バスde温泉

バスで行く温泉旅日記

界 加賀(旧:白銀屋)@山代温泉

2019-10-31 08:12:44 | 温泉(石川県)

加賀温泉駅からバスで20分ほどのところ、北陸で最大級の温泉・山代温泉です。北陸の温泉街で特徴的なのが、町の中心の「へそ」に当たる所に「総湯」と称する立派な共同湯があるのだが、この山代でも然り。


この総湯の目の前にある「界 加賀」は、経営不振に陥ったリゾート施設や旅館の再生で知られる星野リゾートが運営する宿で、以前は「白銀屋」という屋号で商っていた創業1624年というかなりの老舗。


加賀藩主・前田利常公や北大路魯山人といった歴史を彩った人物にも所縁があり、本館建物は有形文化財にも登録されている格式高いお宿です。


今回、ちょっと贅沢にこのお宿に泊まることに。チェックインを済ませて部屋に案内されました。玄関やラウンジや老舗ならではの風格とともに和風モダンなデザイン性が満ち溢れていますね。


この旅館では「デザイナーズ加賀モダン」と称する加賀建築の伝統色(紅殻、群青)と板張りの調和したスタイリッシュな新館客室と、「魯山人クラシック」と称する純和風の本館客室の2種類。当然本館の方を予約しています。せっかくの老舗旅館なんやからね。


しかし案内された2階のお部屋は清潔で広いものの、リニューアルの手が入っていて、老舗旅館の趣が希薄で、しかもお庭が見えないのが残念なところ。


それでも、客室の向かいにある、元はダイニングで今は立礼の茶室になっている「紅有也」なるお部屋でウェルカムドリンク的なお薄とお菓子がいただけるのはうれしいですね。


さすがは星のリゾート、料理は味だけでなく見せる工夫も凝らされています。

お風呂は二種類。本館にあるのは「吉祥の湯」。男女入替制で22:00までは女湯、翌11:30までは男湯となります。歴史ある建物の昔ながらのお風呂だけあって、脱衣所も浴室も、宿の規模からすれば狭いですね。湯槽には澄明で無味無臭のお湯が掛け流されています。


少しトロンとした浴感で、古代檜の一枚板による質感とともに、しっとりとした感覚を味わうことができます。これはいわゆる美肌の湯かな?


山代温泉の湯宿の特徴として、かなり昔からに松ノ木をくりぬいた配湯管で総湯から湯をひいた「内湯」があったことです。総湯をぐるりと囲むように老舗旅館が建ち並んでいるのは、当時、遠くにまで配湯できかった名残なんですね。


界加賀は、その貴重な源泉を引く「湯の曲輪」と呼ばれる数少ない湯宿です。宿の規模が大きくないので湯槽も小さく、そのため貴重な源泉を掛け流すことができるようです。


新館にある「大浴場 尚武の湯」にはやや広めの内湯とともに、苔むした壷庭付きの露天湯があります。こちらは15:00~22:00が男湯、22:00~翌11:30が女湯になります。こちらは新しい施設だけに吉祥の湯より広くて開放的だが、しっとり感は薄いような気がします。


全体に女性に好まれるようなイメージ創りを実践している「界」では、利用客も女性が大多数。なので温泉も女性優先のようですね。でもまあ狭い男湯でも混雑することは無いので仕方ないか。

・場所:加賀温泉バス・山代温泉BS
・泉質:低張性・弱アルカリ性高温泉 64.3度
・訪問日:2014年1月19日


古総湯@山代温泉

2019-10-30 09:56:56 | 温泉(石川県)
大袈裟な言い方かもしれないが、温泉は生命を育むための地球が生み出した恵みです。この日本は温泉に恵まれた故、古来よりそこに生命が宿るとともに、動物や人が集まり、その源泉を中心に街を形成し、そして独自の温泉文化を創り出してきました。


関西から特急サンダーバードで約2時間、そして加賀温泉駅からさらに路線バスで30分ほどのところ。1300年の歴史を誇る山代温泉は、加賀温泉郷の一角を占め、和倉、山中、片山津と並ぶ県下有数の温泉です。


ここでは温泉街の真ん中に総湯と呼ばれる共同浴場が建ち、それを中心にして旅館や商店が立ち並ぶ「湯の曲輪」という街並みが形成されてきた様を目の当たりにすることができます。


