バスde温泉

バスで行く温泉旅日記

ばんぺい湯(八代市日奈久温泉センター)@日奈久温泉

2019-06-27 19:04:31 | 温泉(熊本県)
肥薩おれんじ鉄道の日奈久温泉駅から南へ10分ほど歩いたところ、鄙びた…鄙びすぎた温泉街の中心に、2009年にオープンした共同湯です。

建物は真新しいが、この共同湯の歴史は古く、江戸時代に肥後細川藩の藩営温泉「御前湯」、明治から昭和にかけては「日奈久温泉本湯」、その後、昭和42年から「温泉センター」として多くの人に親しまれてきたとのこと。

正式には「日奈久温泉センター」だが、「ばんぺい湯」という愛称が付けられています。これは、八代特産の晩白柚(ばんぺいゆ)にちなんでのことです。

1階は地元食材の直売所と200円の公衆浴場、2階が500円のばんぺい湯(大浴場)と休憩所、簡易な食堂になっていて、地元の方は公衆浴場を使い、観光客はばんぺい湯に案内されるようになっています。違いは、サウナと露天風呂の有無ぐらいらしいです。

かすかに硫黄の香りが漂うアルカリ泉、実に柔らかい湯触りですね。この時期は柚子湯ならぬ晩白柚湯が楽しめます。この温泉では掛け流しを標榜しているが、加温はされています。

この日奈久温泉、宿泊客は最盛期の10分の1まで減ってしまったそうです。街では観光客を取り戻そうと、この温泉に縁のある種田山頭火の俳句を記した木片をあちこちに吊るしたり、ボランティアによるガイドを行うなど、いろいろ手を打っているようです。

しかし、駅から温泉街までは、車が多いのに歩道のない一ケタ国道を歩かないといけないのが最大の弱点ではないかと思ってしまいます。

・場所:肥薩おれんじ鉄道・日奈久温泉駅、九州産交バス・日奈久温泉
・泉質:弱アルカリ性単純泉 34.5~46.0度
・訪問日:2010年1月28日

金波楼@日奈久温泉

2019-06-27 17:19:29 | 温泉(熊本県)
八代市の市街から10kmほど南のところ、肥薩おれんじ鉄道・日奈久温泉駅の近くにある日奈久温泉は、八代海を望む海辺の温泉地です。室町時代に海の干潟で発見されて以来、連綿たる歴史を持つ九州の古湯です。

この温泉街に、ひときわ威厳を湛える建屋を持つ旅館が、創業が明治43年の金波楼です。今では貴重な木造3階建ての建屋は、県内でも最大級といわれています。

屋根は寄棟・切妻様式を組み合わせたもので、平成21年には国の登録有形文化財にも登録されました。まるで「千と千尋の神隠し」に出てくるような、独特の存在感を持った姿に魅せられます。

正門から玄関に入ると、柱や梁、床や階段の手すりがピカピカに磨き上げられていることにも驚きます。館内を進むと桃山様式の庭園が見事なぐらいに手入れされています。

客室も実に広く、襖や欄間も手の込んだものが設えられています。やや天井が低いのも時代を感じさせるが、古いながらも落ち着いた雰囲気を醸し出しています。

名産の太刀魚や竹輪をあしらった料理の詳細は食べログで。

建物は古いが、温泉はリニューアルされていて、新しくクリーンな姿になっています。お湯は単純泉で澄明で無味無臭。湯触りは実に柔らかい。

完全な掛け流しではなく一部循環されてはいるが、オーバーフローは捨てられています。世界一大きいとされる八代市名産の晩白柚(ばんぺいゆ)や夏みかんが大量に浮かんでいて、そのいい香りで温泉の持つ香りはよく判りません。

露天は桃山様式の庭園に面していて実に風雅な景色が楽しめます。風情は超一流のこのお風呂、せめて一部のお風呂だけでも完全掛け流しにしてもらえたらなぁ…

この旅館、何よりもこの建物を維持し、恐ろしいほどに掃除に傾注していることに賛辞を惜しみません。こんな建物、火事でも出したら大変なことだから、いっそ全館を禁煙にする英断があってもいいのではと思います。

2016年にこの地方を襲った熊本地震により、建物にも少なからず被害を受けたようだが、不断の努力で改修したとのこと。館主や女将が案内する館内ツアーも人気とのことです。

