックに変化していた、その変化に順応しながら生き残っていく子孫をつくるためには、単一の遺伝子よりも多様な遺伝子の方が可能性が高いということに気がついた。その時点まで全ての生命は女だった。
そこで、ある一人の女の遺伝子を別の女に運ぶための「運び屋」として生み出されたのが男だった。
しばらくたって女は、男に遺伝子だけでなく様々なものを運ばせるようになった。遺伝子を運び終わった男にその後も使い道があることに気づいたのである。
家を作らせる、子どもを守らせる、食糧を調達させる、薪を運ばせる、身を飾るためのもの、女を楽しませるものを探してこさせる、という具合に。
やがて男も気がついた。
「それらが余分に得られたときは、こっそりどこか女たちが知らない場所に隠しておけばいいことを。余剰である。余剰は徐々に蓄積されていった。蓄積されるだけでなく、男たちの間で交換された。あるいは貸し借りされた。それを記録する方法が編み出された。時に、余剰は略奪され、蓄積をめぐって闘争が起きた。秩序を守るために男たちの間で取り決めがなされ、それが破られたときの罰則が定められた。余剰を支配するものが世界を支配するものとなるのに時間はそれほど必要ではなかった」。
女が男を運び屋として、あるいは使い走りとして命令に従わせるために、色んな方法を使ってきた。なだめすかしたり、泣いたりわめいたり、あるいはほめたたえたり。それは現在までも変わらない。
そしてもう一つ。生殖行為の際に得られる強烈な快感。そのために男は女に尽くすのだ。

ここで福岡博士は一つの問題を提起する。
「生殖活動が、なぜあの快感と結びついているのか」ほかの快感とは全く違うあの快感が、なぜ選び取られて今日に至っているのか、と。
そして博士は仮説を提示する。
あの快感はジェットコースターが落下するときの感覚と似ている。「蟻の門渡りあたりから始まり、そのまま尿道と輸精管を突き抜け、身体の中心線に沿ってまっすぐ急上昇してくる感覚」。
その時に人間が感じているのは加速度であり、それを人間のもつ五感(視覚、嗅覚、味覚、聴覚、触覚)にプラスして第六番目の知覚として「速覚・加速覚」と呼びたい。そしてこの加速覚が快感なのだ。
ではなぜ加速覚は快感なのか。
水の中に住む魚が水を認知できないように、生命を包み運ぶ媒体をその生命は認知することができない。
我々にとっての媒体とは何か、それは時間である。時間とは生命そのもののことである。しかし我々は時間の実在を知覚することはできない。
時間の存在を知るたった一つの行為は時間を追い越すことである。一瞬でも時間を追い越すことができた時私たちは時間の存在を知ることができる。
時間の風圧、それが加速覚である。それが生の実感となり、最上の快感となる。
「生殖行為と快感が結びついたのは進化の必然である。できそこないの生き物である男たちの唯一の生の報償として、射精感が加速覚と結合することが選ばれたのである」。

このところを読んで思い出したことがあります。
中学生の時、親戚の原付バイクを勝手に拝借して広場で初めて運転したときのこと。キーを回してエンジンをかける、その時点から心臓はバクバクし興奮が高まってくる。エンジンの振動が股間から脳まで伝わって顔が紅潮してくる。汗ばむ右手のアクセルをゆっくり手前に回すとバイクは徐々に前に進みだす。やがて加速して風を感じるようになる。その時私は快感のあまり射精してしまった。

今週はここまで。また来週お立ち寄りください。





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