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しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

行かずに死ねるか! 石田ゆうすけ著 幻冬舎文庫

2013-06-26 | ノンフィクション
SF濃度がかなり濃く、大作であるハイペリオン二部作を読んで毛色を変えてライトなものを読みたくなり本書を購入しました。
大森のブックオフで105円。

余談ですが大森のブックオフは私好みの文庫が多くてお気に入りスポットです。
この本の副題が「世界9万5000km自転車ひとり旅」
著者の石田ゆうすけ氏は先月図書館で借りたサイクル・スポーツ誌での連載で知っていて本書も先月から気になっていました。
いわゆる「旅」に憧れる気持ちは常にありますが、現状(妻子、職持ち、オヤジ)ではまず無理なのでこういう本で匂いだけでも嗅ぎたくなります。

内容(裏表紙)記載
「平穏な人生?それが運命なら自分で変えてやる!」そう決意してこぎだした自転車世界一周の道。だが、砂漠地帯で拳銃を持った強盗がー! 身ぐるみはがされた後も疾走し、出会いと別れを繰り返しながら駆け抜けた七年半の旅。笑えて泣ける、大興奮紀行エッセイ。単行本を大幅に加筆・訂正し、新たなエピソードも収録した文庫改訂版。

「ライトなもの」求めていましたが、通勤+αで月、火 二日 正味6時間で読んでしまいました。
(解説の椎名誠も6時間で読んだといっていました)

全体的印象、
「放浪の旅」の気分が十分味わえます。
私もむかしオートバイにテントを積んで旅をしていた時(マックス2週間ですが)「放浪」(気味)な人と出会っていろいろあったなぁなどという思い出に浸れました。
青春だなぁ。
ただ「旅」に焦点があたっているので「自転車」の話を求める人には物足りないかもしれません。

構成、文章がうまく安心して読めます。
各エピソードごと「ちょっといい話」的に仕上げています。
ただ...文章うまいといっても「ライター」的うまさで、「作家」的うまさではないような気もしました。
人によっては「なんだかなぁ」とか思う人もいそうです。

私の個人的感想ですが、この著者多分いい人で素直なんだろうなぁと感じました。
「作品」としての「すごみ」が出るためにはどこか「おかしい」感性がないと出ないような気がする。

冒険ものでは植村直己の書いたものが好きですが、この人はかなり「おかしい」人ではないかと思っています。
そのちょっと(すごく)ずれた感性で書いたものだからなんだか「すげぇ」と思えるのではないかという気がしました。

この本は普通に気持ちよく読む分にはうまい文章だと思いますし、多分植村直己よりうまいですが...「すげぇ」という文章ではない。
いやとにかく普通に読むにはおもしろいですし、「いい話だなぁ」と感じられます。

あと感じたことは、著者の旅していた90年代後半から2000年代初頭時点で実に多くの日本人が世界中放浪旅しているんだなぁということ。
日本の当時の(今でも?)経済状況であればある程度働いて貯金に努めれば放浪に必要な資金は貯められるんでしょうね。
で、私でも憧れるんですから「放浪の旅」に出たい人っていっぱいいるんだろうなー。
実際に行動に移すかどうかまではハードル高いと思いますが。

その辺も植村直己氏の60-80年代と違うところですね。

また「世界」も自転車で旅するくらいなら「冒険」というより「旅」の延長になっているんだなぁというのも肌で理解できました。
「インターネット」で連絡取ってうんぬんという記述もありましたし、時代は変わっているなぁ。
この辺この著者の「俺は大したことはしていない」という基本的に謙虚なスタンスでそう思う部分もあるのだとは思いますが...。
(この人いい人なくがする)

とにかくジャイアントのグレートジャーニーでも買ってテントツーリングに出たくなる...そんな本です。

でも...しばらく行か(け)ないなぁ、10年後体力あったら1週間くらいやってみたいところですが。

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駅伝がマラソンをダメにした 生島 淳著 光文社新書

2012-11-27 | ノンフィクション
ファウンデーションシリーズでぐっと疲れたので箸休め的に読みました。

2~3年前にブックオフで105円で売っていたものを購入。
一応走る人なので...。



内容(表紙おりこみ記載)
駅伝がマラソンをダメにしている。
これは陸上界では長く考えられてきた問題である。しかしあまり一般の人に触れられることはない。それはなぜか?答えは簡単である。新聞テレビといった報道機関が駅伝、マラソンを主催しているからだ。(略)
それでも私は駅伝を否定する気は毛頭ない。駅伝は極めて魅力的な競技だ。
なかでも箱根駅伝に関してはこの機会に自分なりにその魅力を徹底的に考えてみるつもりだ。加えて、テレビが駅伝をいかに変化させたかを、各大学の特色を通して考えてみたいと思う。
(「はじめに」より)

タイトルでとりあえずつかむという新書で一時はやった手法で作られている本です。
(2005年発行)

