つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

ホラーは不得手だが……

2005-02-08 13:14:06 | ホラー
さて、季節はずれなど半年後には誰もが忘れている第70回は、

タイトル:1001秒の恐怖映画
著者:井上雅彦
文庫名:創元推理文庫

であります。

というわけでしばらく平常業務に戻ります。

人は苦手と思う物でも手に取らねばならない時があるのです。
私にとってそれはホラーとラブロマンス。
生憎私は、血も臓物も生首も死体もノコギリもチェーンソーも甘い会話もベタな告白もお人形さんも男に都合のいい女も女に都合のいい男も、眺めて楽しむ趣味は持ち合わせていません。所詮、他人の妄想と割り切ります。
(自分ならいいのか? いや、そうではない……筈だ)

しかし、食わず嫌いはいけない。
避ける前にまず食え、と『想像美食主義』五三九頁三行目にも書いてあることですし、たまに手を出してみなければと思っているのです。

そんなわけで手にした本書。

三十九話+1のショートショート・ホラーです。
ホラー映画の用語がふんだんにちりばめてあり、各話のタイトルもそこから来てます。
モチーフに使われた映画の解説が巻末に掲載されており、洋物ホラー好きの方には堪えられない一品になっている……と思います。

スプラッタ全面否定派でサイコ・ホラー不完全否定派な私にとって、次々と登場する役者の名前や映画の題名は殆ど意味のない単語でしかなかったのですが、短編自体の出来はよく、『ドッペリア』『ハラァ博士の恐怖』などは思わず、上手い! と唸らされてしまいました。

ただ一つ問題が……。

全然怖くないですね、これ。

私は活字から画像を引き出すのが下手になったのかも知れません、しくしく。
でも、MAZE〔メイズ〕は本当に怖かったんだけどなぁ――途中までは。
やっぱり、ホラーは女性が書いた方が怖いんでしょうか?

祭りだ祭りだ

2005-02-07 20:18:15 | ホラー
さて、もう季節はずれだろうなぁの第69回は、

タイトル:悪霊はひとりぼっち
著者:小野不由美
出版社:講談社X文庫ティーンズハート

であります。

Amazon.co.jpで見たら「3490円より」になっていた。
早めに買っといてよかった……。

で、今回も学校が舞台。
ここでメインキャラ最後のひとり、安原少年が出てくる。
この話では舞台となる学校の生徒会長として依頼をしに来るわけだけど、この後、ちょくちょく顔を出す。

麻衣とぼーさんの兄妹みたいな掛け合いもおもしろいけど、安原少年とぼーさんの漫才もよい。

つか、ぼーさんってキャラとして人気あると言う話を聞いたことがあるけど、わかるよなぁ。
基本的に霊能者として毎回役に立ってるのはぼーさんだし、面倒見はいいし、おもしろい。

ともあれ、舞台となる学校ではLL教室に幽霊が出る、教室で黒い犬を見たり噛まれたりする、教室で変な臭いがして倒れるくらい、だけど、塩をまいたら消える……などなど。

原因は学校をあげてのコックリさん。

そしてそれは霊同士で共食いをさせてその恨みで対象を呪い殺す呪詛……。

前回は「魘魅」で、今回は「蠱毒」

自殺した少年が恨みを持って行った、たったひとりの教師を呪い殺すための蠱毒。

……前作よりもさらに怖くなっております。
つか、ホラーは苦手。でも、贔屓の作家さんなら読む。

ところで、今回は主人公の麻衣が大活躍。
ばんばん霊視はするわ、退魔法使ってちょこっとだけぼーさんみたいなことはするわ……。

挙げ句の果ては、呪詛を返すことになって、それがイヤでひとりで乗り込んでいくし。
(話の内容は読みませう)

このブログ書くために読み返しただけなのに、延々読んでるし(笑)