そしてここでは、多くの文人墨客を集める独自の文化を育んできました。大きな旅館が立ち並ぶなか、ところどころ雰囲気のいいお店や、和装のきれいどころの女性がそぞろ歩くなど、しっとりとした温泉情緒に満ち溢れています。


この山代温泉では、バブル崩壊以降の不況や世の中のニーズの変化によって、宿泊客が急減し、最盛期には50軒以上を数えた宿泊施設はほぼ半減してしまいました。そこで、歓楽温泉のイメージを脱却し、総湯を核として歴史的価値を重点に置いた振興を施そうとしています。


その序章が伝統的な造りの建屋に茶店や加賀特産品のショップを配した交流スペース「はづちを楽堂」の整備。次に老朽化した旧総湯の移設。


そして最終章として、旧総湯があった位置に明治代の総湯を復元し、外観や内装だけでなく、入浴しながら温泉の歴史や文化が楽しめる「体験型温泉博物館」として2009年にオープンしたのがこの「古総湯」です。


木造2層の建物は、上層が釉薬瓦葺き、下層がこけら葺きの、金閣寺のようなシルエットで、ところどころにステンドグラスの色彩が施された白木の美しい華やかな造り。新しくて綺麗ではあるが、風格を得るにはこれから数年はかかるでしょう。


オープンと同時、早朝6時過ぎに訪問。あわただしく雪かきをしていた係の女性に入浴したい旨を伝えると、丁寧にも入り口まで案内し、さらに浴場についての説明とともに、脱衣籠を貸してくれたり、靴下が濡れないよう気遣ってくれたり…かなり親切。


しかもこの日の一番湯なので特典のお札をくださったり…意外なプレゼントはうれしいですね。


浴場には独立した脱衣室はなく、湯槽の脇に脱衣棚が設けられているプリミティブなスタイル。これは別府温泉の共同湯でもこんなのでした。荷物棚は鍵が無いので貴重品がある場合は浴場に入る前に、入り口近くの貴重品ロッカーに預けておく必要があります。


浴場の真ん中に凝灰岩でできた長方形の湯槽がひとつ、その手前に白いタイルで囲われたかけ湯枡に源泉が投入され、そこから湯槽に流れ込むようになっています。源泉だけに、このかけ湯枡は熱すぎて使えません。


また、お湯や水のカランは無く、ましてや混合水栓のシャワーなんかもありません。ここはあくまでも古の湯浴みを体感するところ、なのでシャンプーや石鹸は禁止です。


お湯はやや熱めなのは一番湯だからかな?澄明で匂いも味も感じない淡白なお湯です。山代温泉新1号源泉は源泉のところでいったんタンクに貯められてるので、若干の劣化があるようです。源泉の足湯では濃厚なお湯だったんやが…


ゆったりお湯を味わった後は、上階の休憩室でほっこりすることができます。無料のお茶をいただきながら、総湯の周りの風景を楽しむことができるかと…残念ながらこの時間はまだ真っ暗でした。


山代の起爆剤となろうこの温泉、あと数年たって風格が備わってくれば、道後の温泉にも負けない名所になるかもしれませんね。

・場所:加賀温泉バス・山代温泉BS
・泉質:ナトリウム・カルシウム‐硫酸塩泉 低張性・弱アルカリ性高温泉 64.3度
・訪問日:2014年1月19日

汀邸 遠音近音(オチコチ)@鞆の浦温泉

2019-10-22 18:15:18 | 温泉(広島県)
山陽本線・福山駅からトモテツバスで約30分、終点の鞆港BSでバスを降りると、そのあたりは雁木のある古い港と江戸時代の面影を残す建物が点在する鞆の浦です。


鞆の浦は、沿岸航海が主流の時代には、潮流が変わるこの鞆の浦が瀬戸内海を横断する舟の拠点で、鞆港が潮待ちの港として賑わいました。


そのため、ここには古い町並みが残り、1992年には都市景観100選に、2007年には美しい日本の歴史的風土100選に、2017年には「福山市鞆町伝統的建造物群保存地区」の名称で重要伝統的建造物群保存地区として選定されました。


宮崎駿がここに滞在して「崖の上のポニョ」の着想を得たというのは有名な話だが、宮城道雄が光を失う前、目に焼き付いていた海の情景がこの鞆の浦で、そのイメージから生まれたのが箏曲『春の海』だったのはあまり知られていません。


