しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

スポンサーから一言 フレドリック・ブラウン著 中村保男訳 創元推理文庫

2013-12-09 | 海外SF
漱石の後は、SFに戻ろうとフィリップ・K・ディックの「ユービック」を読みだしたのですが、途中で出張先に上着ごと忘れてきてしまいました。(戻ってはきた)

しかたがないので出張先のブックオフで450円で買った本書を手に取りました。
短編集なので途中で止められるというのも読みだした動機です。

前にも書きましたがブラウンのSF短編集は中学生の頃一通り読んだので実家に帰ればあるはずなのですが、ブックオフで見かけるとついつい買ってしまいます。

昔の版の方が表紙は凝っているんですが...まぁ贅沢はいえないですね。

この稿書きながらネットでいろいろ調べていたら、ディックはかなりブラウンを評価していたようですね(元ネタwiipedia)奇遇です。

内容(裏表紙記載)
SFショートショートを書かせては右に出る者のない、当代一の鬼才ブラウンの傑作集。彼が一言呪文を唱えるや、悪魔は地獄の門を開いて読者にウィンクし、宇宙船は未来の空を航行しはじめる。 この現代の魔術師の導きで、あなたも200万光年の彼方からやってきた宇宙人と冒険旅行を、そして悪魔と一緒に地獄のランデブーを!

1958年の発刊です。

とりあえずの感想「おもしろい」
一気に読んでしましました。

やはりブラウンは才人ですねぇ、古びない。
(すげぇ!とも思わないのですが)

暫くSF短編から遠のいていましたが、堪能できました。
「職人芸」というのか、とにかく楽しめます。
全編読んでいるはずなのですがショート・ショート以外は全然覚えていませんでした,,,.


各編簡単に紹介と感想など

○「ヴードゥーの魔術」
ショート・ショート、離婚話をしている妻は魔術を使い夫を…。

途中でオチが想像できちょっと興ざめではありました

○「歩哨」
ショート・ショート、外宇宙人の敵は実は...。

これもまぁありがちなオチです。

○「最初のタイムマシン」
ショート・ショート、最初のタイムマシンの完成を三人の友人が見つめていたが...。

広瀬正の「タイムマシンの作り方」で紹介されていて何回も読んでいて新鮮味はなかったです。
後に出てくる「実験」と同様、タイムパラドックスものの古典的ショート・ショートですね。
とてもスマートな作品だとは思いました。

○「あたりまえ」
ショート・ショート、幾何の苦手な学生が悪魔を呼び出したが...。

「まぁそういうこともあるよねぇ」という気はしましたがそれほど感心はしませんでした。

○「実験」
ショート・ショート、タイムマシン第一号での実験はどうなる?

上記「最初のタイムマシン」とほぼ同感想ですが、こちらの方が豪快なオチです。
「最初のタイムマシン」と併せて読むのがいいような気がします。

○「血」
ショート・ショート、タイムマシンに乗った吸血鬼族が遠い未来の地球では...。

まぁお遊びですね、

○「至福千年紀(ミレニアム)」
ショート・ショート、冥府でサタンの前に出た小男の願い事は...。

「だからどうしたの?」という感じではあります。

○「効きすぎ」
ショート・ショート、人狼ならぬ人鹿のウィルキンソンは動物園で...。

面白いとは思えませんでしたが、ブラウンらしいシャレた作品だとは思いました。

○「立ち入るな」
ちょっと長いショート・ショート、火星の環境に適応された人間の子どもたちは...。

前記の「歩哨」とテーマ的に似ているような気がします。
こういう視点の転換、ブラウンは結構好きなんでしょうね。

○「武器」
ちょっと長いショート・ショート、究極兵器開発者の息子に男が手渡したものは...。

啓蒙的すぎて少し重い気がします。

○「選ばれた男」
長いこと酔い続けていた男が重要な役割を果たすことに...。

酔っ払いものもブラウン結構好きなんでしょうね、「宇宙をぼくの手の上に」収載の「狂った星座」に出てくる博士もいい感じで酔っぱらっていましたし...。
酔っ払いもの×視点の転換 というパターン。
軽くてしゃれた仕上がりだと思いました。

○「ドーム」
三十年間ドームに入り続けた男が見たものは...。

これも視点の転換ですが、状況のひどさ具合がツボにはまりました。
軽妙でいい作品だと思いました。

○「鏡の間」
突然見知らぬ場所に出てきた男は実は...。

ある意味タイムマシンものなのですが「こう使うんだー」ととても感心しました。
ブラウンが「鬼才」と呼ばれるのもわかるような気のするアイディアのぶっ飛び具合です。

○「地獄の蜜月旅行」
突然全世界で男の子が生まれなくなり、原因調査のために月に男女を派遣...。

アシモフが書きそうなアイディアをハインライン的主人公が演じている感じですね。
発刊年からするとわざとまねて、パロディ化しているのかもしれませんね。
ブラウンはこの二人の両方の特質+軽やかさ+諧謔性を持っているような気がします。
冷戦時代を背景にしているのでメッセージは陳腐ですし、アイディアもまぁありがちですが主人公の性格設定と、場面の転換具合が絶妙です。
「うまいなー」と思いました。

○「最後の火星人」
「火星から来た」と言う男が酒場に現れ新聞記者が話を聞きに行き...。

ブラウンにはありがちなアイディアな気がしました。
「かくて神々は笑いき」と「鼠」も同系統かなぁ。
悪くはないのですがひねりが足りない気がしました。

○「鼠」
葉巻型宇宙船の中から出て来たのは鼠そっくりな動物の死体、実は...。

「最後の火星人」と同様ブラウンにありがちといえばありがちな気が。
長編「73光年の妖怪」につながるアイディアのようにも感じました。
もうちょっと長く書くと不気味な感じが良く出たかもしれません。

○「闘技場」
異星人との戦いのさなか気が付くと青いドームに一人...。

SFの名作として名高い作品です。
名短編の例としてよく紹介されているので私ごとき浅いSFファンでも残念ながら新鮮味を感じられませんでした...。
この作品の設定を使っていろいろ作品が書かれていたりするらしいです。
アイディアはともかく、徹底的にクールな描写が印象に残りました。

○「かくて神々は笑いき」
小惑星牽引船でのほら話は...。

ハイペリオン」の司教の話はこの作品が元ネタなんじゃないでしょうか。
SFホラーという感じですが、最初「コメディかな?」という感じですので、何とも不気味な感じを受けます。
前述の「最後の火星人」よりもかなり出来は上ですね。

○「スポンサーから一言」
全世界での1954年6月9日 午後8時半にラジオから一斉に流れ出した言葉は「戦え!」...。

ラジオと冷戦時代の状況が時代に合わなくなっているとは思いました。
またテーマ性が出過ぎていて浅くも感じました。

○「翼のざわめき」
迷信を信じない男はある賭けをするが。

幻想小説仕立てブラウンが「幻想小説も書けるんだぜ」という感じで書いたような印象を受けました。
「すごい」とは思いませんでしたが「うまい」の一言が出ました。

○「想像」
「詩」です。

最初の方のショート・ショートは正直「???」な気もしましたが、どの作品もなんだか「うまいなー」と感じさせます。

今回「鏡の間」「かくて神々は笑いき」の二編にとても感心しましたが、「ドーム」以降の作品はどれもなかなかの出来です。

SF短編の楽しさを感じられる作品集だと思います。

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