やっぱ、おもしろい話ってのは止まらないもんだねぇ。

追いかけて、追いかけて……。

2005-02-06 12:48:09 | SF(海外)
さて、すがりつく気も雪国行く気もない第68回は、

タイトル:第二ファウンデーション
著者:アイザック・アシモフ
文庫名:ハヤカワ文庫

であります。

第66回に続き、銀河帝国興亡史シリーズの第三巻です。

本巻は二巻と同じく二部構成です。
第一部は第一ファウンデーションを小指でのしたミュールが、最後の強敵第二ファウンデーションを探す話。幕間で謎の人物達が交わす会話がいい味出してます。
第二部は第二ファンデーションの存在を認識した第一ファウンデーションが同胞を探す話。主人公はベイタとトランの孫アーカディです。

というわけで前巻に続き、ミュールの登場。
彼はアレキサンダーも真っ青のパワーで僅か数年のうちに自分の帝国を築き上げてしまいます。よーやるわ、ほんと。
でも、特に圧政を敷くわけでもなく、被支配者に対しては寛容なご様子。実は第一ファウンデーションより遥かにタチがいいかも。

しかし――それを黙って見ているセルダン軍団ではありません。
ミュールの知らないところ、知っているところで密かに悪の計画を……。(悪役かよ)

それはそうと、今回のミュールは非常におしゃべりです。
前作ほどの悲壮感はありませんが、その魅力は健在。

んで、第二部。
ついに、第二ファウンデーションの位置が明かされます。
後半はミステリ色がぐっと濃くなり、結論が二転三転……ってこれ以上言うのは無粋。

実は第一部読了後、それがどこか予想できます。
私が最初に読んだ時は……かなり前の記憶なので怪しいけど、気付かなかったと思う。
うーむ、今思い出しても悔しいですねぇ。

今回の『第二ファウンデーション』を以て、第一期銀河帝国興亡史は終了です。
この三冊をセットで『銀河帝国興亡史三部作(ファウンデーション・トリロジィ)』と呼び、『ファウンデーションの彼方へ』(1982)が登場するまでの三十年間、この形で親しまれてきました。
往年のファンの中にはこれ以降のファウンデーション物は蛇足だ、という意見をお持ちの方もいらっしゃるようですが、私は続編も好きなので続けて紹介していきます。

ただし、一呼吸置いて。
理由はまたの機会に。(笑)



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シリーズもの第3弾

2005-02-05 20:25:27 | ホラー
さて、ふつうの茶漬けのほうがいいかもな第67回は、

タイトル:悪霊がいっぱいで眠れない
著者:小野不由美
出版社:講談社X文庫ティーンズハート

であります。

全部で7作8巻の第3巻目で、湯浅高校で次々と起きる怪現象を解決すると言うもの。

メンバーは……相変わらずのメンバー。
主人公の麻衣、渋谷サイキックリサーチの所長ナル、助手のリンさん、ぼーさん、巫女の綾子、霊媒の真砂子、神父のジョン。

今回のキーは、超能力。
テレビを見ていた生徒のひとりが真似をしてスプーンを本当に曲げてしまった。
それで本当だの嘘だの意見が対立。

このカサイ・パニックという出来事が元となって起きた事件が、次々と起きる怪現象の発端。

話そのものは読んでもらうとして、今回の怪現象の原因は「呪詛」

「魘魅」と呼ばれる、いわゆる藁人形を使って対象を呪い殺す呪術。

ホラーだけど、しっかりと人間を書いているところはさすが。
どの巻もそうだけど、怖さとか謎解きを重視しすぎて人間を蔑ろにするホラーやミステリーが多いけど、やはりそれじゃぁ、「あー、怖かった」で終わりだろ。

2回目を読みたいとは思わないね、そういうのだと。

今度は戦争だ!