要は箱根駅伝を1987年から日テレで完全中継を初めて、大学間の競争が熾烈になり選手がけがしたり、燃え尽きたりして問題では?というお話。

なんとなく陸上の専門家が書いているのかなぁと思って読み出したのですが、一ファンというスタンスで書かれています。

箱根のデータやらコーチの履歴やらは調べていますが、コーチや選手に直接取材しているわけではないので食い足りなさはありますし、正直「安直だなぁ」という印象。

各大学の特徴等書かれていますが2005年からずいぶん事情も変わっているので今日的価値はないですね~。
(早稲田はだいぶ強くなっていたりする)

コーチの人物像についてはさわりだけですが魅力的なので機会があればなにか関連するものを読んでみたいです。

駒沢大 大八木 弘明氏、神奈川大 大後 栄治氏とか(「夢は箱根を駆けめぐる」という本があるとのこと)、山梨大 上田 誠仁氏とか。

まぁ軽く読むにはいいですが取ってはおかないだろう本ですね~

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北極点グリーンランド単独行 植村 直己 文春文庫

2012-10-25 | ノンフィクション
前作「北極圏1万2千キロ」に続き文春文庫の植村直己氏の作品
「北極点グリーンランド単独行」

この本もamazonで2006年8月に古本を買っています。
(記録が残っていた)

ここのところ続けて読んでいた文春文庫の植村直己氏の著作の最後の一冊です。

北極圏1万2千キロの旅の2年後、犬橇での単独行、北極点挑戦後グリーンランド縦断の記録です。

前回の「北極圏1万2千キロ」の旅との違いは、電通やら何やら大資本がバックについて厚いサポート体制の元でのチャレンジということ。

食糧やら何やら必要なものは飛行機で補給を受け、犬も途中交代あり、NASAのサポートで位置情報も確認してもらえるという体制での挑戦。
なんだか「非現実的な」旅であった前回の旅に比べぐっと20世紀チックかつ21世紀も見えてくるような体制です。

そのおかげもあり、前回数えきれないほどのアザラシやらカリブーやらが食糧、犬の餌、として狩られ、犬もたくさん死んでいきましたが、今回死んだのは白熊2頭と犬1匹とずいぶん進歩(?)しています。

相当楽になっていると思うのですが、読んでいるとサポートが厚くなっていろんな人を巻き込んでいる分、植村氏がかなりのプレッシャーを感じているのが伝わってきます。
特に北極点チャレンジでは、ほとんど同時期にチャレンジしている日大隊との競争になっていて読んでいて痛々しいほどです。
「何が何でも」というようなかなり危ない言葉も出ており、そのプレッシャーからかなり危ないことをしていたりしています。

グリーンランド縦断の方ではかなりリラックスしている感じが見受けられる文章になっていますが、最初の氷河を登っていくところ以外の氷床縦断以外はそれほど難所もなく、本人もちょっと拍子抜けだったのかも??というような感じも受けました。

そうはいっても北極点近くで、氷がダイナミックに動く場面やら、グリーンランド内陸部の氷が標高3000m以上の高さにまでなっているということなどはなんだか想像を絶する情景で面白く読めました。

植村氏の冒険はこのグリーンランド縦断後、南極にもなかなかチャレンジできず、冬季エベレスト登頂失敗等暗転していくわけですがその分岐点にある記録かと思うとそれもまた感慨深く感じました。

でも、私的には「極北に駆ける」「北極圏1万2千キロ」の方が生々しい感じで好きですね~。

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北極圏一万二千キロ 植村 直己 著 文春文庫

2012-10-19 | ノンフィクション
「エベレストを越えて」「極北に駆ける」を読んで、に続きでこの本を読みました。
これもネットで2006年8月に古本を入手し読まずにそのままになっていたもの。
(amazonで見たら注文履歴が残っていたので正確な年月わかりました。ネット社会すごい)


「北極圏一万二千キロ」は、前作「極北に駆ける」でグリーンランドでエスキモモー文化の吸収と、犬橇技術を習得した著者が、その2年後に挑戦したグリーンランド→カナダ→アラスカ 12,000kmの犬橇での単独行1年半(1974年12月~76年5月)の記録です。

章立ては
 ・第一章 氷の王国グリーンランドに挑む
 ・第二章 カナダ北部の無人地帯を往く
 ・第三章 厳冬のツンドラに闘う
 ・第四章 最後の旅-アラスカへ
となっており、日記調で日を追って書かれています。

読みながらまず思ったことは、「すごい危ない...」書中でもグリーンランドエスキモーの老人が「エスキモーは絶対単独での犬橇長距離行はしない」と言っていましたが命がいくつあっても足りない感じで旅が進んで行きます。

30度を越える斜面を犬橇で越え、下っていく最中に犬ぞりが横転して下敷きになったり、無人の氷の上で海氷が割れ橇が落ちそうになったり白熊に襲われそうになったりと危ないことこの上ない...。

食糧やら資材も資金不足でいつも不足してぎりぎり.