今回、この鞆の浦の、仙人も酔ってしまうほど美しいことから名づけられた仙酔島や、島内に弁天堂が建てられている弁天島を真正面に望む旅館に宿泊することにしました。


トモテツバスの終着点のあるバス通りから狭い路地に入り込んだところ、文人墨客に愛された「遠音近音」の前身、「宿屋籠藤」の木造本瓦葦べんがら塗りの建築物を再生したエントランスが現れます。


エントランスからは庭園を横切る渡り廊下を抜け、本館に入ります。本館にはレセプションとともに海の見えるロビーラウンジがあり、そこでお茶とお菓子をいただきながらチェックインを済ませます。


全室が部屋付き温泉露天風呂を備えるこのお宿、その中でも最上級のアッパースイートルームが今夜のお部屋です。


シーサイドデッキを含めて80㎡を越す広さを持つこの客室には、リビング、ベッドルーム、そしてウッドデッキには仙酔島が一望の露天風呂が備えられています。


リビングには大画面のTVとロッキングチェア、重たそうな大テーブルが据えられ、天井からは多数の照明器具がぶら下がっています。化粧室にはフェラガモ社製のアメニティが用意され、質感を高めています。


部屋付き露天風呂にはスライド式の鎧戸があり、これを開けると鞆の海と島々、行き交う船を眺めることができます。浴槽には澄明のお湯が満たされ、自動で適温に保たれています。


これとは別に、最上階にふたつの貸切専用の大浴場があります。ここも仙酔島を見渡せる眺望を持ち、のびのびと足を伸ばして入浴を楽しむことができます。ふたつの浴場を男女別としていないところが贅沢ですね。


泉質は放射能を含む単純線で、味も匂いもない淡白なお湯。しっとりとした浴感があり肌にも優しそうです。冷鉱線なので加温は必須。なので、放射能泉としての効能は期待できません。


こちらの料理は独自な発想でモダンな日本料理の姿を見せてくれます。

この旅館ではユニークなサービスがあります。各客室に手挽きのコーヒーミルと豆が置いてあり、挽きたてのコーヒーを味わうことができるのです。

コーヒーは深いコクが特徴の「潮待ちの港ブレンド」なるオリジナルブレンドで、また、抽出した残りかすを部屋に置いておくと芳香が漂うだけでなく、消臭効果を得られるという副産物もあります。


朝、東の空が赤みを帯びてきたころに起きだし、海の景色を眺めることにしました。さざ波を打つ海面と島並みに徐々に色彩が加わってくるとともに、時折、漁に出る漁船がエンジン音を響かせる…


モーニングコーヒーを飲みながら、またはお湯に浸かりながらこの長閑な情景を眺めることができるのは、最高の贅沢かもしれません。

「guntû」@瀬戸内海

2019-10-19 10:29:49 | 乗り物(船舶)
「guntû(ガンツウ)」は、「せとうちに浮かぶ小さな宿」をコンセプトに、中四国の瀬戸内海沿岸における景勝地を錨泊しながら周遊する宿泊型の客船です。尾道市にあるベラビスタマリーナを母港として2017年10月17日に就航しました。 


体は全長:81.2m・全幅:13.75m・総トン数:3,200t。船のデザインは建築家の堀部安嗣氏で、屋根瓦のある瀬戸内の風景に溶け込むような三角屋根と、海の色にあわせて変化するシルバーの船体が特徴です。


客室は4タイプで19部屋、乗客数は最大38名。世界遺産の宮島やモダンアートで知られる直島など、瀬戸内海を巡るさまざまな航路を2泊3日、または3泊4日をかけて10ノットの巡航速度で周遊します。


今回、妻殿と一生の思い出に残る旅を…ということで、この「guntû」に乗船してみることにしました。2019年秋のツアーがリリースされた半年前、清水の舞台から飛び降りる気持ちでなけなしの貯金をはたき、待望のこの日を迎えることができました。


今回、申し込んでいた航路は1泊目は宮島沖、2泊目は大三島沖に錨泊する2泊3日のプラン。2019年10月6日の出港です。


山陽新幹線・福山駅からお迎えの車でベラビスタマリーナに着くと、アテンダントの女性がエントランスで待っていてくださいました。専用のラウンジでチェックインの手続きとともに飲み物やお菓子のサービスがあります。


目の前のマリーナの奥に、建物が海の上に浮かんでいるようなユニークなデザインの「guntû」が佇んでいました。常石造船で建造中の巨大な貨物船と並ぶと「guntû」は小舟。それらの船影を眺めながらシャンパンは美味い。


