つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

懐かしさのみ

2006-12-23 15:33:42 | 小説全般
さて、いらんトラバのおかげで単語に気をつけているの第753回は、

タイトル:美しい雲の国
著者:松本侑子
出版社:集英社 集英社文庫(初版:H10)

であります。

版画による挿絵が多用された、どちらかと言うと児童文学に近い作品。
ストーリーは……、


30歳になる児童文学作家の村上美雲は、出版社の打合せまでの時間、図書館にいた。
そこで過去の自分とおなじように本を読む少女の姿に、小学生のころ、毎年夏休みになると出雲のおじいさん、おばあさんの家に行く数週間のことを思い出す。

10歳の夏休み、いつものように祖父母の家にいた美雲は、ラジオ体操を行っている神社で見慣れない少年を認める。
ラジオ体操のあとの1回のかくれんぼ、または鬼ごっこを眺め、帰っていく少年……つよしくんこと、佐々木剛を追いかけた美雲は、そこでつよしくんが東京から来たことを知る。
それと同時に、とてもきれいな目をした少年であることも。

それから美雲の誘いでラジオ体操後の遊びに加わるようになったつよしくんと、何かと話したり、カブトムシを取りに行ったり、おじいさんと釣りに行ったりと、仲良くなっていく。
しかし、弟の病気で出雲のおじさんの家に預けられていたつよしくんは、美雲の弟が生まれた日、突然の出来事で東京に帰っていってしまっていた。


ん~、まずはやっぱり、「ですます調」の地の文は、慣れない……。
基本的には30歳の美雲が昔のことを回想する、と言う調子の一人称なので、こうした「ですます調」が似合わないか、と言うとそうではないのだが、個人的にはどうも……。

まぁ、そうしたところは目を瞑れば、10歳の少女が夏休みの間に出会った少年との淡い初恋や、いまはほとんど見られない懐かしい日本の風景(はっきりと時代は書いていないが、この夏休みのあと、オイルショックがあったとあるので、どういう時代設定なのかは自ずと知れる。)というものが十二分に感じられる穏やかな作品と言えるだろう。
裏表紙の作品解説に誇張もなく、そのとおりの作品になっている。

ただ、じゃぁそれ以外に何かあるか……と言うと、さして見るべきところはない。
穏やかな優しい雰囲気はとても感じられるので、そうした作品を読みたいときには向いているが、そうでなければちょっとオススメしにくい、かな。
もし、こういう話が読みたい、と言うリクエストがあれば、候補のひとつとして提示する。
そんな位置づけ、かと。