・場所:肥薩おれんじ鉄道・日奈久温泉駅、九州産交バス・日奈久温泉
・泉質:弱アルカリ性単純泉 43.9℃
・訪問日:2010年1月28

米屋別荘@杖立温泉

2019-06-22 10:50:48 | 温泉(熊本県)
筑後川の支流、杖立川が侵食した渓谷の僅かな土地に、幾筋もの湯煙が立ちのぼり、大型旅館や小旅館、湯治宿などさまざまな旅館が細長く立ち並んでいる、昭和の香りを残す温泉街です。

背戸屋と呼ばれる町並みのある杖立温泉のレトロな街の対岸、温泉街の南端に位置する米屋別荘は、現在は7代目の当主が引き継いでいる、創業が天保14年(1843年)という老舗です。

バイパスの完成によって、今は車の通りも少なくなった日田街道から、坂道を少し下りた奥まったところに玄関があります。敷地内に入るとチャボがお出迎え。なんだかほのぼのとした雰囲気は、老舗にありがちな敷居の高さを感じさせません。

玄関といっても旅館特有の仰々しいものではなく、縄暖簾のない居酒屋といった風体。旅籠の雰囲気を継承しているのでしょうか。中に入ると民芸調。土間に囲炉裏が据えられていて。フロントカウンターはなく帳場といった風情。

囲炉裏の裏手に狭いが落ち着いた雰囲気の談話室兼ライブラリーがあって、ここで宿帳に記帳。シフォンケーキとお茶を出してくださいました。

帳場のある母屋には個室の食事処とライブラリーとともに、ツインの和洋室が3部屋と和室が3部屋、それぞれバストイレ付が配されています。館内は木の質感を活かした造りで、純和風とういうのではなく、時折モダンな部分が顔を出す洒脱な空間になっています。

母屋の奥は右側が大浴場、左側が貸切の温泉棟があり、その間に源泉と温泉蒸し場があります。さらにその奥には離れ3棟。今回、離れで予約しています。案内されたのは、いちばん奥の離れ「朝明け」です。

コンドミニアム形式で、1階は和室と洗面所を兼ねたサンルーム、2階も和室で予め布団が敷かれています。贅沢なことに2階にもトイレがあります。

まずは眺めの良さに心躍ります。杖立川の流れが一望で流れの音も心地よい。この素晴らしいロケーションは何物にもかえがたい。

採光のいい大きな窓からはやわらかい光が差し込み、木肌の温もりと木の香りに包まれたスタイリッシュな空間が拡がる。余計な飾りは排除、インテリアなどもすっきりとさり気ない。シンプルに映るがモダンで洒落た造り。

お部屋のテレビは小さいが、こういう贅沢な空間ではむしろ無くてもいいぐらい。オーディオがあるので談話室からCDを借りてきて部屋で音楽三昧というのもいい。離れなので音漏れに気を使う必要もありません。

このお宿での食事は専用の個室でいただくことになります。夕食の時間になると、わざわざ若女将がお迎えに来てくださいました。料理の腕を振るうのは、京都で修行されたという七代目の若主人です。
料理の詳細は食べログで

ここは客室6室、離れ3室に対し、大浴場、貸切湯合わせて11ヶ所という、かなり温泉にこだわったお宿。メインの浴室は別棟となっており、「ゆ」と書かれた重厚な障子戸を開けて入る。入ってすぐのところが、男性専用浴室「殿の湯」です。脱衣所は浴室と一体式でだがやや狭い。宿泊客は外来入浴者用の玄関とは別の通路から脱衣所に直接入ることができます。

半露店状の屋内は岩風呂になっているとともに、1人用の石風呂が2つ並んだ「みようと風呂」も設えられています。この宿のお風呂はすべて掛け流し。浴槽に満たされている湯は澄明で、41~42℃くらいに調整されています。

泉質はナトリウム・塩化物泉。仄かな硫黄の香りとともに僅かに塩気が感じられる。なめらかなでマイルドな浴感なのは加水によるものでしょうか。湧出時の温度が98.3℃というからには、加水で調整するしかない。特徴的なのは、多くの浴槽にジャグジーの如く空気の吹き出しが備えてある。これも温度調整の一環かもしれません。