乗船時間になると電動カートで桟橋へ。右舷から乗り込むと登場スタッフのお出迎えがあり、担当の案内で船室へ。私たちの部屋はスタンダードな「テラススイート」ながら、海に面したテラスやバスルーム、小さいながらもリビングもあります。


なお、最高級の部屋は操舵室の真上、船首の前方を独占するにある「ザ ガンツウスイート」で、その次が「グランドスイート」。どちらも露天風呂が付いていて、部屋もかなり広く取られているとのこと。


部屋に届けられていた荷物を整理していると、いつの間にか少しずつ桟橋から離れています。エンジン音も揺れもしないので全然気づきませんでした。港を出たところで長声一発!いざ出航です。


船内は3層になっていて、最上部のDECK3にはメインダイニング、寿司カウンター、カフェバー、ラウンジなど。中間のDECK2に最高級の「ザ ガンツウスイート」を含む客室、ジム、エステ、サウナ付き大浴場。そして下層のDECK1には乗船口とともに「テラススイート」が並んでいます。


また、DECK1の先端は操舵室があり、後部は寄港先での上陸時に使用するテンダーボート2隻を搭載するACTIVITY DECKとなっています。そしてその下は機関室・乗組員区画とのこと。


出港してから30分ほど、DECK3の左舷にある「縁側」に寝そべりながらシャンパンとカナッペをいただいていると、尾道水道に差し掛かりました。「guntû」の右舷に尾道市街が迫ってきて、こちらに手を振る人々の表情まで見えてきました。


「guntû」での食事は「お好きなものを、お好きなときに、お好きなだけ」がテーマ。メインダイニングは東京都原宿の老舗割烹「重よし」の佐藤憲三氏が監修で、瀬戸内の新鮮な食材をふんだんに使用し、手の込んだ料理を提供しています。


さらに炭焼き台が設けられ、選んだ魚介やお肉、野菜をグリルしてくれるほか、和食だけでなく洋食やスイーツも楽しめます。もちろんワインや日本酒などのストックも多彩です。


メインダイニングの一角には6席だけの小さな鮨カウンターがあり、2名の職人が待ち構えています。こちらは淡路島「瓦(のぶ)」の坂本瓦生氏の監修で、獲れたての海の幸をネタにしつつ、アイディアあふれる握りの姿を見せてくれます。


食後は前方のカフェバーでグラスを傾けます。スコッチやバーボン、ジャパニーズなどの各種ウイスキーやシェリー・ベルモットなどが用意されているほか、瀬戸内海をイメージしたオリジナルカクテルもいただけます。


気候が良ければ前方のデッキや左舷の縁側で過ごすことも可能。街の灯を眺めながら杯を重ねるのは気分も高まります。多少飲みすぎたところで、エレベーターで下に降りれば部屋にすぐ戻れるのもいいですね。


部屋に戻ればフルーツが用意されていました。この日は岡山のシャインマスカット。小型のワインセラーにはハーフの高級ワインなどがストックされているので、リビングでさらにグラスを傾けます。


「guntû」の素晴らしい料理の詳細は食べログで。

テラスの一角にバスルームがあり、もちろんオーシャンビュー。コックをひねればすぐに適温のお湯が出てくるし、質の高いアメニティーも充実しています。とても船の中とは思えません。


TVが設置されていないのもいいですね。せっかくの非日常を楽しむにはTVはむしろ害悪です。代わりにi-padがあって、音楽や映画を楽しむことができるが、使用が集中する時間帯ではWi-hiが不安定。これについては改善が必要だと思います。


「guntû」では様々なアクティビティー(船外活動)が用意されています。今回の航路の翌早朝、宮島の厳島神社周辺で早朝散歩を楽しみました。参加者はDECK1の乗船口に集合してライフジャケットを装着、「guntû」に2艇搭載されたテンダーボートに乗り込んで宮島に上陸します。


テンダーボートに乗り移るには「guntû」に設置されている桟橋を利用します。この桟橋が非常によく出来ていて、安全に乗り移れるだけでなく、水上飛行機も横付けできるとのこと。


「guntû」の朝食もメインダイニングで用意されます。和・洋のプリフィックスのメニューから選ぶことになるが、それ以外でも食材さえあれば希望を叶えてくれることも。
ビュッフェコーナーには瑞々しい野菜とともに多種類のドレッシング、ジュース、ヨーグルト、シリアル、チーズ、フルーツが取りそろえられています。


