バスde温泉

バスで行く温泉旅日記

旅館 山河(温泉)@黒川温泉

2014-10-31 11:48:51 | 温泉(熊本県)
 今や秘湯とは言えないほど超有名になってしまった黒川温泉のなかで、黒川の町並みから車で5分ほど走ったところ、一軒だけぽつんと佇む、「日本秘湯を守る会」のお宿です。


3,000坪という広大な敷地を持つこの旅館は、その敷地の大部分が雑木林となっていて、ほんの一部が木造2階建ての母屋となっており、その周りに離れ、露天湯などが点在。敷地内に小川が流れる実に贅沢な空間構成。雑木林といっても徹底的に手入れがされており、にもかかわらず自然な風合いを醸し出している。作為的なところを感じさせないのが見事です。

この旅館のお料理の詳細は食べログで。


ここの温泉は2か所の自家源泉と7か所のお風呂を持ち、豊富な湯量のお湯が掛け流されているとともに、茶褐色のお湯と青みがかった濁り湯の、2種類の自家源泉を満喫できる、泉質にこだわりのある向きには理想的ですね。

内湯の「薬師の湯」へは母屋からの連絡通路を通って行きます。平板な石を敷き詰めた床の中央に、岩風呂が設えられています。お湯は赤褐色。2本の源泉のうちの「薬師湯」と呼ばれているお湯が掛け流されています。


岩肌に赤褐色な析出物がこびりついていて、飲んでみると強い金気臭と僅かな硫化水素臭が感じられます。湧出の泉温は約49℃。これが薬効高いお湯だそうです。


内湯のすぐ横に源泉がありました。恭しく祀られた源泉から噴出しているお湯を舐めてみると金気臭が強い。内湯に注がれているのと同じ味です。


母屋の客室が並ぶところにある出入り口から外に出たところ、ここに露天湯が並んでいます。混浴露天風呂の「もやいの湯」は、この旅館で最も大きなお風呂です。

脱衣所は男女共同でやや小さめで、その脇には小さな湯口から飲泉用のお湯が流れています。


大きな浴槽に掛け流されているお湯はほぼ無臭で、僅かに青白く濁っている麗しい温泉です。ここはもうひとつの源泉、ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩温泉の2号源泉と薬師の湯との混合とのこと、2号源泉の泉温は約73℃ということなので、こちらは露天風呂に向いています。

周囲の自然と見事に溶け込んでいて爽快な気分で入浴できる。まったりとした浴感は、薬師の湯とは対照的。心が安らぎます。女性用露天風呂はこの混浴と同じぐらいの広さだそうです。


この旅館には、宿泊客のみ利用できる貸切風呂が3か所あり、その一番人気はこの「六尺桶の湯」だそうです。
6尺(約180㎝)の桶の中に、「もやいの湯」と同様、ブレンドされた湯が掛け流されています。


しかし浴感は「もやいの湯」とは異なって、柔らかくて癖がない。肌に馴染むようなマイルドな感覚です。渓流に隣接していて景色もいいし、風も気持ち良い。自然と一体となった素晴らしい雰囲気を醸し出しています。なお、ここは無料だが予約制となっていて、利用時間は1時間ぐらいとされています。


他の貸し切り風呂は内湯で、檜風呂と切石風呂のそれぞれの小屋が並んで建っています。どちらも3畳間ぐらいの浴槽に赤褐色のお湯が掛け流されています。ここは薬師の湯かな?口に含むと金気臭があり、ややキシキシした浴感。こちらの貸切は予約の必要がなく、空いていればフロントに鍵がぶら下げてあり、自由に利用するスタイルです。


しかし今回、いちばん値打ちがあると感じたのが部屋の内風呂です。東棟の2階、「吊り花」の部屋には、内湯に切石風呂が設置されています。5尺四方ほどの大きさで石組みの風呂を形作っており、粗く削った石の持つごつごつした手触りが野趣を感じさせています。


ここに赤褐色の湯の花が舞うお湯が満たされ、岩肌を黄土色に染めています。お湯は薬師の湯。金気臭を帯びた新鮮な温泉が贅沢にもかけ流され、溢れ出たお湯は川へ流れ去ってゆきます。窓を開けると半露天風。渓流のせせらぎが掛け流しの音とハーモニーを織り成すのも風流。木々によって減じられた外光の元、ゆったりとした湯浴みを満喫することができます。

もちろん寝てる間もお湯は四六時中掛け流されています。汗をかいたら浴衣を脱いで湯に浸かる。体が冷えてきたと感じたらまた浴衣を脱いで湯に浸かる。実に贅沢なことです。


この旅館、温泉街からは少し距離があるので温泉手形のお客さんが少ないのがいいですね。別に温泉手形を否定するわけではないが、どうせなら混雑は避けたいものです。その泉質もさることながら、純朴そうなスタッフの皆さんによる心あたたまるおもてなしも魅力のひとつです。


