さんたろう日記

95歳、会津坂下町に住む「山太郎」さんたろうです。コンデジで楽しみながら残りの日々静かに生きようと思っています。

秋の野に小さく咲いて綺麗な白い花

2018-09-30 | 日記
ゲンノショウコ(現の証拠)というんです



小さいけどこんな可愛い花を咲かせえるんです。



この花を見ると幼かった頃の病気や怪我の治療のことを思いだすんですよ、
80数年前、私が8歳前後の頃私は山峡(やまかい)の小さな村に住んでいました。その頃は病気や怪我を治療してくださるお医者さんは3里(約12km)ほど離れたところにいらっしゃる「医者殿」と私たちが呼んでいる医師の方が一人いらっしゃるだけでした。往診治療もしていただけましたけど何しろ医療保険などありませんから高額の治療薬代を払わなければならず庶民はめったにお医者さんの診察治療を受けることなどありませんでした。

ということで病気や怪我の治療は一般に次の三つの方法で対処していました。
①富山の置き薬。
②山野に生える薬草や熊の胆嚢やマムシなど。
③お薬師さまへの祈願

今思うと一番てっとり早いのは富山の置き薬を飲むことでした。
風邪にはケロリンという白い粉剤
腹痛には「くまのい」(熊の胆嚢)を乾燥させたもの
 これは本物ではありません、本物は高価で重さで金と同価格といわれていました。富山の は豚や牛などの胆嚢を乾燥させたものを「くまのい」と称して銀色の箔に丁寧に包まれていたのです。
肩こりにはあんまこう(紙に茶黒色の粘る薬が塗ってありました)。
化膿には「たこの吸出し」という貝に入った緑色の油の練薬
蜂刺されや食中毒には「毒消し」という黄色の丸薬
回虫などの虫下しには「セメン」という白い粉薬
 これを飲むと周りが青色に見えるようになり次の日の朝には大便の中に細いミミズのような回虫が混じっていました。何しろ糞尿を野菜の大事な肥料として畑に撒いていましたから糞尿の中にある回虫の卵が腹の中で回虫になって悪さをするのです。
これらの薬が良く効いたんですね。なんか赤い丸薬などもありましたね。庶民には医者いらずでした。

動物を使った薬では「くまのい」です。熊の胆嚢を乾燥させて物で万病に効くといわれていました。大変高価で重さで金と同じ価格といわれておりました。ですから村のまたぎの人たちが熊を一頭獲ると大変な儲けになりました。熊の毛皮は敷物として高価でしたし肉も人々に喜ばれましたから。
それと同じように尊ばれたのが蛇のマムシです。皮をむいて囲炉裏の煙で燻製にしたものや、焼酎に入れたマムシ酒は強壮剤として珍重され肝臓の病気の黄だんにも効くといわれて珍重されておりました。
 青虫は嫌いで怖いけどヘビは平気な私は古老にマムシ捕獲の方法を伝授され山野を歩くときはいつもマムシをさがして歩き生きたまま捕獲してたくさんの人に分けてあげてよろこばれました。でも「草根木皮のたぐい」の効用をあまり信じていない私は「くまのい」や「マムシ」は一切服用していませんでした。。

そして薬草です。その第一番にあげられるのがこの「ゲンノショウコ」です。祖父はこの「ゲンノショウコ」を採集して乾燥させて保管していました。煎じたものは下痢や腹痛にぴたりと効くんだそうです。それで現にぴたりと効く薬草といいうことで「現の証拠」といわれていると聞きました。

でも子供の頃の私はそんなことには関心がありませんでした。私の関心のあったのはこの写真のゲンノショウコの実なんです。



左のさや状の実が完熟するとはじけて実をはね飛ばし右のような形になるのです。子ども私はその形に心惹かれたのです。子供の私はその形がコウモリ傘の骨組みに見えたのです。

当時雨降りに使う傘は二種類ありました。ひとつは竹の柄に竹の骨ぐみをつけ油紙を張ったから傘です。そして綺麗な金属の柄に金属の骨組みをつけ綺麗な布を張った軽やかなコウモリ傘です。洟垂れ小僧の一般の子供たちが使う甘傘は唐傘です。でもお金持ちのお嬢さんの雨傘は綺麗で軽やかなコウモリ傘です。洟垂れ小僧の男の子たちにとってはその綺麗なコウモリ傘をさして学校に通うお嬢さんが憧れの的でした。私はひとり腹ばってコウモリ傘の骨組みに見えるゲンノショウコの実を見つめていつまでも物思いにふけるのが好きでした。私の心にはゲンノショウコのの実が美しいコウモリ傘に見えてうっとりとしていたんです。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