隣の「長寿霊泉」は野趣にあふれる混浴露天です。6畳ぐらいの石組み浴槽に、すぐ横にある米屋二号源泉から噴出してきたお湯が満たされています。周りには庭園のように多種の中・低木が植栽され、どこか幽玄さも感じさせる。3筋の打たせ湯からは勢いよくお湯が落ちていて、その飛沫がミストになって空間全体に靄がかかったようになっています。

長寿霊泉の横には小さな建物があり、これが古代伝承の「むし湯」です。98.5度の温泉の蒸気を使った、いわば湿式サウナ。三畳ほどの広さで4尺程度の浴室内に濛々と蒸気が籠っている。薪を枕に大の字で横たわると、10分もしないうちに汗が噴き出してきました。乾式のサウナは鼻が痛くなって苦手だが、湿式は喉や鼻にも優しい。

この宿の自慢は5つの貸切家族風呂と女性用露天風呂からなる「不老長屋」。一の湯から五の湯まである5つの貸切風呂は、各室は小さいながら屋根付きと露天の浴槽があって、そのうち140cmもの深さの「立ち湯」や岩を背にして寝ながら浸る「寝湯」など多彩。当初は全室制覇を目論んだが、あほらしくなって二つで止めました。

あほらしくなった理由は、離れのお部屋についている露天風呂が秀逸だったからです。杖立川の流れを眺めながら湯浴みのできるこの露天風呂には深さが二段になった長方形の浴槽と、大人二人がゆったり浸かることができる岩風呂露天。
当然ながら掛け流しで、源泉をそのまま流入させているとすぐに熱くなってくる。流量を調節してできるだけ濃厚なお湯に仕立てると、地球の息吹を感じるお湯になります。

静寂な環境の中での入浴は快適そのもの。さすが杖立て、湯量も泉質も申し分なし。肌にまとわりつくような無色の柔らかなお湯が惜しげもなく湯船から溢れだし、新鮮なお湯であることを改めて実感します。

この旅館の源泉は元湯なので他の温泉施設にも供給しているそう。温泉力を感じさせる魅力に溢れるお湯です。まだ若い7代目のご夫妻のさりげない気遣いがうれしい。この老舗宿には受け継がれてきたもてなしの心と古き良き情緒に溢れているようです。

場所:日田バス、産交バス・杖立BS
泉質:塩化物泉 約100℃
訪問日:2014年9月19日

旅館 山河(温泉)@黒川温泉

2014-10-31 11:48:51 | 温泉(熊本県)
 今や秘湯とは言えないほど超有名になってしまった黒川温泉のなかで、黒川の町並みから車で5分ほど走ったところ、一軒だけぽつんと佇む、「日本秘湯を守る会」のお宿です。


3,000坪という広大な敷地を持つこの旅館は、その敷地の大部分が雑木林となっていて、ほんの一部が木造2階建ての母屋となっており、その周りに離れ、露天湯などが点在。敷地内に小川が流れる実に贅沢な空間構成。雑木林といっても徹底的に手入れがされており、にもかかわらず自然な風合いを醸し出している。作為的なところを感じさせないのが見事です。

この旅館のお料理の詳細は食べログで。


ここの温泉は2か所の自家源泉と7か所のお風呂を持ち、豊富な湯量のお湯が掛け流されているとともに、茶褐色のお湯と青みがかった濁り湯の、2種類の自家源泉を満喫できる、泉質にこだわりのある向きには理想的ですね。

内湯の「薬師の湯」へは母屋からの連絡通路を通って行きます。平板な石を敷き詰めた床の中央に、岩風呂が設えられています。お湯は赤褐色。2本の源泉のうちの「薬師湯」と呼ばれているお湯が掛け流されています。


岩肌に赤褐色な析出物がこびりついていて、飲んでみると強い金気臭と僅かな硫化水素臭が感じられます。湧出の泉温は約49℃。これが薬効高いお湯だそうです。


内湯のすぐ横に源泉がありました。恭しく祀られた源泉から噴出しているお湯を舐めてみると金気臭が強い。内湯に注がれているのと同じ味です。


母屋の客室が並ぶところにある出入り口から外に出たところ、ここに露天湯が並んでいます。混浴露天風呂の「もやいの湯」は、この旅館で最も大きなお風呂です。

脱衣所は男女共同でやや小さめで、その脇には小さな湯口から飲泉用のお湯が流れています。


大きな浴槽に掛け流されているお湯はほぼ無臭で、僅かに青白く濁っている麗しい温泉です。ここはもうひとつの源泉、ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩温泉の2号源泉と薬師の湯との混合とのこと、2号源泉の泉温は約73℃ということなので、こちらは露天風呂に向いています。

