しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを カート・ヴォネガット・ジュニア著 浅倉久志訳 ハヤカワ文庫

2013-11-08 | 海外小説
SFを二作続けて読んだ後はマイブームとなっている、ヴォネガット作品を読みました。
本作近所の本屋で見つけられなかったので、amazonで新品をオーダーし入手。

本作は「猫のゆりかご」と「スローターハウス5」の間、1965年に発刊されています。
これで「タイタンの妖女」から「スローターハウス5」までのヴォネガット長編は一応制覇です。
(諸説あるでしょうが、ヴォネガットこの辺の作品が一番脂がのっていたという説が多いようですね。)
解説に書いていましたが、売れないSF作家であったヴォネガットも「猫のゆりかご」が出版後徐々に評価され、本作発表時に「文学」としてそれなりに評価されている状況だったようです。

内容(裏表紙記載)
聞きたまえ! 億万長者にして浮浪者、財団総裁にしてユートピア夢想家、慈善事業家にしてアル中である、エリオット・ローズウォーター氏の愚かしくも美しい魂の声を、暖かくも苦い愛のメッセージを。金がすべてを支配する現代社会で、隣人愛に憑かれた一人の大富豪が、その限りない愛と、限りある金とを恵まれぬ人々のために分け与えようとしたとき、いったい何が起こったのか・・・・・・? 現代最高の作家が贈る感動の名作。

とりあえずの感想.....、「う~ん、面白くない」(笑)

母なる夜」→「猫のゆりかご」と展開的に「面白い」小説を書く工夫をしてきたように思われるのですが、ここではその辺をあまり考えていない感じ。
物語性が薄いというか....。
この作品で初登場の売れないSF作家キルゴア・トラウト(この後のヴォネガット作品では度々登場する)や主人公エリオット・ローズウォーターの発する言葉もなんだか説教臭くて面白く感じられませんでした。

「小説」は色々な読み方があるのでしょうが、私のスタンスは古典的で「物語」というか「はなし」としての面白さがない作品は「評価しにくいかなぁ...」というものです。
(そんなに自信たっぷりではないですが)

「スローターハウス5」でも「つまらない」と書きましたが、「スローターハウス5」の方は「つまらなくていいんだよー」と開き直っている感じで、その暗い独特のトーンと雰因気が楽しめたのに対して、本作は中途半端に物語性も残していてなんだか読むのがつらいというか疲れるというか....。

私的には今一つの作品と感じました。

「母なる夜」「猫のゆりかご」では意志の強い女性が出てきて、「タイタンの妖女」「スローターハウス5」でもそれなりに強固な存在として女性が描かれています。
しかし本作のヒロイン、エリオットの妻シルヴィアは、エリオットの突飛な行動についていけず...といって否定もできない弱い人間として壊れてしまう存在として描かれています。
一方でエリオットは、盲目的目的意識を持ち慈善活動に精力的に取り組んでいく意志というか憑かれたように行動する男性となっています。
意志のはっきりしない男としゃっきり感のある女性というこれまでのパターンと本作は異なります。

その辺もうまくいっていないような...。

ラストも割り切って(文字通り)終わっていますしこの辺も傾向が他と異なります。

そういう意味では実験作だったのかもしれませんね。

まぁ今の私の気分と合わなかっただけかもしれませんが、これまで読んだヴォネガット作品とは違うトーンの作品と感じました。


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