バスde温泉

バスで行く温泉旅日記

ゑびすや@木津温泉

2019-09-20 09:21:59 | 温泉(京都府)

京都丹後鉄道・夕日ヶ浦木津温泉駅からすぐのところ、木津温泉(きつおんせん)は京都府内でももっとも古い温泉です。今から1250年ほど昔、天平の飢饉で疫病が発生したとき、日本各地に開湯伝説を残している行基が人々にこの地に湧くお湯に浸かるよう説き、そのおかげで疫病の難から救われたといい伝えられています。


ここからそう遠くない場所、海岸近くにある夕日ヶ浦温泉は、その眺望とカニで人気のため、大規模な旅館が数件立っているのに比べ、この木津温泉には旅館が4軒しかありません。ここはそのひとつの老舗です。松本清張が長期に投宿し、「Dの複合」を執筆したことでも知られています。


新館にある大浴場には澄明なお湯が掛け流されています。匂いも味も感じられない淡白な浴感だが、アルカリ泉らしいしっとりとした肌触りが感じられます。


源泉温度が高くないので、冬場の加温は致し方ないが、それ以外の時期は自然の状態の新鮮なお湯を楽しめます。この大浴場には露天もあって、手入れの行き届いた庭園を眺めながらの入浴は格別です。


しかし、この旅館の値打ちは旧館にある貸し切り湯にあります。「ごんすけの湯」は小さな浴室だが、清らかなタイル貼りの浴槽に、天井にはステンドグラスが配されている。前期昭和のモダンが溢れています。


湯口からはほぼ適温の清澄で滑らかなお湯が掛け流されているが、熱くなりすぎたときにはもうひとつの湯口から冷泉を足し入れることができます。冷泉はライオンの口から流れ出てきます。


「しずかの湯」はさらに小さくなっていて、タイル張りやステンドグラスは同様だが、浴槽に浅い部分があって、寝っ転がりながら浸かることができる。これは気持ちいですね。有名な温泉評論家が「日本一の貸し切り湯」だと評価したのは納得でした。


この旅館、浴室だけでなくロビーやピアノのある休憩室にも昭和初期のロマンティシズムが漂っています。鉄筋コンクリート造りの新館に比べ、旧館は床がギシギシ軋むなど古さは否めないが、逆に雰囲気が抜群。

加えて料理もいいですね。


なるほど、松本清張が落ち着きすぎて2ヶ月も滞在してしまった理由が見えてきました。

・場所:京都丹後鉄道・木津温泉駅
・泉質:単純泉 40.2℃
・訪問日:2010年5月30日


油屋別館 和亭@奥伊根温泉

2018-04-17 18:34:00 | 温泉(京都府)
「京都」でイメージするのは神社仏閣や京料理、舞妓はんというのが一般的なところ。しかしこれらは洛中。もっと広域で見ると、天橋立、経ヶ岬、丹後松島、伊根の舟屋など日本海の注目スポットが多数。現在、これらを「海の京都」として積極的にアピールしています。

しかもここには今やブランドとなった間人のカニや若狭湾のグジ、サバ、ブリなど日本海や若狭湾の海の幸にも恵まれています。そんな「海の京都」の温泉と旨いもんを求め、丹後半島を訪れることにしました。 

京都丹後鉄道・宮津駅から丹海バスで1時間半ほど、舟屋で知られる伊根からもう少し北側の集落、津母で古くから旅館を営んでこられた「油屋」が運営する「和亭」は、全11室が掛け流しの露天風呂付客室という贅沢さ。せっかくの機会なので奮発しました。
 
エントランスを入ると広々としたレセプションホール、ロビーとなり、全て畳敷きなので、玄関で靴を預かってもらいます。チェックインをすますと、お部屋に案内される までの間、お茶(抹茶)とお菓子のサービスがあります。
 
案内された部屋は10帖と7.5帖の二間からなる和室で、窓からは日本海と若狭湾が一望。床の間には天橋立を描いた掛け軸が飾られ、和の趣を感じさせます。
 
縁側の前はこの部屋専用のお庭があり、ベンチに座ってのどかな春の海を眺めることができる…そしてその横にはこの旅館の白眉、丸い陶製の専用露天風呂です。
 
昭和62年から掘削を開始して、平成6年にようやく湧出したというお湯が掛け流されていて、澄明で匂いは無いが、僅かながらに味がある。泉質は炭酸水素塩泉で、湧出温度が低いので加温しているようです。
 
浸かってみると、少しぬるっとした独特の感触で、これは女性がうれしい「美肌の湯」。泉質自体は歴史ある温泉地にはさすがに及ばないが、一晩中、海を眺めながらの湯浴みが楽しめる…これは心安らぎます。
 
この旅館の3階には共同の大浴場もあり、大き目の内湯とともに海を望む露天風呂が設置されています。こちらも滞在中、昼夜を問わず湯浴みできるが、残念ながら循環式。泉質は部屋のお風呂の方がいい。

ここの料理も圧巻。料理の詳細は食べログで。
 
この旅館、まずロケーションが抜群。温泉も優れ、サービスの女性もにこやかで好感が持てる。なによりもその料理が圧巻です。丹後の恵みを最大限に活かした良質の旅館だと言えます。

・場所:丹海バス:六万部BS
・泉質:含鉄‐ナトリウム‐炭酸水素塩泉(低張性弱アルカリ性高温泉) 36.6℃
・訪問日:2018年4月17日