AIJ年金消失問題
とまりぎ
日経新聞によると、AIJ投資顧問による年金消失問題に関連し、2012年3月期で特別損失を計上する企業が相次いでいる。12日にはAIJに預けていた資産が最大だった富士電機が前期(2011年度)の連結決算で約70億円を特別損失に計上すると発表した。年金基金の損失が企業の財務を傷める結果になっているため、企業は運用の監視体制を強化するなど、対策に動き始めた。
富士電機は年金基金が11年3月末時点でAIJに預けていた約93億円の資産のうち、8割にあたる約70億円を特損に計上する。年金基金のうち富士電機本体と連結子会社分に関して全額を特損処理。連結対象外のグループ会社は個別に処理し、この分は連結決算には反映させなかった。
日本公認会計士協会が年金基金の損失を前期決算で特損処理する指針を受け、日本ユニシスとSCSKは委託残高の全額を前期決算で特損処理することを既に発表している。アドバンテストは「米国会計基準に沿って処理する」(社長室)としており、損失の項目や金額は未定。ほかにも対応を未定とする企業があるが、前期決算での処理が進みそうだ。
企業が年金基金の損失を穴埋めするのは、年金や退職金は給与の後払いという考え方があるためで、年金の運用は経営問題と言われる。日本では「大企業でも、年金運用に母体が直接関わるケースはまだ少ない」(外資系年金コンサルタント)のが実情とみられるが、今回、年金運用のトラブルが企業に多額の損失を被らせていることで、一段の管理の強化が課題になってくる。
AIJ問題があぶり出した経営による年金の管理強化は専門家の間でここ数年必要性が指摘されてきた問題。形式にとどまらず実効性ある体制を作ることができるか。年金消失に見舞われた企業だけでなく、日本企業全体のテーマとなる。
*特損処理できるような利益の出た大企業はまだいい。中小企業の基金組合は同じ処理ができるだろうか。たぶん、できないだろうな。どう対応するのだろうか。