エスキモーならこんなことはやらないし、欧米人ならもっと資金やら準備やらちゃんとしていくんだろうなぁと思います。
そういう意味では日本人ならではの冒険かつ、こんなことをやるのは植村氏くらいだろうなぁ。
すごい人だと思いました。
現在では北極海の氷も少なくなっているし、エスキモーももっと近代化して犬橇用の犬を調達するのも無理だろうしもう二度と同じことはできないという冒険行でしょう。

前作「極北に駆ける」でも感じましたが、なにやら地球上の出来事という感じがせずファンタジーでも読んでいる感じがしました。

この本では最初から最後まで、そんな危ない旅を誰のためでも何のためでもなく「やりたい」というだけの思いで、延々続けられていきます。
その中で橇を曳く犬は過酷なまでに酷使され、時には病死、過労死、殺されたり、(死体を共食いしたり...)氷原におきざりにされたりします。
その犬のエサとしてアザラシやらクジラやら白熊やらカリブーやら現在では「殺すのちょっとまずいんじゃない?」という動物がどんどん刈られていき毛皮が取られていきます。
犬好きや動物愛護推進論者、自然保護論者が読んだら卒倒しそうな内容です。
なんだかこの本が絶版となったままなのも分かるような気がします。

やたらエサを食べる犬橇よりガソリンで動くスノーモービルの方が環境負荷低いんだろうなぁというのが理屈でなく入ってきます。
世界中エスキモーだったら動物全部絶滅するだろうなぁ、西洋文明ってすごいです。
(西洋文明を入れたライフルでエスキモーの刈りの能率が飛躍的に上がっているというのもありますが....)

そんな冒険をあくまで日本人的メンタルで続ける植村氏....なんだか物凄いものを感じます。

日本人的メンタルについてですが、犬の扱いに端的に感じました。

犬はあくまで道具であり、食糧であり使えなくなったら迷わず殺して食べるエスキモー。
愛玩動物、犬橇というスポーツの道具として考えており、惜しみなくエサを与えるが、ケガや病気で苦しんでいたら置き去りにするよりも自ら殺してしまう欧米人。(犬はあくまで犬でしかない)

犬を擬人化してパートナーと考えていながらも、物凄く酷使し、お金がないからエサも十分に与えず、弱ったら自らトドメをさせず置き去りにして、状況次第ではいやいやながらも殺してしまったりもする植村氏。

う~ん日本人的にはよくわかるメンタルです。

この物凄い旅の終わりをどうまとめて終わるのかなぁと思っていましたが。

ラストの展開・文章よかった....。
陳腐といえば陳腐ですがこの冒険行を結ぶにはふさわしい文章だと思いました。
このラストで私の中での評価は5割増しでした。

「極北に駆ける」とこの「北極圏一万二千キロ」2冊はセットで読まれるべきものですね。
長編物語として読んでも、ぐっと来るのではないかと思います。

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極北に駆ける 植村 直己著 文春文庫

2012-10-14 | ノンフィクション
「エベレストを越えて」に続き、文春文庫の植村氏の著作です。

入手は200?年頃ネットで古本を購入しました。

この「極北に駆ける」はエベレスト国際隊の後1972年9月~73年6月までのグリーンランドのエスキモーでの暮らし及び犬橇での3000km単独行くを綴ったものです。

時系列的には70年のエベレスト日本隊、71年の国際隊の方が古いわけですが、この「極北に駆ける」の方が書かれたのは早いためか、文章は「エベレストを越えて」より若々しく、「エベレストを越えて」ではどこか達観した感じを受けましたが、この作品では野心にあふれた「青春」真っ盛りな印象を受けました。

植村氏関係の本はいろいろ読んでいたので、グリーンランドでの話も断片的には読んでおりダイジェスト的に知っている気になっていましたが、まとめて本人の書いたものを読むとやはり迫ってくるものが違います。

シオラバルクのエスキモーの人たちの生活描写は生々しく感じられましたし、交流の話もなんだか心にしみいりました。

犬橇3000kmの旅はこの人らしいどこか自分を突き放したところから書いていますが、その分大変さが伝わりました。
淡々と書いていますが、一つ間違えば命が危ない...、「冒険」ですね。

グリーンランドの自然環境も温暖化の影響などで変わっているでしょうし、エスキモーの暮らしもこの本に書かれたような昔ながらのエスキモーの暮らしをしている人は果たしてまだいるのだろうか?
犬を食べてしまう話や、白熊を撃つ話なども今の世の中では通らないだろうな...。

そんなことを考えたらなんだか別の世界のおとぎ話を読んだ気にもなりました。

「人間の暮らしって...」などということを考えさせられる本です。

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