しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

ニューロマンサー ウィリアム・ギブソン著 黒丸 尚訳 ハヤカワ文庫

2013-09-06 | 海外SF
映画の感想が続きましたが、本の感想に戻ります。
本作読むのに結構苦労して、映画に走ったりしていました...。

本作、‘12年ローカス誌ランキング8位、’06年SFマガジンランキング16位と世の中で非常に評価の高い作品。
1984年7月出版、1984年のネピュラ賞、1985年のヒューゴー賞他各賞受賞の問答無用(?)の名作な作品です。

ですが....「私は多分苦手だろうなー」と思っていました。
保守的なのでどうもニューウェーブ的なものは苦手、かつかなり抽象的な描写なんなろうなぁと読む前から想像していました、ちなみに同様の理由で「純文学」は苦手です。
(ブラッドベリも苦手....)
いわゆる「高尚そう」な作品はどうも苦手。

ということでローカス誌ベスト10はこれを読めば「デューン」以外制覇となっていたんですが手に取る気がいまひとつ起きませんでした。
別に絶版でもなく入手しにくいわけでもないんですけどねぇ。

ただふっと入った錦糸町のブックオフで550円で(高い!、定価960円)売られていたものを発見しこれも運命だろうと入手して読み始めました。

内容(裏表紙記載)
ハイテクと汚濁の都、千葉シティの空の下、コンピューター・ネットワークの織りなす電脳空間を飛翔できた頃に思いを馳せ、ケイスは空虚な日々を送っていた。今のケイスはコンピューター・カウボーイの能力を奪われた飢えた狼。だがその能力再生を代償に、ヤバい仕事の話が舞い込んできた。依頼を受けたケイスは、電脳未来の暗黒面へと引き込まれていくが・・・・・・新鋭が華麗かつ電撃的文体を駆使して放つ衝撃のサイバーパンクSF

読んでの感想。
思った通りあまり得意ではない.....前半の文章2/3は理解できない。
「映像的な文章表現なんだろうなぁ」とは感じましたが「これは小説なのか?」「こんなのが名作なのか?」とストレスがたまり心の中で作品に悪態をつきながら読んでいきました。

と思いながらも、途中でネット上の評価を見たりもしましたが否定的な評価は殆どない...。
自分の読書力のなさにため息をつきました。

そんなこんな苦労して半分辺りで「物語も山場に来たかな?」となり、3/5辺り「第四部 迷光仕掛け」に進むと、一気に話が「具体的」に進み始めます。
(ここ以降も文章の1/2は理解できませんが....)
これまでの伏線を一気に解消しての急展開は見事としか言いようのない出来。

トラディショナルなストーリーや謎解きやらで楽しむ「SF」とは異なりますが、これはこれでまったく新しい世界。
確かに名作...と感じました。

読了してからわかりましたが、なかなか頭に入ってこない文章も仕掛けの一部なんでしょうね。
翻訳を読んでいても英語の母国民でもまず理解できないような単語が多い。
舞台が「千葉シティ」であったり、アイテムとして手裏剣が出てきたり、大きな権力を持っているる組織が「ザイバツ」だったりする。
「わからない!」というストレスをぎりぎりまで読者にかけて、最後で「おー」という感じで解決する展開は繰り返しになりますがすばらしいとしか言いようがない。
(こんな小説の翻訳は大変かと思いますがよく訳したものですねぇ)

ただ好みor得意な作品かというと正直「どうかなぁ」という感じではあります。
もう少しわかりやすい作品の方が好きです。

サイバーパンクの流れを作った作品の一つとされている「虎よ!虎よ!」もそのパワーはわかるのですがそれほど「好き」というわけでもない。

どうもキチンと説明されないと納得がいかないタイプなんだと思います。

あと読んでいて村上春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を思い浮かべました。
こちらも虚実ないまぜの中で主人公が奮闘するお話ですね。
(でも、こちらの方が読者には親切な作品で私的にはありでした。)
こちらは1985年の発刊ですのでマネたわけでもないんでしょうが時代なんでしょうかねぇ。

時代といえばAIとかネットワーク上の生命体的な発想は「死者の代弁者」(1986年)辺りでも出てきますしこれもはやりだったんでしょうか?

そんなこんな感じましたが、この「ニューロマンサー」のような作品まで出てくるSFというジャンルのポテンシャルの高さも改めて感じました。

その他感じたこと。

構成と各部の感想
「第一部 千葉市憂愁」
ハードボイルドっぽい展開で矢作俊彦を思い出しました(初期のハードボイルドもの)「矢作俊彦のマネ」というわけではないでしょうから、チャンドラー辺りをなぞったのでしょうか?

「第二部 買物遠征」
なにやら幻想的展開、ブラッドベリっぽい...かなぁ。
私はそれほどブラッドベリを理解していませんが、松岡正剛氏がギブソンを「ブラッドベリの再来」と評していたりするのであながち的外れではないのでは?
読んでいるときはなにがなんだかわからない文章なんですが、後々まで読むと伏線のかなりの部分がここに書かれていることがわかります(多分)が....なんとも難解。
読むのにかなり苦労しました。
この辺り正直読むのをやめようかと思ったりしました。

「第三部 真夜中のジュール・ヴェルヌ通り」
ここで具体的なミッションがやっと動き出すのですが、なんだか夢の中のような感じで全然進まない。
「どうなってしまうんだろう?」と思いながら最後に夢の終わり的出来事があり第四部へ。

頽廃的な感じは「虎よ!虎よ!」的かなぁ。

「第四部 迷光仕掛け」
前述しましたが一気に物事が進みだします。
ジェットコースターで下る感じです。
ここまで我慢して読んできたのが報われる...。
「感動」とかでなく、「スゲェ」という感じのなんだか不思議な感情になりました。

第一、 二第で撒かれたなんだかわからない伏線も解決されていきます。
作者は相当緻密な人なんだろうなーとも感じました。


「結尾 出発と到着」
なくても済むんでしょうが、あるとなんだか落ち着くエピローグ。
 
他SF的ギミックとしてはそれほど目新しいものではないとは思いました。
映画マトリックスとの関係や、タイトルについてなどは調べれば出てくるんでしょうから書きません。

ということでかなりの名作なんだとは感じましたが私の中ではうまく位置づけられていなーというのも正直な思いのところです。

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