DECK3の最後尾は「和」をイメージしたカーペット敷きのラウンジとなっています。ここでは靴を脱いで座敷感覚で寛ぐことができるとともに、立礼による本格的なお茶席が設えられています。


ここでいただける茶菓子は奈良「樫舎(かしや)」の喜多誠一郎氏監修による本格的な和菓子です。和菓子職人が目の前で作ってくれる乾菓子や最中をお茶とともにいただくと、心穏やかにさせてくれます。


この「guntû」はディーゼルエンジンで発電し、モーターによってプロペラを回す電気推進です。潜水艦みたいですね。そのおかげで音も静かで振動も少ない。さらに船特有の重油の臭いも気になりません。


波穏やかな瀬戸内を滑るように進んでいるうち、遠くのほうにベラビスタマリーナが見えてきました。マリーナから水上飛行機が飛び立とうとしています。夢のような2泊3日も終わりに近づいてきました。スタッフが部屋に訪ねてきてチェックアウトと荷物発送の手続きをします。


揺れもなく静かに桟橋に接岸しました。いよいよ豪華な船旅のフィナーレです。桟橋には乗客を福山駅や広島空港に送るリムジンが待機しています。下船口には「guntû」の大多数のスタッフがお見送りに集まっていました。


乗客は方面ごとに順次呼び出され、リムジンが走り去っていきます。私たちの番が来てリムジンに乗り込みました。静かにリムジンが出発、操舵室の外にキャプテンが立ち、私たちを見送ってくださいました。


この夢のような船の旅、気になるのはその料金です。部屋のグレードによって変わるが、基本的に1泊40万円~100万円(1室を2名利用の場合)。今回は2泊の航路なので、いちばん安いグレードの私たちは80万円の支払いです。


乗船中の食事や通常のサービスはすべて含まれているので、積まれているごく一部の高級ワインを飲んだり、ショップでの購入、エステの利用が無ければ追加料金はありません。


なのでこれを高いととるか安いととるかはその人の考え方次第でしょう。煌びやかな豪華さは無いが、新鮮な食材に囲まれて、スマートな空間で気の利いたサービスを受けることができるのなら、決して高くは無いでしょう。


穏やかな瀬戸内の洋上で過ごす極上の船旅。これは一生の思い出に残ることに違いありません。


みくりが池温泉@地獄谷温泉

2019-10-19 08:37:56 | 温泉(富山県)

立山黒部アルペンルートの最高峰、富山側からは富山地鉄、立山ケーブルカー、立山高原バスを乗りついでたどり着く室堂駅。ここは駅とされるようにトロリーバスの終着駅です。


トロリーバスは正式には無軌条電車ということで、一応鉄道の分類に入るんですね。なのでここは日本一高いところにある駅といえます。


室堂駅から10分ほど歩いたところ、みくりが池の傍の地獄谷を見下ろす位置に建っているのがみくりが池温泉です。「みくりが池温泉」というのは温泉名ではなく、この名称は旅館を含む温泉施設自体を指しています。


源泉は日本最高所の源泉地帯(標高2,300m)である地獄谷温泉で、ここからの引き湯。とはいえ、地獄谷温泉自体は火山性ガスの危険があるため温泉施設を設営できないので、ここが地獄谷温泉といっても間違いではないでしょう。


看板に記されているように、日本で最も標高の高い位置にある温泉とのこと。自然に湧き出している、いわゆる野湯ではもっと高い位置にあるところもあるだろうが、温泉旅館としては、ここの2410mがいちばん高いそうです。


浴槽には白く濁ったお湯が掛け流されています。よく見ると細かい気泡がいっぱい。これによって白く色づいているのでしょう。硫黄臭するこのお湯を舐めてみると酸っぱい、酸性のようです。雲仙のお湯とよく似ているかな。


外はガスっていて景色は見えないが、おそらく地獄谷が見渡せるのでしょうね。展望露天など、洒落た設備はないが、冬季には休業してしまう一種の山小屋なんだから当然といえば当然。こんな高地で上質の湯浴みを楽しめる…これこそ贅沢な温泉だといえるでしょう。

・場所:立山黒部貫光立山トンネルトロリーバス・室堂駅、立山高原バス・室堂BT
・泉質:単純硫黄泉 90度
・訪問日:2007年9月14日


名剣温泉旅館@名剣温泉

2019-10-17 01:14:01 | 温泉(富山県)