2005-02-04 12:06:23 | SF(海外)
さて、あ~なたと食べたい鮭茶漬け~、な第66回は、

タイトル:ファウンデーション対帝国
著者:アイザック・アシモフ
文庫名:ハヤカワ文庫

であります。

第64回でご紹介した銀河帝国興亡史シリーズの第二巻。

老いたる巨竜である銀河帝国と第一ファウンデーションの戦いを描く第一部。
次なる驚異、謎の人物ミュールとの対決を描く第二部。
の二部構成です。

燃える展開です。
設立から二百年が過ぎた第一ファウンデーション。
俺らの科学力は宇宙一、邪魔する奴は小金一つで簡単抹消!(軽い説明やわぁ)
みたいな感じで版図を広げていきますが……。
ついにと言うか当然というか、帝国の逆鱗に触れ、直接対決を余儀なくされます。

将軍「ボス、あの生意気なガキ潰したいんで、チャカ寄こして下さいよ」
皇帝「やるんかいな、そうかいな。ところでファウンデーションて何よ?」

凄まじく脚色入ってますが、こんな感じでベル・リオーズ(作曲家に非ず)という将軍がファウンデーションに戦いを挑むのが第一部のあらすじ。

いかにファウンデーションがリオーズ君をへこますかは本編を読んで下さい。
個人的には、「テメェの名前を知ってるぜ、イエボー!」(ゲド戦記)のような展開を予想していたのですが、実は……(以下省略)。

新婚さんであるベイタとトランが、ミュールに対抗するために第二ファウンデーションを探すのが第二部。
それまで存在自体忘れ去ってたのに、科学も金も武力も通じない敵に出会ったとたんに同胞を捜すあたり、いい根性してますね第一ファウンデーション。

それはいいとして第二部のキモは――

ミュール格好良すぎ

これに尽きます。

なんたって超能力戦士(サイキックソルジャー)です。
火炎放射も電撃も使いませんし瞳も燃えたりはしませんが、三つどころじゃないぐらいしもべを増やしファウンデーションを脅かします。
彼一人動くだけで一般人一億人以上(もっとか?)の行動が心理歴史学の計算軌道から外れていく……話を根底から覆しかねないシリーズ屈指の名悪役です。

悪役と書きましたが、彼を悪と呼ぶのは語弊があるかも知れません。
心理歴史学に基づいた秩序が正義とは限りませんからね。
(この問題は四巻――ファウンデーションの彼方へ、で語られています)

というわけで今日はここまで。
続きは第68回にて。



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第2弾発射

2005-02-03 21:37:50 | ホラー
さて、はーるばる来たぜの第65回は、

タイトル:悪霊がホントにいっぱい!
著者:小野不由美
出版社:講談社X文庫ティーンズハート

であります。

今度はきちんとホラーであります。

舞台は瀟洒な洋館。
続く怪現象の解決を依頼されて行ってみれば、すごいポルターガイスト。

キーは依頼者の姪の礼美(あやみ)ちゃんと、人形のミニー。

今回は元高野山のぼーさんこと滝川法生がそれなりに活躍。
霊媒の真砂子も、今回はきちんと幽霊がいるのでそれなりに活躍。
ミニーに憑いた幽霊を落とすので、神父のジョンもそれなりに活躍。

まぁ、主人公の麻衣とナル、リンさんは言うに及ばずなので、ぜんぜん役に立ってないのは相変わらず巫女さんの綾子だけ。

けど、この話からアルバイトして渋谷サイキックリサーチで働くこととなって主人公の麻衣は、ESPの能力を発揮。

最終巻にはいきなりのその謎が証されるけど、ここでは洋館にまつわる過去を夢で見る。

それがほんとうのことで、これからの話にもちょくちょく麻衣の夢が活躍。

と言うわけで、役立たず2大巨頭だった麻衣と綾子のうち、麻衣が一抜け。

まぁでも、綾子にも活躍の場はあるから、全員ぜんぜん役立たず、と言うわけではないけど。

話の内容は読んでもらうとして、1巻とは違って今回はしっかりとホラーしてます。

でも、やっぱりきっちりなホラーでもおもしろいんだよねぇ。

さすがに違うわ、書くひとが。

では、こちらもシリーズ物

2005-02-02 19:57:59 | SF(海外)
さて、一日たりとも休まず第64回は、

タイトル:ファウンデーション
著者:アイザック・アシモフ
文庫名:ハヤカワ文庫

であります。

というわけで二回目の登場となるアシモフ先生
本書は銀河帝国興亡史と呼ばれるシリーズの一作目です。

高一の時に読んで人生変わりました。

いや、本当に。
ストーリーをかいつまんで言うと。

銀河系を支配する銀河帝国に少しずつ亀裂が生じ始めている時代。
統計に基づいて人類の行動を予測する学問――心理歴史学を用いて、帝国の終焉と三万年続く暴力の時代を予言した学者がいた。
彼の名はハリ・セルダン。