周囲の自然と見事に溶け込んでいて爽快な気分で入浴できる。まったりとした浴感は、薬師の湯とは対照的。心が安らぎます。女性用露天風呂はこの混浴と同じぐらいの広さだそうです。


この旅館には、宿泊客のみ利用できる貸切風呂が3か所あり、その一番人気はこの「六尺桶の湯」だそうです。
6尺(約180㎝)の桶の中に、「もやいの湯」と同様、ブレンドされた湯が掛け流されています。


しかし浴感は「もやいの湯」とは異なって、柔らかくて癖がない。肌に馴染むようなマイルドな感覚です。渓流に隣接していて景色もいいし、風も気持ち良い。自然と一体となった素晴らしい雰囲気を醸し出しています。なお、ここは無料だが予約制となっていて、利用時間は1時間ぐらいとされています。


他の貸し切り風呂は内湯で、檜風呂と切石風呂のそれぞれの小屋が並んで建っています。どちらも3畳間ぐらいの浴槽に赤褐色のお湯が掛け流されています。ここは薬師の湯かな?口に含むと金気臭があり、ややキシキシした浴感。こちらの貸切は予約の必要がなく、空いていればフロントに鍵がぶら下げてあり、自由に利用するスタイルです。


しかし今回、いちばん値打ちがあると感じたのが部屋の内風呂です。東棟の2階、「吊り花」の部屋には、内湯に切石風呂が設置されています。5尺四方ほどの大きさで石組みの風呂を形作っており、粗く削った石の持つごつごつした手触りが野趣を感じさせています。


ここに赤褐色の湯の花が舞うお湯が満たされ、岩肌を黄土色に染めています。お湯は薬師の湯。金気臭を帯びた新鮮な温泉が贅沢にもかけ流され、溢れ出たお湯は川へ流れ去ってゆきます。窓を開けると半露天風。渓流のせせらぎが掛け流しの音とハーモニーを織り成すのも風流。木々によって減じられた外光の元、ゆったりとした湯浴みを満喫することができます。

もちろん寝てる間もお湯は四六時中掛け流されています。汗をかいたら浴衣を脱いで湯に浸かる。体が冷えてきたと感じたらまた浴衣を脱いで湯に浸かる。実に贅沢なことです。


この旅館、温泉街からは少し距離があるので温泉手形のお客さんが少ないのがいいですね。別に温泉手形を否定するわけではないが、どうせなら混雑は避けたいものです。その泉質もさることながら、純朴そうなスタッフの皆さんによる心あたたまるおもてなしも魅力のひとつです。


この旅館、黒川の中心街から離れているので、バス停までワゴン車で迎えに来てくれたり、お宿を辞す際、次の目的地の杖立温泉のお宿まで送ってくれたりと、至れり尽くせり。 いずれまた訪れたいお宿のひとつになりました。

・場所:九州横断バス・黒川温泉BS
・泉質:1号泉 単純硫黄泉 2号泉 ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩泉
・訪問日:2014年9月17日

地蔵湯@黒川温泉

2014-10-20 17:33:08 | 温泉(熊本県)
TVや旅行雑誌などで、そのしっとり落ち着いた温泉情緒が紹介され、今や日本屈指の有名温泉街となった黒川温泉。そんな黒川温泉においても、もちろん共同湯があって、特にここは地元の方々に愛され、守られています。

さまざまなお土産店、飲食店が並ぶ温泉街中心付近、使用済み温泉手形が祀られている地蔵堂の前から川の方に降りたところ。 外観はお寺のような造りの古い木造建築で、歴史を感じさせる重厚感はあるが、実態は飾り気のない庶民派の共同湯で、地元住民の利用が優先されるので、外来の利用時間は8時から19時までと限定されています。 料金は大人200円。子ども100円。長湯温泉や筋湯温泉でも見かけた回転扉を簡易にしたような関門があります。