宇奈月から黒部峡谷鉄道のトロッコに揺られること1時間20分。終点の欅平駅を降り、黒部川の支流に沿って15分ほど歩いたところにある渓谷の一軒宿です。


日本秘湯を守る会の提灯が揺れているこの旅館は、黒部峡谷温泉郷を代表する名湯です。日本秘湯を守る会の会員旅館には「どこが秘湯やねん」っとツッコミたくなるような街中の旅館もあるが、ここは掛け値なし。紛れもない秘湯です。


帳場で荷物を預かってもらい、早速お風呂へ。ここでも山肌にへばり付いた、建築足場みたいな通路を通って待望の秘湯へ。葦簾に囲われているのがこの旅館の露天風呂です。


硫黄の臭いが実に芳しい露天風呂では、やや白濁したお湯が掛け流されています。源泉は上流の祖母谷温泉からの引湯で、ここに至るまでに湯温は約80℃まで下がっているものの、それでも熱いので加水は致し方ないところ。


お湯の色や匂い、横を流れる清流など、十津川の湯泉地温泉を想起する極上の温泉です。ここには宿泊者専用の内湯もあるとのこと。ぜひ宿泊してこの極上湯にふやける程に浸ってみたいと思いました。

・場所:黒部峡谷鉄道・欅平駅
・泉質:単純硫黄泉 98℃
・訪問日:2007年9月15日


湯元榊原館@榊原温泉

2019-10-15 19:22:08 | 温泉(三重県)

大阪から近鉄特急で1時間少しのところ、榊原温泉口駅には榊原温泉の各旅館の送迎バスが集まってきています。ここから10分ほど送迎バスに揺られると、のどかな田園地帯に小さな温泉街が現れます。


榊原温泉は、七栗の湯とも言われ、「枕草子」第117段に「湯はななくりの湯、有馬の湯、玉造の湯」とうたわれている「三名泉」のひとつです。なにぶん山の中のこと、この温泉街には歓楽的要素は一切ありません。

ここは平安時代には既に湯治場が形成され、江戸時代には伊勢参詣客が神社の参拝前にこの七栗の湯で斎戒沐浴するのがしきたりとなり、垢離場として大いに賑わったと言われています。


そんな歴史ある小さな温泉街の中に、巨大な建物による威容を誇っているのが、この温泉の湯元である「湯元榊原館」です。


榊原温泉では最大規模の全56室、2019年で創業100周年という歴史と格式を誇るこの旅館は、大小さまざまな客室とプランを用意する、エコノミーからラグジュアリーまで、オールマイティなお宿です。


1階の大浴場では、浴室に芳しい温泉の匂いが漂っており、湧泉地には祠が建ち、大きな浴槽の真ん中からお湯がコンコンと湧いています。この大浴槽は加温され、普段は透明なお湯なのだが、この日は地震の影響で少し白濁していました。


この浴場の隅っこに小さな浴槽があって、これがこの旅館の白眉、源泉浴槽です。僅かに硫黄臭のある湯はぬるぬるしている、いわゆる美人の湯系な感じです。源泉のお湯はかなり温く、冬場は辛いが、加温の浴槽と交互に入ってたら風邪を引くこともないでしょう。


このお湯の良さを知る大勢の日帰り入浴のお客さんが、加温浴槽には目もくれず、こちらに集まってきます。じっくり浸かりたいなら宿泊したほうがいいですね。


この旅館には屋上にも宿泊者専用の露天風呂があります。たいがい屋上にある温泉は、ポンプで汲み上げる必要があるので循環泉なのだが、ここも例外ではありません。


屋外なので塩素臭は気にならないが、お湯はキシキシした感触でいただけない。この露天のためにわざわざ宿泊する必要はありません。

・場所:三重交通バス・湯元榊原館前BS
・泉質:弱アルカリ性単純泉 37℃
・訪問日:2007年4月15日


木屋旅館@三朝温泉

2019-10-06 07:35:44 | 温泉(鳥取県)

JR山陰本線・倉吉駅より、日ノ丸バスで20~25分ぐらいのところ。三朝温泉は平安時代末期の1164年に発見されたという歴史ある温泉で、2017年現在、年間入湯客数は鳥取県内では皆生温泉に次ぐ2位とされる著名な温泉地です。