セルダンは計算によって導き出された破滅の未来を放置したりはしなかった。
三万年続く暗黒時代を只の一千年に短縮するために、彼は二つのファウンデーション(財団)を設立した。

第一ファウンデーションは、科学技術の集積場として辺境惑星ターミナスに建設された。
第二ファウンデーションはその反対側、星界の果てに建設されたが、実態は闇に包まれていた。

そして時は流れる。
セルダンが死に、帝国の権威が衰え、辺境で反乱が勃発し、人々が科学の何たるかを忘れた時代、第一ファウンデーションは活動を始めた……。

と、いったところであらすじはここまで。
この後は、いかにしてファウンデーションが辺境を支配下に置いていくかが書かれています。

ドンパチはほぼ皆無。
宇宙戦艦は出ますが、名艦長も名提督も超兵器も出ません。
飽くまで人間対人間の頭脳戦ですべての決着がつきます。
その会話の楽しいことと言ったら……もう。

キャラクターとしてはターミナス初代市長のサルヴァー・ハーディンが一番好き。
意地悪で狡猾だけど暴力否定派というのがかなりいい感じです。

SF好きは必読。理屈が好きな人も必読。
というわけで二巻に続く……。



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このあたりでシリーズもの

2005-02-01 20:46:50 | ホラー
さて、皆勤賞続けて第63回は、

タイトル:悪霊がいっぱい!?
著者:小野不由美
出版社:講談社X文庫ティーンズハート

であります。

少女小説のブランドだけど、「十二国記」シリーズを書いた小野さんの比較的初期のシリーズ。

タイトルからもわかるようにホラーであります。

少女小説のホラー、と言うと、「うーむ」という感じではあるけど、やはり十二国記や屍鬼の作者だけあって、しっかりしてる。

悪霊シリーズの第1作目。

まぁ、ホラーと言うと超常現象の一言で終わらせるもの(かなり偏見)だし、ホラーやミステリーというと人間を蔑ろにして、怖さとかを売りにするもの(これまた偏見)だけど、これはそうじゃない。

話は主人公の麻衣が通う学校の旧校舎で不可思議なことが起きる、と言うことで調査を依頼されたSPR(渋谷サイキックリサーチ)の所長の渋谷一也(通称ナル)が調査中、麻衣が旧校舎を覗いて、そこで助手のリンさんを負傷させてしまう。

そこでリンさんの代わりに麻衣が助手としてナルとともに旧校舎の謎を解く、と言うもの。

ホラーと言いながら、事件は地盤沈下が原因のもので、超常現象は麻衣たちに突っかかってくる少女の無意識のESP。

ホラー、と言うには原因ははっきりしてるし、主人公のひとり、ナルは霊媒者の類ではない、と言いきる。

確かにごくごく科学的に調査するし、拝み屋や巫女さんなどなど、その手の人たちは出てくるけど、今回は役立たず。

このあたりのメインキャラの活躍の場はあとに出てくるけどね。

さすがに怖いだけで中身のないホラーと違って、しっかりと納得させられるだけのネタとオチでまとめられてる。

ただ、この小説、いま現在だと手に入れるためには少し、努力が必要かも。

十二国記が売れたから増刷したかもしれないけど、そう多くはないと思う。
Amazon.co.jpではいくつか在庫切れ。
つか、この「悪霊がいっぱい!?」はユーズドで2940円!
私が持ってる第6刷の値段は420円だからやはり手に入りにくいんだろうなぁ。

とは言うものの、これより前のホラーが絶版になってて、手に入れたいと思う今日このごろであーる。