数日前、小学6年生にパレスチナ問題を聞かれましたので、中学校の教科書(歴史と公民)で学びました。
上が「公民」 下が「歴史」 一般的に多く使用されている(わたしの学区も)東京書籍の現行教科書です。
いわゆるイギリスの三枚舌外交が、いまのパレスチナ問題の発端であると説明されています(「公民」)
また、仲介役のアメリカが、国内のユダヤ人やキリスト教原理主義の影響からイスラエル寄りの立場をとりがちであるという問題点も指摘されています(「歴史」)
三大宗教の聖地であるエルサレムについても囲み記事で説明されています(「公民」)
三大宗教と呼ばれるのは、ユダヤ教と、ユダヤ教内の宗教改革であるキリスト教と、そのキリスト教と兄弟関係にあるイスラム教ですが、みな【一人の神が世界をつくったとする一神教】です。
キリスト教とイスラム教は、ユダヤ教という親をもつ兄弟宗教ですが、十字軍の遠征で知られるように骨肉の争いをしてきました。
(※イスラム教の聖典である「コーラン」は、多くが「旧約聖書」(ユダヤ教)から取られています)
この三大宗教の【一神教】という思想は、人類の歴史でいえば後から生まれたもので、主流ではありません。人類文化の金字塔は古代ギリシアのアテネが生んだフィロソフィ(恋知=哲学)・芸術と直接民主制(自立した市民による共同体)ですが、宗教=神とはギリシア神話でおなじみの「多神教」でした。わたしたち日本人になじみ深いインドの釈迦による仏教は、このギリシア文化と親近性をもっていて、三大宗教とは大きく異なる思想です。
歴史的、思想的事実の大枠を知ると、わたしたち日本人がパレスチナ問題で英米と同じ側に立つのは、深く無謀なことが分かります。
※安倍首相の世界に逆行するイスラエル外交についての解説記事(「東京新聞」)もご覧ください。
武田康弘
泥 憲和
安倍さんは歪曲された歴史を信じており、歴史修正主義を後押ししています。
歴史修正主義が定着すると、恐ろしいことになります。
その典型的な恐ろしい先例が、ユダヤ人差別です。
ご存知でしょうか、以下はどちらも真っ赤なウソ、デタラメです。
●アラブとイスラエルの戦いは聖書時代にさかのぼる根の深い対立だ。
●ユダヤ人は2000年前に故郷を追放されて以来、故地に帰るのを夢見ていた。
敵も味方も第三者もマンガのようなデタラメに振り回され、その結果数え切れない悲劇が起きているのです。
✖アラブとイスラエルの戦いは聖書時代にさかのぼる根の深い対立だ。
〇聖書のパレスチナ人は現代パレスチナ人ではない
パレスチナ人は旧約聖書にペリシテ人として登場しており、ユダヤ民族と対立・抗争を繰り返していたと言います。
旧約聖書によれば、有名なサムソンが捕らえられたのはパレスチナの「ガザ」の町でした。
ユダ王国のヒゼキア王が「ガザ」を攻め落としたという記述もあります。
しかしイスラエル人とパレスチナ人が古代から戦争していたというのはデタラメです。
聖書に出てくるペリシテ人がパレスチナ人だというのは間違いなんです。
アラブ系の現代パレスチナ人は、聖書時代にパレスチナに住んでいませんでした。
今日の研究では、ここらあたりはつぎのようになっています。
すなわち聖書のペリシテ人とはギリシャ系民族であり、ミケーネ文明が衰退してからパレスチナに移住したもので、その後土着のカナン人に同化し、民族としては消滅しました。
カナン人とは後のフェニキア人のことです。
◇現代ユダヤ人は古代ユダヤ人を殺している
古代イスラエルが滅亡すると、彼らのほとんどはすぐに周辺アラブ世界に同化してしまい、後にイスラムに改宗しました。
一部に同化しなかった人もいて自治政府を組織していましたが、周辺のアラブと文化的な一体化が進んでおり、アラブ人と共存していました。
(ナザレのイエスもヘブル語ではなくアラブ人の使うアラム語を話しています。)
最終的に自治政府はローマに滅ぼされ、アラブとの一体化がまます進みました。
ですから強いて言うなら、いまイスラエル政府が弾圧しているアラブ人こそが、聖書時代のユダヤの民の遺伝子を受け継いでいるのです。
