しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

北極圏一万二千キロ 植村 直己 著 文春文庫

2012-10-19 | ノンフィクション
「エベレストを越えて」「極北に駆ける」を読んで、に続きでこの本を読みました。
これもネットで2006年8月に古本を入手し読まずにそのままになっていたもの。
(amazonで見たら注文履歴が残っていたので正確な年月わかりました。ネット社会すごい)


「北極圏一万二千キロ」は、前作「極北に駆ける」でグリーンランドでエスキモモー文化の吸収と、犬橇技術を習得した著者が、その2年後に挑戦したグリーンランド→カナダ→アラスカ 12,000kmの犬橇での単独行1年半(1974年12月~76年5月)の記録です。

章立ては
 ・第一章 氷の王国グリーンランドに挑む
 ・第二章 カナダ北部の無人地帯を往く
 ・第三章 厳冬のツンドラに闘う
 ・第四章 最後の旅-アラスカへ
となっており、日記調で日を追って書かれています。

読みながらまず思ったことは、「すごい危ない...」書中でもグリーンランドエスキモーの老人が「エスキモーは絶対単独での犬橇長距離行はしない」と言っていましたが命がいくつあっても足りない感じで旅が進んで行きます。

30度を越える斜面を犬橇で越え、下っていく最中に犬ぞりが横転して下敷きになったり、無人の氷の上で海氷が割れ橇が落ちそうになったり白熊に襲われそうになったりと危ないことこの上ない...。

食糧やら資材も資金不足でいつも不足してぎりぎり.

エスキモーならこんなことはやらないし、欧米人ならもっと資金やら準備やらちゃんとしていくんだろうなぁと思います。
そういう意味では日本人ならではの冒険かつ、こんなことをやるのは植村氏くらいだろうなぁ。
すごい人だと思いました。
現在では北極海の氷も少なくなっているし、エスキモーももっと近代化して犬橇用の犬を調達するのも無理だろうしもう二度と同じことはできないという冒険行でしょう。

前作「極北に駆ける」でも感じましたが、なにやら地球上の出来事という感じがせずファンタジーでも読んでいる感じがしました。

この本では最初から最後まで、そんな危ない旅を誰のためでも何のためでもなく「やりたい」というだけの思いで、延々続けられていきます。
その中で橇を曳く犬は過酷なまでに酷使され、時には病死、過労死、殺されたり、(死体を共食いしたり...)氷原におきざりにされたりします。
その犬のエサとしてアザラシやらクジラやら白熊やらカリブーやら現在では「殺すのちょっとまずいんじゃない?」という動物がどんどん刈られていき毛皮が取られていきます。
犬好きや動物愛護推進論者、自然保護論者が読んだら卒倒しそうな内容です。
なんだかこの本が絶版となったままなのも分かるような気がします。

やたらエサを食べる犬橇よりガソリンで動くスノーモービルの方が環境負荷低いんだろうなぁというのが理屈でなく入ってきます。
世界中エスキモーだったら動物全部絶滅するだろうなぁ、西洋文明ってすごいです。
(西洋文明を入れたライフルでエスキモーの刈りの能率が飛躍的に上がっているというのもありますが....)

そんな冒険をあくまで日本人的メンタルで続ける植村氏....なんだか物凄いものを感じます。

日本人的メンタルについてですが、犬の扱いに端的に感じました。

犬はあくまで道具であり、食糧であり使えなくなったら迷わず殺して食べるエスキモー。
愛玩動物、犬橇というスポーツの道具として考えており、惜しみなくエサを与えるが、ケガや病気で苦しんでいたら置き去りにするよりも自ら殺してしまう欧米人。(犬はあくまで犬でしかない)

犬を擬人化してパートナーと考えていながらも、物凄く酷使し、お金がないからエサも十分に与えず、弱ったら自らトドメをさせず置き去りにして、状況次第ではいやいやながらも殺してしまったりもする植村氏。

う~ん日本人的にはよくわかるメンタルです。

この物凄い旅の終わりをどうまとめて終わるのかなぁと思っていましたが。

ラストの展開・文章よかった....。
陳腐といえば陳腐ですがこの冒険行を結ぶにはふさわしい文章だと思いました。
このラストで私の中での評価は5割増しでした。

「極北に駆ける」とこの「北極圏一万二千キロ」2冊はセットで読まれるべきものですね。
長編物語として読んでも、ぐっと来るのではないかと思います。

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