この旅館、黒川の中心街から離れているので、バス停までワゴン車で迎えに来てくれたり、お宿を辞す際、次の目的地の杖立温泉のお宿まで送ってくれたりと、至れり尽くせり。 いずれまた訪れたいお宿のひとつになりました。

・場所:九州横断バス・黒川温泉BS
・泉質:1号泉 単純硫黄泉 2号泉 ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩泉
・訪問日:2014年9月17日

地蔵湯@黒川温泉

2014-10-20 17:33:08 | 温泉(熊本県)
TVや旅行雑誌などで、そのしっとり落ち着いた温泉情緒が紹介され、今や日本屈指の有名温泉街となった黒川温泉。そんな黒川温泉においても、もちろん共同湯があって、特にここは地元の方々に愛され、守られています。

さまざまなお土産店、飲食店が並ぶ温泉街中心付近、使用済み温泉手形が祀られている地蔵堂の前から川の方に降りたところ。 外観はお寺のような造りの古い木造建築で、歴史を感じさせる重厚感はあるが、実態は飾り気のない庶民派の共同湯で、地元住民の利用が優先されるので、外来の利用時間は8時から19時までと限定されています。 料金は大人200円。子ども100円。長湯温泉や筋湯温泉でも見かけた回転扉を簡易にしたような関門があります。

上から見るとくの字状になった扉があって、100円を入れるとロックが外れ、一人だけ中に入ることができる。 中に入るともう一つ料金箱があって、大人はさらに100円を追加するシステムです。最初はよく解らなくて苦労しました。


脱衣所と浴室との間に仕切りのない九州でよく見かける構造で、脱衣の棚に鍵があるわけでもない。まさしく地元専用。見上げると天井から湯気が抜けるように設えられています。 二つ浴槽があり、湯口のある方が小さく下流はやや大きめで、小さい方はかなり熱くて入れない。温い方に浸かることにします。

お湯は無色で少々濁りのある印象、香りは弱い金気臭で穴湯に比べてマイルドな浴感です。大きい浴槽の方は樋を伝って源泉が流れ込むようになっていて、この段階で加水しているようです。

入館のシステムにやや難があるが、男女別々になっているので、女性にも入りやすいでしょう。入湯手形で露天風呂めぐりをするのもいいが、地元の方々に守られてきた温泉本来の情緒を味わいたいなら、こちらの方が断然いいと思います。

・場所:九州横断バス・黒川温泉BS
・泉質:単純硫黄泉
・訪問日:2014年9月18日


穴湯@黒川温泉

2014-10-17 22:27:43 | 温泉(熊本県)
熊本県の南小国町にある黒川温泉は、田の原川の渓谷の両側にそれぞれ趣のある24軒の旅館が建ち並ぶ温泉街で、TVや旅行雑誌などにも露出の多い、全国屈指の人気温泉地として有名です。この黒川温泉を有名にした要素のひとつとして「入湯手形」があります。

旅行者はこの手形を購入することにより、各旅館の露天風呂に3カ所まで選んで入浴することができるというシステムで、この黒川を嚆矢として、今や全国にも広がっています。

手形を持って温泉街をそぞろ歩くのがこの黒川温泉の風物詩となっているが、手形を購入せずとも温泉街には「地蔵湯」、と「穴湯」という2軒の共同浴場があり、素朴な温泉を楽しむことができます。

温泉街を流れる川の上流部、橋の袂にある階段を少し下がると、しっとりとした温泉街にはやや違和感のある廃墟のような湯小屋が現れます。軒先の料金箱に100円を入れて入口の扉を開けると、10人ぐらいがゆったりと浸かれそうな石組みの浴槽がひとつ。もちろん混浴です。

湯口からかけ流されているお湯は澄明だが、浴槽に満たされると赤茶色に見える。赤錆色の湯の花が舞っているとともに、この湯の花が底に堆積しているからでしょう。

なめてみたら無味ではあるが強い金気臭が感じられます。湯温は湯口の近くは適温で、離れるにしたがって温くなる。地元の方が常時温度管理なさっているんでしょうね。
1,300円で旅館の露天風呂3か所を訪れるのもいいが、共同湯なら200円の地蔵湯と合わせて300円で2か所も入れる。どちらがいいかは好みの問題だが、私は間違いなく共同湯がいいな。

実にプリミティブな共同湯。慣れない方には敷居が高いかもしれないが、ノスタルジックな雰囲気を味わうことができる…これぞ名泉です。

・場所:九州横断バス・黒川温泉BS
・泉質:単純硫黄泉
・訪問日:2014年9月18日