まゆみの実
真弓、檀、まゆみなどという。
この実もやがて色づくのだろうか。調べてみて、真弓と比定するまでに時間が掛かった。
理由は、図鑑の絵柄の真弓の実の色は、熟れた赤色ばかりであったため。
材質が強い上によくしなる為、古来より弓の材料として知られ、名前の由来になった。
この木で作られた弓のことや、単なる弓の美称も真弓という。
古来の和紙の材料だが、楮にとって代わられた。現在では印鑑や櫛の材料。
”檀れい”という女優がいる。本名を”まゆみ”というらしい。女優になる時の芸名は、本名”まゆみ”を、木の真弓のこと、檀に置き換えたという。
こういう言葉遊びは、個人的には嫌いではない。
伊勢物語の原文
昔、男、片田舎に住みけり。
男、宮仕えしにとて、別れ惜しみて行きにけるままに、三年来ざりければ、待ちわびたりけるに、
いとねむごろに言ひける人に、「今宵あはむ」と契りたりけるに、この男来たりけり。
「この戸開け給へ」とたたきけれど、開けで、歌をなむよみて出だしたりける。
○あらたまの三年をまちわびてただ今宵こそ新枕すれ
と言ひ出だしたりければ、
○梓弓ま弓槻弓年を経てわがせしがごとうるはしみせよ
と言ひて、去なむとしければ、女、
○梓弓引けど引かねど昔より心は君によりにしものを
と言ひけれど、男、帰りにけり。
女、いとかなしくて、後に立ちて追ひ行けど、え追ひつかで、清水のある所に伏しにけり。
そこなりける岩に、指の血して書きつけける。
あひ思はで離(か)れぬる人をととどめかねわが身は今ぞ消え果てぬめる
と書きて、そこにいたづらになりにけり。
この伊勢物語は、よく試験に出たところ。
①「わがせしがごと」のせしの意味
②「え追ひつかで」の意味
③「いたづらになり」の意味
の三カ所が、繰り返し出題されていたのを思い出した。
*槻の木はケヤキの古名
梓弓ま弓槻弓は、何れも神事で使う。ま弓=真弓以外は、実際の弓には不適 。
現実の”弓”は竹を籤化して集積し、紐と漆で固めて一本として作る、という