三朝温泉の特徴は何と言ってもその泉質にあります。ラジウム・ラドンが含まれる世界でも有数の放射能泉だからです。そのため、温泉療法を実施する病院や研究施設も立地するほか、長期滞在者向けの旅館や自炊宿も見られる「現代湯治」の顔も見せています。


三徳川に架かる三朝橋周辺の両岸には大規模な旅館が立ち並ぶいっぽう、石畳が敷かれた温泉本通りには、小規模な旅館や飲食店、古美術店、スナック、土産物屋、射的場などが並んでおり、温泉情緒を漂わせています。この木屋旅館は温泉本通りにある、三朝では小規模は部類の老舗旅館です。


通された部屋は和室で実に狭く、あまりの期待はずれに一気にテンションが下がってしまったが、何気なく部屋を見回してみると扉がある。その奥にはなんと小洒落たツインルームがでてきました!


部屋をじっくり見てみれば、調度も高級品っぽいし、真っ白な大襖は技のある表具師でしか平面に貼れない太鼓貼り。老舗のこだわりが感じられます。



料理も季節感あふれる品の数々が並びます。

ここの温泉はすべて自家源泉で、大浴場のほか、大小の貸切風呂があります。河鹿の湯(女性)・河瀬の湯(男性)と名づけられた大浴場は一部が浅くなっていて浴槽の縁を枕に横たわることができます。温度調整のため加水はあるが、もちろん掛け流しです。


そしてここの白眉は楽泉の湯と称する足元湧出のお風呂。宿泊者のみが利用できる貸しきり湯です。浴槽の底にさらに湯壷があって、敷石が渡されている。この湯壷に源泉がじわじわ湧いていて浴槽の湯を満たしています。


このお湯、横を流れる三徳川の水位が上がると湯船の湯面も上がり水位が下がると湯面の下がる…仕組みはよくわからないがサイフォンの原理なのかな?敷石の隙間から地中から生まれたそのままのラジウムがポコポコと気泡になって現れます。これは実に貴重で、深呼吸すべきです。


浴室の石の床が源泉の熱によって暖められてオンドルのようになっているが、天井に煙突状の湯気抜きがこしらえられていて湯気がこもることはありません。


温度調整のためにホースから水を引いているが、放射能泉の場合は加水によっても成分が薄まることが無いし、下手に熱交換器を使用したらせっかくのラジウムが飛んでしまう。ここでは放射能泉の特質を見事に活かしてますね。

浴室の一角には小さい湯壷があって、これは飲泉用。柄杓ですくって枡でいただくのだが、株湯の飲泉では甘みを感じたが、こちらは熱く、しかもピリピリします。


この楽泉の湯は一晩中入ることができるので、早朝なら他の宿泊客に気遣うことなく長湯を楽しめます。これぞ宿泊者の特権です。

・泉質:単純放射能泉・75度
・場所:日ノ丸自動車・三朝温泉BS
・訪問日:2008年9月17日


ゆかむり温泉@岩井温泉

2019-10-06 07:34:43 | 温泉(鳥取県)

山陰本線・岩美駅より日交バスで10分程のところ、1300年の歴史があるとされる岩井温泉は、平安時代の「八古湯」の一つに数えられる歴史ある温泉です。


この温泉街のメインストリートは旧国道9号線。今はバイパスの開通によって、この道を通り抜ける車も少ないし、歩く人もほとんどいません。


かといって決してゴーストタウンではなく、人の息遣いは感じられるまさしく閑静な温泉地。3軒しかない旅館はそれぞれが老舗で、実に落ち着いた佇まいが魅力的です。


この町の中心に、建て替えられて真新しい共同湯があります。湯に浸かりながら柄杓で温泉を頭からかぶるこの温泉の奇習「ゆかむり」に因んで「ゆかむり温泉」と名付けられています。館内は新しい施設らしくバリアフリー化され、清掃も行き届いていて気持ちいい。

ゆかむり温泉HPより

丸いやや深い浴槽に透明のお湯が掛け流され、舐めてみると臭いはないものの少し苦いかな。今では地元の人たちも湯をかぶることも、ゆかむり唄を謡うこともは無いようです。


それでも、壁にタイル画で「ゆかむり」をしている人が描かれているのと、時折ゆかむり唄のBGMが流れ、当時の情緒を演出しています。


その昔、ここは軽便鉄道も開通する程の賑わった温泉地だったとののこと。この鉄道は昭和9年の大火や室戸台風の被害によって廃止され、以後は小さな温泉地となっていました。