上から見るとくの字状になった扉があって、100円を入れるとロックが外れ、一人だけ中に入ることができる。 中に入るともう一つ料金箱があって、大人はさらに100円を追加するシステムです。最初はよく解らなくて苦労しました。


脱衣所と浴室との間に仕切りのない九州でよく見かける構造で、脱衣の棚に鍵があるわけでもない。まさしく地元専用。見上げると天井から湯気が抜けるように設えられています。 二つ浴槽があり、湯口のある方が小さく下流はやや大きめで、小さい方はかなり熱くて入れない。温い方に浸かることにします。

お湯は無色で少々濁りのある印象、香りは弱い金気臭で穴湯に比べてマイルドな浴感です。大きい浴槽の方は樋を伝って源泉が流れ込むようになっていて、この段階で加水しているようです。

入館のシステムにやや難があるが、男女別々になっているので、女性にも入りやすいでしょう。入湯手形で露天風呂めぐりをするのもいいが、地元の方々に守られてきた温泉本来の情緒を味わいたいなら、こちらの方が断然いいと思います。

・場所:九州横断バス・黒川温泉BS
・泉質:単純硫黄泉
・訪問日:2014年9月18日


穴湯@黒川温泉

2014-10-17 22:27:43 | 温泉(熊本県)
熊本県の南小国町にある黒川温泉は、田の原川の渓谷の両側にそれぞれ趣のある24軒の旅館が建ち並ぶ温泉街で、TVや旅行雑誌などにも露出の多い、全国屈指の人気温泉地として有名です。この黒川温泉を有名にした要素のひとつとして「入湯手形」があります。

旅行者はこの手形を購入することにより、各旅館の露天風呂に3カ所まで選んで入浴することができるというシステムで、この黒川を嚆矢として、今や全国にも広がっています。

手形を持って温泉街をそぞろ歩くのがこの黒川温泉の風物詩となっているが、手形を購入せずとも温泉街には「地蔵湯」、と「穴湯」という2軒の共同浴場があり、素朴な温泉を楽しむことができます。

温泉街を流れる川の上流部、橋の袂にある階段を少し下がると、しっとりとした温泉街にはやや違和感のある廃墟のような湯小屋が現れます。軒先の料金箱に100円を入れて入口の扉を開けると、10人ぐらいがゆったりと浸かれそうな石組みの浴槽がひとつ。もちろん混浴です。

湯口からかけ流されているお湯は澄明だが、浴槽に満たされると赤茶色に見える。赤錆色の湯の花が舞っているとともに、この湯の花が底に堆積しているからでしょう。

なめてみたら無味ではあるが強い金気臭が感じられます。湯温は湯口の近くは適温で、離れるにしたがって温くなる。地元の方が常時温度管理なさっているんでしょうね。
1,300円で旅館の露天風呂3か所を訪れるのもいいが、共同湯なら200円の地蔵湯と合わせて300円で2か所も入れる。どちらがいいかは好みの問題だが、私は間違いなく共同湯がいいな。

実にプリミティブな共同湯。慣れない方には敷居が高いかもしれないが、ノスタルジックな雰囲気を味わうことができる…これぞ名泉です。

・場所:九州横断バス・黒川温泉BS
・泉質:単純硫黄泉
・訪問日:2014年9月18日

金波楼@日奈久温泉

2010-02-16 23:57:48 | 温泉(熊本県)

P1050946

日奈久温泉は八代市街地から10kmほど南、八代海を望む海辺にある温泉地です。室町時代に海の干潟で発見されて以来、連綿たる歴史を持つ九州の古湯。この温泉街に、ひときわ威厳を湛える建屋を持つ旅館が、創業が明治43年の金波楼です。今では貴重な木造3階建ての建屋や、まるで「千と千尋の神隠し」に出てくるような、独特の存在感を持った姿に魅せられ、この旅館に宿泊することに決めました。

P1050947

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正門から玄関に入ってまずびっくり!柱や梁、床や階段の手すりがピカピカに磨き上げられています。

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P1060031

館内を進むと桃山様式の庭園が絶妙な雰囲気を醸し出している。

P1050948

客室に案内されると、実に広く、襖や欄間も手の込んだものが設えられています。この建物、国の登録有形文化財に認定されているそうです。ワタシ、文化財に宿泊しているんですね。

