わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

グランマ・モーゼス

2015-11-28 | Museumsとイベント
 ネットで、スパゲティーを茹でる前に数時間水につけておくと、モチモチの食感になって、しかも茹でる時間が削減されて節約という記事を読み、さっそく試してみました。結果はモチモチじゃなくてベタベタ。激マズです。仕方ないんで、アメリカの主婦の最終手段、キャセロールにしてしまいました。日本だと煮物の味付けに失敗したら、カレールー突っ込んでカレーですが、アメリカじゃ失敗作の上にチーズとキャンベル・スープ掛けてオーブンで焼くんである。ベトベトパスタをバターで炒めて、缶詰ツナを乗せ、チーズありったけぶっかけて焼くこと小一時間。美味しくもないけど、取り敢えず食べられるものにはなった。ツナとチーズは偉大。

 連休3日目は、またも雨。さすがに家でゴロゴロも飽きたので、毎度おなじみ、デイトン・アート・インスティテュートへ行きました。今回の目当ては、先週末から始まったグランマ・モーゼスの特別展。古き好きアメリカを独特のタッチで描いた作品は、日本でも人気ですよね。30年近く前に神戸の三宮で開かれたグランマ・モーゼスの展示会に言った時に買った目録、今も時折眺めます。今回の展示の面白いところは、有名な絵画作品だけではなく、その基盤を築いた刺繍作品や、絵のモチーフとなった元絵も展示されている事。刺繍作品は、どんなに公開鮮度の印刷でも、本当の質感は伝わらないものなので、貴重な展示です。

 ネットでは時折、マンガやイラストの「パクリ」が吊るしあげられていますが、モーゼスおばあちゃんは雑誌等で気に入った図柄をカーボン紙でキャンパスに写し取り、作品中でモチーフとして使っていたそうです。そのカーボン紙や、絵画中に見られる馬車等のオリジナルも隣りあわせて展示されており、とても興味深かったです。展示の説明で、たとえ、元々のモチーフは切り抜きから写し取った物とはいえ、それをどう配置し、自分の作品に取り入れるかは全く彼女のオリジナル、と、何度も説明されていましたが、そんなの見れば一目瞭然。

 確かに元絵のパターンは残すものの、独特のタッチは見紛えることなく彼女のもの。元々は、刺繍から始め、78歳でリューマチで針を持つのが難しくなったから、趣味の「手仕事」の方法が絵画へと変わったので、既存のパターンやモチーフを利用するのは、彼女にとって自然な流れだったのかもしれません。現代でも、雑誌等で得た元絵やパターンの刺繍は、ごく普通に使われている方法ですし、彼女に「パクリ」の概念はなかったでしょう。以前は、プロでさえ堂々とグラビア等のポーズやファッションを真似たイラストを発表していましたし、それらが、ごく普通に受け入れられていました。現在はデジタル技術が進み、トレースや加工が簡単にできるようになって、模写や模倣に対する風当たりが強くなり、「インスパイアされた」作品がパクリと批判されかねない傾向があるように思います。

 フランマ・モーゼスの作品群を見ていて、パクリとオリジナルの境界線はどこ?って、ちょっとだけ考えてしまいました。だって彼女の作品って、文句の付けようなく「オリジナル」だもの。彼女の描く「古き好き」アメリカは、全てが彼女が目で見たものではありません。雑誌で見付けた絵や写真を写しとって、自分の世界の中に取り入れました。

    
彼女の作品は「幸せ」を切り取ったよう

   
刺繍作品でも、繊細さではなく、むしろ大胆なタッチが感じられます


 この展示では、グランマ・モーゼスの刺繍、絵画作品だけではなく、彼女愛用のお手製のエプロンや小さなアトリエの複製も見られました。なんとなくなく、ちっちゃなおばあちゃんってイメージが合ったので、けっこう大柄なエプロンにはびっくりでしたが、彼女は農家のおかみさんですものね。他にもアメリカン・サンプラーという刺繍やキルトも、同時代の手仕事作品も。この展示会を回っている間中、ずっと私はニタニタしていたと思います。だって、見ているとなんだか幸せになっちゃうんだもの!

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