さて、私は霊感0だったりする第687回は、
タイトル:おどろ ~陽子と田ノ中の百鬼行事件簿~(全四巻)
著者:木々津克久
出版社:講談社 講談社コミックス
であります。
マガジンスペシャルに連載されていた、現代怪奇物です。
この世の本質を見抜くと言われる神箴眼を持つ高校生・陽子と、都市伝説や民間伝承を集めている大学生・田ノ中が、行く先々で奇妙な事件に巻き込まれるという物語。
ここでは、一~三巻の中から好きな話をいくつか紹介します。
『目隠し小僧と目隠し童子』(一巻)……十七歳の誕生日に、陽子は初めて幽霊を見た。汚い布で目隠しした子供が、「……おくれ」と謎の言葉を発しながら迫る。偶然知り合った田ノ中は、目隠しをしてお使いに出かけた子供の伝承を話すが――。
陽子が神箴眼を得て、初めて霊達と向き合うことになる第一話。この回で既に、陽子の力と田ノ中の知識で霊的トラブルに挑むという基本パターンが確立されている。タイムリミットを設定し、問題解決のための調査でさらに恐怖心をあおるというホラーの基本を踏襲した展開も良い。
『"都市伝説"から逃げのびろ!』(一巻)……陽子は甥の邑とともに、田ノ中の話す都市伝説に耳を傾けていた。真夜中に祖父から電話がかかり、これからそっちに行くという。時間も時間なので実家に確認すると、祖父は今朝亡くなったとのこと。しかし、それ以降も祖父からの電話は続き、次第に距離が近づいて――。
怪談話が現実になってしまうという話。諸事情により、田ノ中の語る都市伝説を最後まで聞けなかった、という設定が上手い。ラストで、「私は普通のコです」と主張した陽子に対し、いや、あンたとんでもない強者だからっ! と突っ込んだのは私だけではない筈。(笑)
『本所七不思議』(二巻)……東京のど真ん中にある神社を訪れた陽子は、自分と同種の力を持つ少女・恵と出会う。強引に付いてきた彼女を加え、田ノ中と三人で『本所七不思議』めぐりをすることになるが――。
色んな意味で陽子のライバルとなる恵の登場編。陽子が在野の達人ならば、神主の娘である恵は柳生といったところか(笑)。七不思議全部が揃ってもマイペースな田ノ中が、恵になつかれて困り果てる姿は笑える。
『宵の細道』(三巻)……今年で百歳になる田ノ中の祖母に呼ばれ、三人組は彼女が勤める寺を訪れる。祖母の提案で、怪異をテーマに俳句を百句作る『百句会』を行うことになるが、その席に謎の人物が現れ――。
百物語、俳句バージョン。当然のごとく怪現象が起こるのだが、そこに、迎えが来たことを悟っている祖母が俳句で追い討ちをかける演出がいい。『枯れ草や 囚徒の責め苦 鋸の錆』とかヤバ過ぎ。陽子が叫ぶ締めの句の出来はいいし、謎の人物も格好いいしと、かなりの名品。この話に限らず、三巻はエピソードのレベルが非常に高い。
『恋の迷路、ナゾナゾの森』(三巻)……話し合いのために森に入ったはいいが、そのまま遭難してしまった陽子と恵。中で出会った女の子も加え、三人で森を彷徨う。焦る二人を無視して、女の子はナゾナゾをしかけてくるが――。
よく考えると凄いタイトル(笑)。無邪気だけどパワーだけは凄いキャラクターって総じて怖いが、この話の女の子も例外ではない。間違え続けたらどうなっていたのやら。ところで、最後のナゾナゾの『一人では持てない』ってのは間違ってないか?