✖ユダヤ人は2000年前に故郷を追放されて以来、故地に帰るのを夢見ていた。
〇古代ユダヤ人と現代アシュケナージ・ユダヤ人は無関係
ローマ時代に迫害をこうむって本国から出て行った人たちは、今日のスファラディ・ユダヤ人だと言われています。
スファラディ・ユダヤ人は現代イスラエル国家の少数派で、労働者階級です。
今日イスラエルを支配している多数派はアシュケナージ・ユダヤです。
じつはアシュケナージは古代イスラエルとまったく無関係なのです。
彼らはハザール民族であり、血縁的に聖書時代のユダヤ人と何の関係もありません。
ハザールは今から1500年以上前から黒海の北にいた民族です。
これは後で説明します。
ともかくユダヤとアラブの長い対立というのは、シオニストが戦争し支配するために聖書を利用してでっち上げた幻で、聖書に登場する民族は今日ではすっかり入れ替わっているのです。
〇陰謀論に気をつけよう
アラブとイスラエルの対立は、初めから終わりまでウソとデタラメ、歴史的誤謬に彩られ、煽られているのです。
こういうデタラメがまことしやかに通用している原因は何でしょう。
私は不信感だと思います。
よそ者嫌い、外国人嫌いは世界共通の現象です。
わけのわからない奴らだ、何を考えているかわかったものではないという恐怖感が、根拠のない言説に説得力を与えるのです。
フリーメーソン、イルミナティ、ロスチャイルドなどの世界征服系陰謀論。
アポロ月着陸でっち上げ論、宇宙人誘拐説などの妄想系陰謀論。
陰謀論は左右を問わず、たくさんあります。
これは他人事ではありません。
よそ者嫌いは私たちの根底に強く巣くっていますから、なかなか克服が困難です。
しかしそれを克服しないと世界はいつまでたっても平和になりません。
世界の動きが複雑でよくわからないとき、陰謀論は便利です。
一度陰謀論を受け入れる下地ができてしまうと、ある事件は、じつは裏でこんな 陰謀があったんだと説明されるとすごくわかりやすくなり、証拠は何もないけど話のつじつまがあっているように見えるので信じてしまうのです。
客観的に、冷静にものごとを見る態度をいつでも養いたいものだと思います。
◇なぜハザール人がユダヤ人になったのか
ハザール人はもともとフン族(匈奴)の支配下にあり、戦いに堪能な「戦士民族」とされていました。
その後はコーカサス北諸族最強の民族として西トルコ帝国(西突厥)に服し、帝国最強の実戦部隊として活躍しました。
西トルコ帝国が滅ぶとハザール人は自らを「西突厥」の継承者と名乗り、ハザール汗国を建てます。
ハザール汗国はハザール王国ともいいます。
その支配地域は黒海北部にあり、今日の東ヨーロッパ全土に影響を及ぼしていました。
9世紀はじめ、キリスト教ビザンチン帝国とイスラム教アラブ諸国の圧迫を受けたハザール王オバデアは対抗的にユダヤ教に改宗しました。
そのいきさつは分かりませんが、キリスト教に近づくとイスラムから攻撃されるし、かといってイスラム教に近づくとキリスト教から攻撃されるので、どちらでもない立場に立つしかなかったのではないでしょうか。
また、アブラハムの神はキリスト教とイスラム教がともに崇める神ですから、二つの上位に位置する宗教だと考えたのかも知れません。
ともかくこれ以後、かれらは自らをジューイッシュ(ユダヤ教徒)と称しはじめます。
ジューイッシュには、同時にユダヤ人という意味もあります。
ハザール汗国は後にキプチャク汗国に滅ぼされます。13世紀のことです。
その後、ハザール人の記録は歴史から消え去り、彼らが勢力を張っていた地域でジューイッシュ迫害が始まるのです。
つまり今日ユダヤ人(ジューイッシュ)と言われている人々は、滅亡したハザール王国の難民だったのです。
誇り高い戦闘民族として周辺民族に過酷な支配を敷いていたので、その反発から迫害を受け始めたのでしょう。
ジューイッシュ(ユダヤ教徒)に対する迫害が、いつしかジューイッシュ(ユダヤ人)に対する迫害と同一視され、ハザール人自身もいつの間にか自分をユダヤ人だと考えるようになっていったのです。
素晴らしい泥さんのコメント、ぜひ、精読してください。