P1050962

建物は古いが、温泉だけはリニューアルされていて、小奇麗になっています。お湯は単純泉で湯触りは柔らかい。澄明で無味無臭。残念ながら掛け流しと循環を併用していて、塩素投入ながら、この時期は世界一大きいとされる八代市名産の晩白柚(ばんぺいゆ)と大量の夏みかんが入っていて、そのいい香りでいい感じ。塩素臭をマスキングしています。

P1060026

露天は桃山様式の庭園に面していて実にいい景色が楽しめます。ここには晩白柚は入れられていないが塩素臭は気にならない。このお風呂、泉質は劣るが風情は超一流ですね。せめて一部のお風呂だけでも完全掛け流しにしてもらえたらなぁ…

P1050974

料理は別室でいただくのだが、はっきり言って見るべき所はありません。仕出し屋から運ばれているようで、全ての料理があらかじめ並べられています。

P1050990

名産の太刀魚の塩焼きは後から運ばれてくるのだが、これも水っぽくベチャベチャ。これなら大阪湾の太刀魚のほうがもっと旨い。

P1060033

朝食はまずまず。名産の竹輪を焼いていただけるのは嬉しいですね。

P1060012

この旅館、温泉や料理ははっきり言っていいとは言えないが、何よりもこの建物を維持し、恐ろしいほどに掃除に傾注していることに賛辞を惜しみません。こんな建物、火事でも出したら大変なことだから、いっそ全館を禁煙にする英断があってもいいんではないかな。それと、番頭さんやスタッフの接客にはプロ意識を感じるが、若い後継者に意気込みが感じられなかったのが残念なところ。伝統を持っている宿なのだが、それを最大限に活かす方法はいくらでもあると思います。

  • 泉質:弱アルカリ性単純泉 43.9度
  • 場所:肥薩おれんじ鉄道・日奈久温泉駅、九州産交バス・日奈久温泉
  • 訪問日:2010年1月28・29日
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金波楼 旅館 / 日奈久温泉駅
夜総合点★★★☆☆ 3.0


ばんぺい湯(八代市日奈久温泉センター)@日奈久温泉

2010-02-15 00:11:18 | 温泉(熊本県)

P1050941

肥薩おれんじ鉄道の日奈久温泉駅から南へ10分ほど歩いたところ、鄙びた…鄙びすぎた温泉街の中心に、昨年(2009年)オープンした共同湯がこの日奈久温泉センター(愛称ばんぺい湯)です。建物は真新しいが、この共同湯の歴史は古く、江戸時代に肥後細川藩の藩営温泉「御前湯」、明治から昭和にかけては「日奈久温泉本湯」、その後、昭和42年から「温泉センター」として多くの人に親しまれてきたとのこと。「ばんぺい湯」という愛称は、八代特産の晩白柚(ばんぺいゆ)にちなんでのことです。1階は地元食材の直売所と200円の公衆浴場、2階が500円のばんぺい湯(大浴場)と休憩所、簡易な食堂になっていて、地元の方は公衆浴場を使い、観光客はばんぺい湯に案内されるようになっています。違いは、サウナと露天風呂の有無ぐらいらしいです。

P1050942

かすかに硫黄の香りが漂うアルカリ泉、実に柔らかい湯触りですね。この時期は柚子湯ならぬ晩白柚湯が楽しめます。この温泉では掛け流しを標榜しているが、加温していて、しかも塩素投入です。大人数が入浴するので致し方ないが、それを、ギミックではあるが特産の晩白柚でカヴァーしている。ここは素直に賞賛しておきます。ここを訪れたとき、ワタシの温泉用カメラが故障したため内部の写真はありません。でもまあ混んでたので故障していなくても撮ることはできなかったと思いますが…

P1050945

この日奈久温泉、宿泊客は最盛期の10分の1まで減ってしまったそうです。街では観光客を取り戻そうと、この温泉に縁のある種田山頭火の俳句を記した木片をあちこちに吊るしたり、ボランティアによるガイドを行うなど、いろいろ手を打っているようです。しかし、駅から温泉街までは、車が多いのに歩道のない一ケタ国道を歩かないといけないのが最大の弱点ではないかな?

  • 泉質:弱アルカリ性単純泉 34.5~46.0度
  • 場所:肥薩おれんじ鉄道・日奈久温泉駅、九州産交バス・日奈久温泉
  • 訪問日:2010年1月28日
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