バスde温泉

バスで行く温泉旅日記

七つの外湯めぐり@城崎温泉

2019-09-18 10:17:58 | 温泉(兵庫県)

コウノトリが傷を癒していた事により発見されたとの伝説がある城崎温泉は、1300年の歴史をもつ「海内第一泉(かいだいだいいちせん)」の誉れ高き温泉で、現在も有馬温泉、湯村温泉とともに兵庫県を代表する温泉です。


JR山陰線・城崎温泉駅の辺りから大谿川沿いに7つの外湯をはじめ、木造の古い旅館や商店が建ち並ぶ温泉街を形成し、川べりにそよぐ柳が独特の風情を造り上げています。


城崎温泉はすでに江戸時代から賑わいを見せており、近郊の藩主や藩士が多数訪れており、また、幕末に桂小五郎が新選組に追われて城崎温泉に逃げてきたこともあったとのこと。

さらに明治以後、文人墨客に愛され、『城の崎にて』を書いた志賀直哉、作家・有島武郎をはじめとする多数の文豪が来訪。最近では元兵庫県議会議員の野々村竜太郎氏がたびたび視察?に訪れたことでも有名になりました。


城崎温泉では戦前まではほとんどの旅館に内湯が無く、戦後、内湯を認められるようになっても、その規模を制限されているため、宿泊者は7つある外湯に出向くことになります。


旅館宿泊者は全外湯の入浴料が免除され、全外湯を巡る「外湯めぐり」が名物となりました。その際、浴衣を着て下駄を履くのが正装とされ、ほとんどの旅館では旅館内用の浴衣とは別に、温泉街を出歩くための浴衣も用意しています。浴衣姿の宿泊客が下駄を鳴らしながらそぞろ歩く様は温泉情緒のひとつとなっています。


昭和の高度成長期、制限されてるとは言え各旅館に内湯が造られるようになると、お湯の安定供給が課題となり、1972年、すべての源泉のお湯を集中配湯管理施設に集められ、町内に張り巡らされている配管を通じて各外湯・旅館に送られるようになりました。


湧出温度が37~83 ℃の各源泉のお湯を、平均温度を57 ℃に安定させてから各外湯や旅館に配湯されています。それらに満たされてる澄明で塩辛いお湯は、循環ろ過の程度や加水の有無、清掃のタイミングにより多少の違いはあるが、基本的にどこも同じ泉質です。


外湯は大谿川の上流から下流に向かって鴻の湯、まんだら湯、御所の湯、柳湯、一の湯、地蔵湯があり、駅隣接のさとの湯を合わせて全部で七湯。


最も奥にある「鴻の湯」は城崎で最も歴史ある湯で、源泉に最も近い位置にります。また、ここには美しい庭園露天風呂があります。駐車場があるので日帰り入浴も多いようです。しかし、この駐車場が邪魔をして、徒歩の入浴客は公衆トイレの直前を横切って入ることになります。も少し配置に工夫が必要ですね。


まんだら湯」は「鴻の湯」に次いで歴史ある湯です。717年(養老元年)から720年(養老4年)、道智上人が千日の修行を行った末に湧出したことが城崎温泉のはじまりとされ、ここはその所縁の場所にあります。小さい浴槽だが、珠から湯が溢れてくるデザインは仏教的な因縁を感じさせます。


「御所の湯」は後白河天皇の御姉安嘉門院、御入湯の湯として由緒のある外湯。七湯の中でリニューアルが最も直近で、寺院のような建物は相当お金がかかっていると感じさせる豪華なつくりです。天井がガラスの内湯と露天とはつながっていて、大扉を開ければ全浴槽がオープンエアに。露天の奥には人工の滝を配し、温泉を楽しませようとの演出は抜群。しかしお湯はかなり薄まっていると感じてしまいます。


「柳湯」は 柳の木の下からお湯が湧き出たからこの名とされたとか。外湯のなかで最も小さいが、新しく小ぎれい。湯は熱めで、浴槽は小さいが深い。温泉感もあるし、静かで落ち着きます。


外湯の筆頭とされる「一の湯」は、江戸時代「新湯(あらゆ)」と呼ばれていたが、江戸時代中期の漢方医、香川修徳が「海内一(日本一のこと)」の泉質と絶賛したことから「一の湯」に改名したとのこと。規模は大きい部類で、山肌に掘った洞窟風呂が自慢です。しかし集中配湯の泉質にこれといった特徴もなく、温泉感は希薄です。


