つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

けっこう納得

2006-12-17 16:37:52 | ミステリ
さて、ジャンボジェットじゃないぞの第747回は、

タイトル:「ナイルの甲虫スカラベ」殺人事件
著者:吉村達也
出版社:角川書店 角川文庫(初版:H13)

であります。

う~む……、「○○殺人事件」なんてタイトルの小説を読んで、ミステリのカテゴリをこれ以上増やすことになるとは……。
まぁでも、ミステリにしては分量少なめだし、たまにはこういうのもありかと思って手に取ってはみたものの……。

さて、ストーリーは、

おなじ大学の映画製作同好会に所属する5人の学生、岡崎雅也、拓也兄弟、沖美保子、天田芳樹、小檜山努たちは、自主製作のホラー映画のためにエジプトのルクソールを訪れた。
そこで今回のホラー映画の見せ場のひとつでもあるシーンを撮影するためだった。

そのシーンとは、夢のお告げを信じ、古代ピラミッドの墓の中でミイラの扮装をし、ファラオとの心霊交信をする場面だった。
その役を演じる拓也は、包帯を巻かれ、身動きが取れない状態。ビデオを回すその場所へ、しばらくして他のメンバーが訪れ、水分補給などをしてもらい、再び一人きりの夜を明かすはずだった拓也は、突如として呼吸がしづらくなり、そのまま窒息死してしまう。

撮影していたビデオや状況から事故死と判断されたその一件から3年後、死んだ拓也の兄、雅也が美保子に結婚を前提にした交際を申し込んできたことを機に、拓也の死に関して疑惑を抱いていた美保子の父は、懇意にしている作家であり、名探偵でもあった朝比奈耕作に、3年前の事件の再調査を依頼する。

美保子とともにエジプトのルクソールに渡った朝比奈は、そこで当事者のひとりである小檜山努と出会い、ともに行動しながらルクソールでその真相を確認していく。


展開としては、すでに得られた情報をもとに推理した朝比奈の論理をエジプトで確認し、美保子、努の前で披露するものだが、トリックそのものや伏線の張り方などはきちんとしており、けっこう納得。
ミステリ好きには、あっさりした展開なので物足りないと思うひともいるかもしれないが、分量的には仕方のないところだろう。200ページないからね。

トリックとかよりも、むしろ私は犯人の動機や、殺人に使われた道具などのそれぞれ、5人のメインキャラのそれぞれの思いなど、そうした部分もけっこうすっきりと落ちてくれたのはいい感じかな。

短いながらもきちんと読める作品と言えるだろう。
ミステリ好きとは言えない私でもそれなりに楽しめたのでいい点をつけたいところだが、ミステリ好きがどう見るか不明なので及第と言ったところかな。