『取り扱い注意 荒鬼元次の草木占い!』『獣が来りて刃を向ける!』(三巻)……霊能者・荒鬼元次の実験、それは、占術によって分類された十二人の少女を集め、極限状態での行動を観察するというものだった。しかし、彼女達の行動は企画者側の予想を上回り、危険行為を止めるため田ノ中が現場に急行する。さらに、謎の怪人物が現れて――。
前後編。陽子と恵を含む十二人が綺麗に色分けされており、短いながら非常に面白い群像劇に仕上がっている。こんな実験を親が認めたというのはかなり無理があるとは思うが、夜の廃校を舞台に正体不明の敵と渡り合うというシチュエーションが面白過ぎるので、ありとしておこう。出来れば、全三巻ぐらいの長編で読んでみたい傑作エピソードである。
以上、他にも好きな話はあるのですが、このぐらいで。
一話完結が基本なので、どの巻からでも読めます。
(※ただし、一巻ラスと二巻最初の話は続き物なので注意)
派手さはないし、絵もちょっとクセがあるけど、かなりの良作。
全四巻とコンパクトにまとまっているので、怪談話、妖怪話が好きな方は手に取ってみることをオススメします。
タイトル:おどろ ~陽子と田ノ中の百鬼行事件簿~(全四巻)
著者:木々津克久
出版社:講談社 講談社コミックス
であります。
マガジンスペシャルに連載されていた、現代怪奇物です。
この世の本質を見抜くと言われる神箴眼を持つ高校生・陽子と、都市伝説や民間伝承を集めている大学生・田ノ中が、行く先々で奇妙な事件に巻き込まれるという物語。
ここでは、一~三巻の中から好きな話をいくつか紹介します。
『目隠し小僧と目隠し童子』(一巻)……十七歳の誕生日に、陽子は初めて幽霊を見た。汚い布で目隠しした子供が、「……おくれ」と謎の言葉を発しながら迫る。偶然知り合った田ノ中は、目隠しをしてお使いに出かけた子供の伝承を話すが――。
陽子が神箴眼を得て、初めて霊達と向き合うことになる第一話。この回で既に、陽子の力と田ノ中の知識で霊的トラブルに挑むという基本パターンが確立されている。タイムリミットを設定し、問題解決のための調査でさらに恐怖心をあおるというホラーの基本を踏襲した展開も良い。
『"都市伝説"から逃げのびろ!』(一巻)……陽子は甥の邑とともに、田ノ中の話す都市伝説に耳を傾けていた。真夜中に祖父から電話がかかり、これからそっちに行くという。時間も時間なので実家に確認すると、祖父は今朝亡くなったとのこと。しかし、それ以降も祖父からの電話は続き、次第に距離が近づいて――。
怪談話が現実になってしまうという話。諸事情により、田ノ中の語る都市伝説を最後まで聞けなかった、という設定が上手い。ラストで、「私は普通のコです」と主張した陽子に対し、いや、あンたとんでもない強者だからっ! と突っ込んだのは私だけではない筈。(笑)
『本所七不思議』(二巻)……東京のど真ん中にある神社を訪れた陽子は、自分と同種の力を持つ少女・恵と出会う。強引に付いてきた彼女を加え、田ノ中と三人で『本所七不思議』めぐりをすることになるが――。
色んな意味で陽子のライバルとなる恵の登場編。陽子が在野の達人ならば、神主の娘である恵は柳生といったところか(笑)。七不思議全部が揃ってもマイペースな田ノ中が、恵になつかれて困り果てる姿は笑える。
『宵の細道』(三巻)……今年で百歳になる田ノ中の祖母に呼ばれ、三人組は彼女が勤める寺を訪れる。祖母の提案で、怪異をテーマに俳句を百句作る『百句会』を行うことになるが、その席に謎の人物が現れ――。
百物語、俳句バージョン。当然のごとく怪現象が起こるのだが、そこに、迎えが来たことを悟っている祖母が俳句で追い討ちをかける演出がいい。『枯れ草や 囚徒の責め苦 鋸の錆』とかヤバ過ぎ。陽子が叫ぶ締めの句の出来はいいし、謎の人物も格好いいしと、かなりの名品。この話に限らず、三巻はエピソードのレベルが非常に高い。
『恋の迷路、ナゾナゾの森』(三巻)……話し合いのために森に入ったはいいが、そのまま遭難してしまった陽子と恵。中で出会った女の子も加え、三人で森を彷徨う。焦る二人を無視して、女の子はナゾナゾをしかけてくるが――。
よく考えると凄いタイトル(笑)。無邪気だけどパワーだけは凄いキャラクターって総じて怖いが、この話の女の子も例外ではない。間違え続けたらどうなっていたのやら。ところで、最後のナゾナゾの『一人では持てない』ってのは間違ってないか?
『取り扱い注意 荒鬼元次の草木占い!』『獣が来りて刃を向ける!』(三巻)……霊能者・荒鬼元次の実験、それは、占術によって分類された十二人の少女を集め、極限状態での行動を観察するというものだった。しかし、彼女達の行動は企画者側の予想を上回り、危険行為を止めるため田ノ中が現場に急行する。さらに、謎の怪人物が現れて――。
前後編。陽子と恵を含む十二人が綺麗に色分けされており、短いながら非常に面白い群像劇に仕上がっている。こんな実験を親が認めたというのはかなり無理があるとは思うが、夜の廃校を舞台に正体不明の敵と渡り合うというシチュエーションが面白過ぎるので、ありとしておこう。出来れば、全三巻ぐらいの長編で読んでみたい傑作エピソードである。
以上、他にも好きな話はあるのですが、このぐらいで。
一話完結が基本なので、どの巻からでも読めます。
(※ただし、一巻ラスと二巻最初の話は続き物なので注意)
派手さはないし、絵もちょっとクセがあるけど、かなりの良作。
全四巻とコンパクトにまとまっているので、怪談話、妖怪話が好きな方は手に取ってみることをオススメします。