戦後、自動車の時代には国道9号線の宿場街として再び賑わったが、バイパスが開通した現在、またしても静かな温泉街となりました。ゆかむり温泉のスタッフの話では、昔はこの街道にどんぐりの木の並木があったとのこと。


車の往来が少なくなった今、もう一度どんぐりを植えてみたら如何かな?どんぐりの木陰に佇むボンネットバス(不定期運転)…実に絵になる光景だと思うのだが。

・場所:日本交通・岩井温泉BS
・泉質:カルシウム・ナトリウム‐硫酸塩泉 47~50度
・訪問日:2008年6月24日


岩井屋@岩井温泉

2019-10-04 17:41:30 | 温泉(鳥取県)

山陰本線・岩美駅より日交バスで10分程のところ、1300年の歴史があるとされる岩井温泉は、平安時代の「八古湯」の一つに数えられる歴史ある温泉です。


江戸時代半ばには16軒の旅籠が並び、藩主専用のものも含めて8箇所の温泉がありました。山陰と京都を結ぶ街道の沿いにあるため、温泉としてだけでなく、街道の宿場町としても栄えたようです。


明治末期に鉄道が通じると京阪神方面からの観光客が訪れるようになったが、鉄道ルートから外れていたため、大正時代に最寄り駅から軽便鉄道を敷設して客を運んだが、戦局の悪化により休止、その後再開されることはなく廃線となりました。


岩井温泉を有名にしたのは、「湯かむり」という独特の入浴法が伝わっていることです。これは湯治の際に手ぬぐいを頭に被り、専用の柄杓で湯を叩きながら「湯かむり唄」を吟じながら頭に湯をかぶるという奇習です。

ゆかむり温泉HPより

現在、閑静な温泉街の岩井温泉には「岩井屋」「明石屋」「花屋」のたった3軒しか旅館はありません。しかしそのどれもが温泉情緒を感じさせるしっとりとした小旅館です。今回はこのうちの「岩井屋」に宿泊することにしました。


建物は古めかしいが矍鑠とした館のある木造三階建ての立派なもの。他の旅館も同様の品のある造りで、これらが街の景観を風情あるものにしています。


館内は床が全面畳敷になっていて、スリッパの必要がありません。調度や絵画、生け花が主張しすぎない程度に配置され実に上品。お香がほのかに香っています。渡り廊下の両側には日本庭園。時折り池の鯉がチャプンと跳ねる…これぞ日本旅館の様式美やなあ…

この旅館の上品なお料理の数々はこちら。


この中庭を渡ったところに、この温泉街が決して紛い物ではないことを体現する、実に豊かなお湯があります。この時間帯の男湯は「祝いの湯」。浴室に入ると左手に洗い場、右手に坪庭が設えられています。この坪庭では時おり鹿威しがカコーンっと鳴る。環境音でも楽しもうという趣向。


この内湯の浴槽はひとつだけ。艶やかな御影石の縁のある浴槽の中には澄明なお湯が掛け流されています。匂いは希薄だが舐めてみるとやや苦い。浴槽の中央部はかなり深くなっていてその底はスノコ。このスノコの隙間から時おりプクプクとあぶくが湧いてきます。貴重な足下湧出を実感できます。


新鮮なお湯のこと湯口から柄杓で飲泉もできるようになっていて、独特の硬質な味わいを楽しむこともできます。


夜になると男湯は「長寿の湯」に変わります。こちらこそこの旅館のメインの浴室。広々とした浴室に大き目の浴槽。こちらも「祝いの湯」と同様、かなり深くて、その底はスノコになっています。


大きい分、温度がやや低めで実にまったりした浴感。純日本風の造作ながらステンドガラスの照明がモダン。こういったセンスがいいですね。


こちらには露天風呂も併設されていますが雰囲気はいいものの、お湯には特に特徴はない。でもまあクールダウンには丁度いいかな。


貸し切り湯はかなり小さいものの、こちらも御影石の浴槽が奢られています。ここももちろん足元からお湯が湧いていて、このお湯がいちばん湯の花が舞っていました。


実に上質な温泉の数々、ここはやはり宿泊しないと、その真価を味わうことができませんね。

・場所:日本交通・岩井温泉BS
・泉質:カルシウム・ナトリウム‐硫酸塩泉 47度
・訪問日:2011年4月15日