つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

戦え阿修羅王

2006-12-05 23:56:43 | マンガ(少女漫画)
さて、週間でよくやったなと思う第735回は、

タイトル:百億の昼と千億の夜(全二巻)
原作:光瀬龍  漫画:萩尾望都
出版社:秋田書店 少年チャンピオンコミックス(初版:S52~S53)

であります。

日本SF黎明期の傑作『百億の昼と千億の夜』のコミック版。
萩尾望都が描いてるだけあって、単なる原作のコピーに留まらず、むしろオリジナル作品に近い出来となっています。



アテナイに住むプラトンは、海に没した伝説の国アトランティスの調査を進める内に、エルカシアという小さな村にたどり着いた。
長老の娘ユメに連れられて入った『宗主の塔』の中で、プラトンはアトランティス最後の日の夢を見る。
宗主と呼ばれる人物はユメの口を借りて言った――お前は『道標』だ。過去と未来を旅し、戦士を探せ。

出家したシッタルダ太子は、四人のバラモンに連れられて天上界を訪れた。
しかし、天上界にも滅びの手は迫っており、数多くの星が熱量を失って死を迎えていた。
兜率天に座す梵天王は、五十六億七千万年後に現れる救世主・弥勒を信じ、憎むべき悪・阿修羅王と戦うことをシッタルダに要請する。

阿修羅王に興味を持ったシッタルダは、彼女と一対一の会見を望んだ。
極光の下で二人は出会い、シッタルダは阿修羅が戦う理由を問う。
阿修羅王は弥勒の救済を待っているだけの梵天王を嘲笑うと、滅びの原因が不明であること、それを知るために兜率天に攻め込んだことを告げた。

意見の一致を見た二人は、弥勒のおわすという摩尼宝殿を目指すのだが――。



文明の発生と滅び、そこには何らかの意図的な介入があるのではないか?
一言で言っちゃうと、これを宇宙規模まで広げて考えたSF作品です。
主人公達は、この世を滅ぼそうとする意志を感じ取り、終末を避ける術を求めて旅を続けます。

しかしよく二巻で終わらせたもんだ。

物語は二部構成で、前半は主要キャラの個別エピソード、後半は未来に集結した彼らが星から星へと旅するSFアクションといったところ。
メンバーの選択が物凄く、西はプラトンからユダまで、東は釈迦から阿修羅王までと、時代も場所もバラバラの有名人を節操なく集めています。
彼ら『選ばれた戦士』は謎の人物によってサイボーグにされ、荒廃が進んだ未来に送り込まれるのですが――。

勝ち目ゼロだよなぁ……この戦い。

敵には一応、『シ(死)』という名前が付いてますが、その正体は全く不明。
阿修羅王達は、姿も見せずに文明を滅ぼしていく『シ』を追うものの、その手はなかなか敵の本体に届きません。
おまけに、天上界の人間は自分で自分の首を絞めているとも知らずに、阿修羅王達の行動を妨害します。

『シ』とは? 『弥勒』とは何者か?
なぜアトランティスの開発計画は失敗したのか?
そして、阿修羅王達を援助してくれる人物の正体とは?
それは本編にて――。(笑)

主人公の阿修羅王が物凄く格好良いので、それだけでオススメ。(爆)
ラストは賛否両論あるかも知れませんが……闘神の運命としてはらしいかも。



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