つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

これまた微妙な

2006-12-30 18:07:21 | 小説全般
さて、うちに年の瀬なんか関係ないのさの第760回は、

タイトル:駆ける少年
著者:鷺沢萠
出版社:文藝春秋 文春文庫(初版:H7)

であります。

表題作を含む3編の短編が収録された短編集なので、いつものように各話ごとに。

「銀河の町」
30を過ぎても定職に就かず、その日暮らし同然の生活をしているタツオは、常連となっている飲み屋「小雪」で、いつものように飲んでいた。
ある日、またいつものように「小雪」を訪れたタツオは、早めの時間にもかかわらず、タツオよりも長く通っている常連が神妙な顔をして飲んでいた。
そこで常連のひとりである山崎が亡くなり、その葬儀の帰りに集まっていたことを知る。

「駆ける少年」
会社を経営している龍之は、ある夢をきっかけに、菩提寺から過去帳を手にする。
祖父、以十、父、龍之介が書いた過去帳に、不思議な記載を見つけた龍之は、仕事の合間に父の過去を調べていく。

出版社を興し、成長、倒産を経験し、若くして死んだ父と同じように会社を経営し、やはり同じように危機に見舞われる中、龍之は過去に見た父の姿に、ようやくあることに気付く。

「痩せた背中」
父であるオイサンが死んだと言う訃報を受け、実家に戻った亮司は、そこでオイサンとほぼ内縁関係にあり、幼いころ、ともに暮らした町子の姿を認める。
葬儀の最中、ただオイサンと町子と、3人で暮らしたときの出来事を思い起こしながら、自らの裡に渦巻く思いを再確認していく。


最初の「銀河の町」がやや趣を異にするが、あとの2編は、家族、特に父との関係を描いた作品となっている。
3編のうち、個人的によかったのは「痩せた背中」かなぁ。

内縁の妻である町子とオイサンとの関係や、それを見て成長してきた亮司が故郷を離れつつも、故郷への強い思い、それを見まいとする心情など、丁寧に描かれており、良品と言えるだろう。

「銀河の町」は、常連たちの昔話やタツオの生活の中に哀愁を感じられる物語だが、いまいち弱い。
おもしろいかと言われると、他の2編よりもどうしても劣る印象。

「駆ける少年」は、「痩せた背中」同様だが、父の生い立ちと成長、会社など、他の要素が絡みすぎて邪魔をしている印象。
納得は出来る話ではあるが、引き込まれる強さは「痩せた背中」のほうがあるので、次点ってとこかな。

とは言え、どの話もさしてインパクトがあるわけでもなく、おもしろくないとは言わないが、じゃぁおもしろいかと言われると悩んでしまう。
「痩せた背中」もこの3編の中で較べるならば、と言うところでの良品なのでオススメとまでは言えないかなぁ。

しかし、このひとの作品は最初がOKで次がダメ、そんで今回が微妙な線……と来ればどうするかの判断がしづらいよなぁ。
まぁ昨日みたいに酷評する要素もないし、とりあえず保留ってことになるだろうから、次読んでからかな。


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