つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

闇の六法おそるべし

2006-12-19 23:45:16 | マンガ(少年漫画)
さて、まだまだ沢山紹介してない人がいるなぁ……と思う第749回は、

タイトル:ジャッジ(1)(2)
著者:細野不二彦
出版社:双葉社 双葉文庫(初版:H12)

であります。

昔だと『GUGUガンモ』、今だと『ギャラリーフェイク』な細野不二彦が描くオカルト・バイオレンス物。
初出は1987年で、ちょうど作者が少年誌から青年誌へと活躍の場を移す時期にあたり、掲載誌がアクションBROTHERだったこともあって、かなりアダルト色の濃い作品となっています。



万年平社員の逢魔法一郎……彼には裏の顔があった。
人皮でできた『闇の六法全書』を手に、表の法で裁けぬ悪を断罪する『闇の司法官』の顔である。
今宵もまた、闇の六法の表紙に浮かんだ死者の顔が恨みを叫び、鸚鵡が被告に罪状と裁きを言い渡し、法一郎が刑を執行する!

闇の司法官とは、裁判官であると同時に検事であり、罪人どもはその手から逃れられない。
だが、何事にも表裏があるように、司法官の裁きを妨害する者もまた存在する。
人肌でできた手袋を持ち、金で雇われて罪人を守る者達……彼らは闇の弁護士と呼ばれる!

裁く者と守る者、立場は違えど、彼らはどちらも死者と接する霊能者だった。
しかしこの世には、霊とは無関係な力を我が者顔で振るう者も存在する。
強大な力を誇る敵に、法一郎の裁きの手は届くのか――?



それなりにスプラッタな作品です。

血、臓物、化け物の類が苦手な方はパスした方が無難でしょう。

ストーリー的には、霊能力を使った必殺仕事人といったところ。
ろくでもない死に方をした被害者の代理人・逢魔法一郎が、加害者をもっと酷い方法で仕置きする、というのが一応のパターン。
ただし、これだけだとマンネリに陥るので、色々とパターン破りの試みはしてます。

秀逸だったのは、途中から出てくる商売敵――闇の弁護士・四文裕神との対立構造。
よくあるライバル関係と言ってしまえばそうなのですが、法一郎と四文の対立はそのまま相反する正義の対立をも象徴しており、単なる個人的闘争とは違った趣きがありました。
どちらかと言うと杓子定規な法一郎に対し、闇の司法官の真似事もやれるだけの柔軟さを持った四文、といった性格の違いも上手く描かれており、両者の対決は常に名場面と言っても過言ではありません。

他にも、被害者の死に方&被告の処刑方法を毎回変えるのは当然として、表の職業である検事や刑事との絡み、法一郎以外の闇の司法官や霊能師との対決、処刑以外の裁き等々、マンネリ破りの工夫を挙げてみると結構あります。
ただ同時に、闇の司法官の職業的制約がイマイチ不鮮明(というか固まってないだけ?)だったり、弁護士は司法官のことを良く知ってるのに司法官は弁護士のことを噂でしか知らなかったり、といった設定の甘さも見えました。
不定期連載の実験作だから、仕方ないと言えば仕方ないかも知れませんが……。(苦笑)

ちょっと粗い部分はあるものの、なかなか好きな作品です。
単なる勧善懲悪ではない、一風変わった始末屋物語をお楽しみ下さい。