つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

表紙に騙されてはいけない

2006-10-20 02:36:48 | 小説全般
さて、実は○だったひとをしばらく漁っていたの第689回は、

タイトル:微笑みがえし
著者:乃南アサ
出版社:KKベストセラーズ (初版:H3)

であります。

中学、高校の幼馴染み4人組の由記、玲子、ちなみ、阿希子。
由記は、東京でアイドルになり、結婚を機に引退した阿希子の家の新築祝いに、仲直りの証も兼ねて訪れていた。
そこには、女優を目指し、劇団の養成所に入りながら挫折した玲子がおり、札幌で地元放送局の花形アナウンサーをしているちなみも訪れるはずだった。

ただ、ちなみは仕事の都合で来られず、その代わりのように送られてきたものは、阿希子の写真の、顔の部分を穴だらけにしたもの。
また、もうひとつ、丁寧な包装の宅配便には、割れたガラス片ばかりが入った鉢。
阿希子の代わりに箱を開けた玲子が怪我をし、そんなとんでもない贈り物に、阿希子は近々復帰する自分を狙ってのことだと考えるが……。

幼馴染みの4人組。
だが、天真爛漫なぶん、行動や言動が他人に与える影響を鑑みない、なのに運だけはよく成功していく阿希子を、それぞれの原因と理由で憎む3人の目論見を描いた作品。

序盤から中盤にかけて、とかく読みづらい。
特に4人組の会話だが、うちふたりだけのシーンでも、たったふたりにも関わらず、いったいどっちが話しているのか、話し言葉からほとんど判別できない。
文章の視点は、章の名前が「由記の章」「玲子の章」と、固定されているのも関わらずわかりづらいのは、流れをとことん阻害する。
ただ、中盤以降、物語が進展するに従って、視点の固定は明確になり、また4人組……阿希子を除いた3人としても、それぞれの視点、思惑、他の幼馴染みの見方など、容赦のない描写で、密度も濃く、おもしろくなっていく。
だから、余計に中盤までのもたつきや、わかりづらい話し言葉部分などが余計に目立って悪く見える。

最初のほうはマジで読むのがきつかったが、まぁ、その後がずいぶんとよくなってきたので何とか及第ではあろうか。

しかし……「だいたいこういうパターンはこいつがこう」とか、「あー、これならこうなるだろうなぁ」と言う予想をしたりはするが、想定範囲内ですべて終わってくれたりしてくれたのは、ちと拍子抜け……。

ちなみに(キャラ名ではない)、表紙はピンク色の装丁に少女マンガ風。
高校時代くらいだろう。卒業式後の4人が揃って写真に写っているところ。
……これだけじゃぁ、どう見ても、10年後の話だとは思わないぞ。