拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

『セカンドモーニング』/モーニング娘。

2008-02-23 21:58:40 | アルバムレビュー
『セカンドモーニング』/モーニング娘。


1. NIGHT OF TOKYO CITY ★★☆
下品でイケイケなシンセと素っ頓狂なラップで幕開け。一人暮らしで孤独を感じる若い娘の心情を託したリアルなライムが笑いを誘う。アイドル版シャ乱Qとでも形容したくなる、切なく濡れた一曲。

2. 真夏の光線(Vacation Mix) ★★★★★
終始グルーヴィーにランニングする、躍動感溢れるベースラインと、フィリーソウル調の爽やかなホーンとシンセ、そして「LOVEマシーン」で大フィーチャーされていた「フッフゥー」という軽薄なコーラスの絡み合いが絶妙な傑作サマーチューン。後半のブレイク部分以降のベースラインは冷や汗モノの名演。それぞれ声質の違う7人のボーカルがテンポよくスムーズに切り替わっており、「LOVEマシーン」とはまた別のベクトルで、大人数グループの強みを示した。真心ブラザーズの名曲「エンドレスサマーヌード」と併せて聴くと面白いかもしれない。

3. Memory 青春の光 ★★★
メンバーが沢山居たわりにはコーラスワークが大したことなかった全盛期とは逆で、ほぼ全編にわたってハモリのパートが組み込まれている、R&B風のマイナー歌謡。ぎこちなくハモりあうサビを聴いてると、実力派コーラスグループではなく、アイドルグループによるR&Bを聴く醍醐味みたいなものを味わえる。当時つんくはR&Bにハマっており、モー娘にもそういう路線の曲を沢山歌わせようとしていたが、宇多田ヒカルが出てきた瞬間「この子にはかなわない」と思ってやめさせた、というのを少年マガジンの「モーニング娘物語」で読んだ記憶がある。

4. 好きで×5(かけるファイヴ) ★★★☆
恋に思い悩む心情を綴った歌詞にジャズアレンジが上手くハマったミディアム曲。これもモー娘ならではの「ぎこちなくもそこそこ綺麗なコーラス」が楽しめる。ジャズアレンジで、じっと耳を傾けると結構良い音が聞こえてくるのだが(主張しすぎないベース、ムーディーなビブラフォーンなど)、歌に重きが置かれているので平凡なスピーカーだとよく聞こえない。

5. ふるさと ★★★
浪花節の泣きのメロディーにクールで少々オリエンタルな落ち着いたアレンジを施しアイドル仕様に作り上げたバラード。シャ乱Qでこれをやられたらきっと暑苦しくなりそうだが、大人数を生かしたコーラスが武器のアイドルグループが歌うと切ない名曲に仕上がる。歌詞は人によっては涙腺直撃必死。

6. 抱いてHOLD ON ME!(N.Y.Mix) ★★★
水商売っぽい、キャバクラっぽさ満点の突き抜けたダンスチューン。シンセヒットやら歌詞やらがとにかく下世話な曲だが、バスドラも効いてるし踊るには最適。クライマックスの「ハァーーーーーーン」という困ったコーラスも最高だ。

7. パパに似ている彼 ★★★☆
フルートメインのフィリー調のアレンジに、バリバリのアイドル歌謡曲メロディーが乗った、爽やかで優雅でまろやかな曲。4曲目とメロディーラインが微妙に似ている。流れるような演奏と瑞々しくも甘酸っぱいコーラスが上手に混ざり合う。主旋律を殆ど歌わず、ひたすら高音パートを担当してハモり続ける矢口の何気ない健闘が光る。

8. せんこう花火 ★
安倍なつみがメインボーカルをとった曲。ソツがなくクセも無いプレーンな歌唱を披露。ピッチが危うい箇所もあるが、その危うさが人気の秘密なのだろうか。

9. 恋の始発列車★★★★
ロマンチックなメロディーと「この幸せがずっと続くかはわからないけど、とりあえず前向きに」というような、切なくも明るい歌詞。絶妙なタイミングで入れ替わったり重なったりする7人のボーカルが良い。曲が進むにつれて多幸感を増していき、クライマックスの全員でのユニゾン部分で最高潮に。澄んだ高音でハモる矢口と、安定感のある低音の保田でメインボーカルたちを支える。

10. 乙女の心理学 ★★★★☆
保田・市井をメインに据えた曲。この二人に後藤真希を加えたユニット・プッチモニの曲のような、クセのある弾けたポップチューン。隙間に妙なセリフがちょこちょこと挟まっていたりする点が「LOVEマシーン」以降のモーニング娘の音楽性の布石になっているような気がする。低音が効いていて、知らず知らずのうちに体が動いてしまう。

11. Never Forget(Large Vocal Mix) ★☆
卒業したメンバーがメインボーカルをとり、他のメンバーがみんなでコーラスを担当する、友情を感じさせる一曲。モー娘自体に深い思い入れのあるファンにはメモリアルな一曲だが、そうでなければZARD風の卒業ソングにしか聴こえない。

12. ダディドゥデドダディ! ★★★
全員でユニゾンで合唱。アルバムのしめくくりにふさわしい曲。何度も繰り返される「一回きりの青春 Oh Yeah!」というフレーズが実に切ない。「モーニング娘でこんな名盤が作れるのは一回きり、これで最後ですよ」みたいな。「一度黄金期が過ぎたら、もう二度と戻らないですよ」みたいな。

総評★★★★
「LOVEマシーン」リリース以前、トップアイドルにのし上がる以前にリリースされた、ハロプロ史、いや、アイドルポップス史に残るかもしれないモー娘最初で最後(?)の傑作。このアルバムのリリース後に訪れたモー娘全盛期の、「好きな人が優しかった 嬉しい出来事が増えました」というフレーズを4分割して交代で歌わせるような、パズルのピースの組み合わせのようなせわしないボーカルスイッチングではなく、各メンバーにまとまったフレーズを歌わせ、少しずつ楽曲のテンションを上げていくスタイルが懐かしい。どの曲からもつんく及びアレンジャー陣営の丁寧な仕事ぶりが伝わってきて、それこそ「大人数アイドルグループのアルバムの最高峰を極めよう」ぐらいの気合いを感じる。
シャ乱Qのボーカリスト/ソングライターだったつんくが作る曲は当然ベタベタの歌謡曲テイスト。そんな楽曲群にアレンジを施し、彼女たちのボーカルを乗せると、キラキラのポップスに生まれ変わる。下世話さや可愛らしさなど、モー娘の魅力を多角的に引き出す前嶋康明(1.3.6.7)、極上のサウンドと遊び心で魅せる河野伸(2.10)、生音主体で聴かせる鈴木俊介(4.12)、若きアイドル最大の武器である爽やかさを押し出す小西貴雄(5.9.11)など、各アレンジャーの仕事はどれも魅力的。彼らの名前を頼りにハロプロの楽曲を漁るのも面白い。





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