この温泉の泉源からお地蔵さんが出てきたからこの名となった「地蔵湯」は、そのことから建物横に地蔵尊が奉られています。江戸時代には、城崎の村民の多くに親しまれていた里人の湯で、古き良き、城崎の温泉文化の名残を留めるレトロモダンな施設です。


「さとの湯」は日本最大の駅舎温泉です。正式名称を「豊岡市立城崎温泉交流センター」といい、指定管理者によって運営される公設民営の温泉施設です。城崎では比較的新しく、最も巨大な外湯です。ここでは多種のサウナが整っているのがユニークですが、温泉でサウナが自慢ってなんで…?ただ、「ペンギンサウナ」と称する極低温サウナは秀逸。5度に設定していて、外湯めぐりで湯あたり気味の体には実に快適でした。


各外湯にはそれぞれ由緒はあるものの、今やどこも同じ温泉水が満たされているだけなので、それぞれのお湯の違いを楽しむことなどできません。ここは温泉そのものより温泉情緒を楽しむところだといえます。

・場所:JR山陰線・城崎温泉駅
・泉質:ナトリウム・カルシウム‐塩化物泉 75度
・訪問日:2007年5月8日


忘れの里 雅叙苑@妙見温泉

2019-09-18 08:29:58 | 温泉(鹿児島県)

鹿児島空港の東側、天降川の畔にある妙見温泉、ここでは川沿いを掘削すると火山性の炭酸水素塩泉が自噴するという、豊富な源泉に恵まれた温泉地です。この「雅叙苑」は古民家を移設した田舎情緒溢れる温泉旅館で、メディアの露出も多い、予約困難な有名旅館です。


敷地内に入ると標識があって、ここでは人や車より鶏の通行が優先されるとのこと、気分を盛り上げますね。


この旅館の客室は全10室。そのうち8室が露天風呂付きになっていて、スタンダードな部屋でも二間続きで20畳ぐらいの広さをもっています。客室、お風呂、食堂、ロビーなどが、それぞれ独立した建屋になっています。


ここの一般浴場「建湯」は、一枚岩をくり貫いた浴槽が特徴、岩の手触りがいいですね。お湯はやや白濁した炭酸水素塩泉で、舐めてみると長湯温泉ほどではないがかなりの金気臭が感じられる。赤茶色の湯の華が舞っていて温度も比較的高めで、ガツンと身に沁みいるお湯です。


ここの白眉は貸切浴場の「ラムネ湯」にあります。部屋名の入った木札をお風呂の入口に引っ掛けることにより「貸切風呂」となるシステム。ここには2つの浴槽と打たせ湯があり、入口に近い浴槽は比較的湯温が高い炭酸水素塩泉、建湯と同様のガツン。



奥の浴槽は低温の澄明なお湯です。「ラムネ湯」というのはこれのことかな?かなり温いがしばらく浸かっているうちにホカホカしてきます。舐めると確かにラムネのような炭酸を感じます。実に優しい浴感、これはひとたび浸かってしまうと時間が止まってしまう…


このラムネ湯は今のような特徴的な旅館となる前、普通の温泉旅館だったときの大浴場。それを貸切専用にして再利用しているのですね。こちらの風呂にはシャンプーや石鹸が置いてなくて、純粋にお湯を楽しめるようになっています。10室中、8室が露天風呂付き客室なので、この貸切湯が混み合うことはないでしょう。ゆったりできますね。


お風呂はさらにもう一つ、天降川沿いに露天風呂があるようだが、大雨などによる増水で目隠しの囲いがしばしば流されるため、現在は足湯になっているとのこと。しかし、この日はそのお湯すら抜かれていました。冬場は使用しないのかもしれません。


この旅館の料理は良質の素材を用いた素朴ながら手の込んだ数々が並びます。


忘れの里 雅叙苑(料理・夕食)@妙見温泉 - バスde温泉

忘れの里 雅叙苑(料理・朝食)@妙見温泉 - バスde温泉

メディアで見るイメージとは違い、絶景があるというわけではないし、近くの道路を走る車の音や鹿児島空港を離発着する飛行機の騒音が聞えたりして、秘湯というような気はしない。が、田舎の親戚を訪ねてきた感覚っていうか…なんだか心安らぐんですよね。


「和」の空間構成は、それが作られたものであるとしてもかなり心地よい。これぞ空間デザインの成果。スタッフのみなさんの肩に力の入っていない適度なホスピタリティも心地いいですね。お代は決して安くはないが、それ以上の値打ちを感じさせてくれました。

  • 場所:妙見路線バス・妙見BS
  • 泉質:ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉 49(ラムネ湯・49度)
  • 訪問日:2010年1月27